2011年6月30日木曜日

労働安全衛生法が 近年教職員に「適用」されたと誤って理解された原因は 教職員の健康診断についての変更からはじまった

 山城貞治( みなさんへの通信 23)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その2)     定期健康診断について(その1)

政策「労働安全衛生対策について」では、
まず第一に

(3)教職員の健康診断等については、その目的趣旨を教職員に徹底させるよう要求する。

ということを明らかにした。
 それは、それまで教職員の定期健康診断は、生徒の定期健康診断と同時期に行われていた。
 すなわち、4月からはじまり6月まで実施報告という超多忙な日々の中で生徒の健康責任ばかりか、教職員の健康まで養護教諭の責任とされていた。
 ところが、このことが長く京教組養護教員部で問題にされてきた。
 とくに、学校教育法で
「養護教諭は、児童の養護をつかさどる。」
とされていたのに、教職員の健康にまで養護教諭が責任を持たされている。
生徒の健康診断票や事後指導なら養護教諭が主として行う仕事ととも言える。
 だが、教職員の健康診断票や事後指導までとなると、養護教諭の仕事とは言えないし、責任のとりようが全く違う。
 教職員の健康問題は本来管理職が対応すべきものである。
として、生徒と同時期に行われる教職員の定期健康診断を管理職の責任で実施させる取り組みもされていた。
 だが、教職員の健康悪化が日増しに強まる。これを黙って見ていていいのだろうか。また教職員の健康診断項目が極端に増えて来た。
 どう考えたらいいのだろうか、と京教組養護教員部で話し合いが積み重ねられ、1990年に細川汀先生と垰田和史先生に講演をしてもらい、学習してそれを「教職員のための労働安全衛生入門」として、自主出版したことがことのはじまりだった。

 ここで、以下のように細川汀氏は、明確に学校保健法と労働安全衛生法の違いを述べている。
 しかし、他府県ではこの理解が出来ていなかったため法解釈をはじめ「事実関係」を調べないで、教職員には労働安全衛生法が適用されないと「解釈」され、思い込まれていたようである。
 細川汀氏は、1990年7月8日に次のように述べている。、

わかりやすくいえば
        「子どもにうつるから」などという

                目的の学校保健法の健康診断

HOSOKAWA ADVICE

「学校保健法」(当時)の目的は何か、

「学校教育の円滑な実施、その成果の確保のために」
ということになっています。
 結核の先生がいたら子どもにうつる、だから結核の管理をしなければいけない。
 こういうような意味での、特別に学校の先生だけ「労働安全衛生法」と違った「学校保健法」という法律で健康診断をやってきました。
 学校の先生以外にたとえば飲食店なんかの人ですと、飲食店の人が食中毒や伝染病をおこしてお客さんにうつってはいけないということで検便をしなければならないという法律があります。
 美容師とか理容師の方も、皮膚病がお客さんにうつってはいけないということで、美・理容師の健康診断の法律があるんです。
 それと同じようなかたちで先生方の場合つくられていました。

 労働安全衛生法の健康診断項目が
     多くなり 学校保健に矛盾

 本来やはり「労働者の安全と健康のための健康診断」ではなかったわけです。
 ところが、今まで、しかし、それでも「学校保健法」の健康診断の項目の方が「労働安全衛生法」の項目よりもよかったので、あまり問題がおきなかったと言われているわけです。
 ところが、今回「労働安全衛生法」の方の項目が増えてきたので混乱がおきてきています。

労働安全衛生法の健康診断と
     学校保健法の職員の健康診断は
                              法の趣旨が異なると労働省

 1989(平成元)年8月22日の「事務連絡」による労働省の解釈によりますと、「学校保健法に基づく職員の健康診断について」という項目で、

「労働安全衛生法に基づく健康診断と学校保健法に基づく職員の健康診断とは、法の趣旨が異なるものであり、それぞれの法の趣旨に則しておこなわれるものである」。

と指導しています。
 だから、本来は教職員には労働安全衛生法と学校保健法に基づくという、二つの健康診断をやらなければいけない。

「しかしながら、健康診断を重ねて実施する必要はないので、重複する項目についてはその限りにおいて労働安全衛生法に基づく健康診断の項目として取り扱って差し支えないこと」

ということになっています。
そして「学校保健法」の方も同じように「労働安全衛生法」の項目に沿って改正をしたわけです。
 本来はやはり「これは『労働安全衛生法』の精神に基づいておこなう健康診断だ」というように理解していただいていいわけです。

教職員の定期健康診断は
  労働安全衛生法に基づき行われている

 つまり、子どもの健康診断のついでに、先生をどっかへ集めて健康診断をするということではなく、「先生という労働者の健康診断」ということでやらなければいけない、という意味です。

法理解が出来ず ふらつく府教委を幾度も正す

 以上のことを踏まえ、「教職員の健康診断等については、その目的趣旨を教職員に徹底させる」に府教委にさらに徹底させ、教職員の定期健康診断は、養護教諭の仕事ではなく事業者でもある府教委であること。また実施時期を1学期から変更するように改正させた。
 しかし、府教委の窓口は、保健体育課でスポーツのルールや勝ち負けには充分な関心をもつ反面、法や規則の理解が弱く、幾度となく訂正を迫らざるを得なかった。
 さらに、定期健康診断は、もっと多くの問題を抱えていた。

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)


山城貞治(みなさんへの通信22)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項
(1997年から2006年までの約10年間)

 労働安全衛生体制や事業者などの問題は、追々掲載するが、労働安全衛生委員会が作られて、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」が約10年間で、どのように実現したのかを明らかにして行きたい。

 とくに、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」の「 労働安全衛生対策について 」(以下、政策「 労働安全衛生対策について」で表記)の項目についてふれて行きたい。

政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その1)

(1)安全衛生委員会で、毎年定期的に教職員が一番忙しい時期に疲労やストレスを含めた教職員の健康調査を行い、その結果を公表させる(個人のプライバシーなどは除く)とともに教職員のいのちと健康を守るための総合対策を明らかにさせる。

この項目は、全教などが教職員の健康実態調査を行ったときに、学校がある意味で一番安定する「11月」という時期であったためが問題の出発点であった。

教職員の健康状況の全容を調べようとしたが

 「このような調査今の忙しいときにするなんて!」と言われる教職員が一番忙しい時期(例えば学期はじめや終了時、学校行事の立て込んでいる時期など)とそうでない時期との比較との比較において、教職員の労働負担を調べることで、教職員の労働実態の全容を調べようとしたが、府高の予算上の問題で了解が得られなかった。
教職員組合独自の調査の意味があると考えられたが、府高は府教委にその調査を要求し、その後、全教は文部科学省が教職員の労働時間など健康実態調査をしたと一定の評価をしている。
 しかし、この文部科学省が教職員の労働時間など健康実態調査は、もともと非常に「怪しげなもの」であった。

「受験産業」に委託をした文部科学省の労働時間・健康調査

 通常、文部科学省の調査は、各都道府県を通じて降ろされてくるものであるが、調査票を見て教職員の間で驚きの声が上がった。
 調査をするのは、文部科学省ではなく、「ベネッセ」だったからである。
この「ベネッセ」は、進学などの情報・指導企業で、高校の進路にはなじみのある企業だった。

 「ベネッセ」が教職員の労働時間と健康を調査するとことは、その実態を把握して企業の「利益」「事業」の拡大を狙うものではないかと多くの教職員から不信感が出て協力しない教職員や学校が出てきた。

断固協力できないとする教職員の気持ちは いまだ届いていない

 全教などは、文部科学省が「ベネッセ」に委託したもので情報の保持は守られていると言っていると説明し、教職員の協力を求めてきたが。
 しかし、断固として拒否する教職員も多く出た。

その後、「文部科学省の教職員の労働時間や健康についての調査結果によれば」などの引用がさかんに行われた。
 しかし、教職員の労働時間や健康についての調査結果などの分析を行ったのは、受験産業ともいえる「ベネッセ」であることは知られていない。

教職員組合のよる健康調査、受験産業による調査。行政の調査。同じ調査にはならないと府高労働安全衛生対策委員会では考えていた。

客観的・公正にすすんでいた京都市立校の健康調査

なお、京都市教組の養護教員部の奮闘で、京都市内の管理職を含む全教職員を対象とした「健康調査」が医大・教育大の労働衛生専門の教授、准教授を中心にそれぞれ二度行われた。

退職後すぐ死亡する教職員が多い

(2)退職教職員の健康追跡調査を行わせる。

  教職員の現職死亡が多くなり、その傾向は次第に若年層にまで広がりを見せたとき、病気や身体が持たないとして早期退職している教職員が多い。

 しかも、退職して1年以内に死亡する教職員が多い、という府高労働安全衛生対策委員会での会議の意見を受けて府教委に「退職教職員の健康追跡調査を行わせる。」ことにして、「定年前で働ける教職員の問題」を府教委に明らかにさせ、その対策と退職前の健康管理責任を問うつもりであった。
どんなことをしても調査すべきだった

 しかし、府教委は退職した教職員の調査をおねがいできる立場ではないと言い逃れをした。

 現在になって、当時分かる範囲で組合で調査すべきであったと反省をしている。

 2019年どの退職者でも退職1年以内で死亡する教職員が複数把握されている。

教職員の健康診断等については、さまざまな問題が噴出した。

2011年6月29日水曜日

府高委員長 癌になる だが私は がんばらない

 

            山城貞治(みなさんへの通信21)

 最近、働くもののいのちと健康を守る全国センター通信No.144 2011年6月1日に府高副委員長が、「今年で労安体制10年目を迎えます。」とし、投稿している。

 だが、この文章を読む限りについては、145万字を超えた労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」や府高が出してきた労働安全衛生関係の資料10年分を通読もしていないことがよくわかる。

経過と闘いを忘れてはいけない
 長期にわたる労働安全衛生の取り組み


 少なくとも

最低基準を上回る対策をしなければならない、と取り組んだはず

1、5年間13回に及ぶ労使協議・交渉を経て、労安体制を発足させました。労使協議での法令遵守や事業者責任の明確化などのやりとりが労安活動家を育て、理論や活動イメージをつくってきたと思います。

 の項目は、正確ではない。
 府高は別途述べる労働安全衛生協議で使用者側(府教委)ではなく、事業者側(京都府・府教委)との協議を主張したが、府教委はあくまでも使用者側を主張し意見が対立してたこと。
 たんなる「法令遵守」ではなく法に書いてないことも含めて労働基準法・労働安全衛生法の最低基準を上回る対策をしなければならないとしてきたこと。

安全衛生委員会任せにしない、と取り組んだはず
2、事業者との協議で、結局府教委の主張する(もともと府教委は最初から安全衛生委員会を提起していたが、それを覆したのは京教組であったことをすでに述べてきた。)衛生委員会が各学校に作られることになったが、労働安全衛生体制確立以前から府高は、本部交渉が基本で「衛生委員会等が、やりきれないことは組合の交渉に乗せる。」という立場をとらなかったこと。

総括安全衛生委員会を作るべきだ、と取り組んだはず
3、基本は事業者と府高との間で総括安全衛生委員会を作るべきだとし、各学校には、安全衛生委員会を作ることを主張してきた。

 それは、一つの学校では労働安全衛生の改善や予算決定・執行権がなかったためである。

 ところが、「組合活動と異なり、衛生委員会活動は勤務時間中でも行えます。」と労働組合活動が正当活動としてILOでも認められている労働時間内の活動を否定し、事業者協議と最も重要な案件で、最終的に府教委が認めた「総括安全衛生委員会」を「法的組織ではなく、総括的に行政と組合推薦者で構成。年3回実施)」と記述し、事業者側でもある府教委の責任を蔑ろにしている記述が書かれている。

一瞬の火花で終わらない 
     労働安全衛生の長い取り組み

 学校長は、事業者になり得ないという府高の法的・論理的・実践的経緯を理解されないでいる。
 労働安全衛生は、時間とともに「形がい化」させてはならないとして、ことの経過を詳しく記録保存してきているが、本部がそのことを踏まえていない事を知り、残念な思いがするが、事実はそうではなかった。
 その点で、数十年以上もじん肺やアスベストなどをはじめ「時効」という法の壁を打ち破り労災認定を勝ち取ったり、引き続き不当な労災不認定などと闘い続けている、またその意志を遺族が引き継ぐなどなど「働く人々すべてが、安全で健康に働けるよう」奮闘されているみなさんに、こころから敬意を表したい。

背水の陣は
「仲間をが見殺しにしているのではないか」と言われたこと


 現府高副委員長は、文章の冒頭「次ぐ在職死亡や公務災害認定裁判を通して、〝これ以上仲間を苦しめさせないと背水の陣をしき、5年間13回に及ぶ労使協議・交渉を経て、労安体制を発足させました。」と書いている。
 しかし、これにも大きな違いがある。
 そこで、「仲間を見殺しにしているのではないか」と言われ、労働安全衛生に取り組んだ当時の府高委員長ことを書いておきたい。

最近体調が悪くなったとき思い出した九つの緊急提案

 府高委員長は、最近体調が悪くなったと感じたらしく、そこで、

「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案」
1,からだの調子が悪い、病院にいかんならんなあ、と思っている人、思いながらも病院に行けてない人は、無条件で自分の信頼できる医者・病院に行こう。そして、自分の健康の様子をチエックしよう。また医者から「休むよう」に言われたら必ず休もう。

 を思い出した。
 けれど府高委員長という重責。当時、近畿、全国、関連他団体の役職を数え切れなくあり、スケジュールは分刻みであった。
  病院に行く時間がとれないディレンマの中で、

「無条件で自分の信頼できる医者・病院に行こう。そして、自分の健康の様子をチエックしよう。」

を自ら実践しないで、労働安全衛生が語れないと決意し、府高本部の会議で病院で精密検査を受けるため「休む」ことを報告。
 直ちに自分の信頼できる医者のいる病院に行き、精密検査を受けた。
 だが、いくつかの検査では出ないが、ある一つの検査で「癌の疑いがある。」と医師から説明を受けた。

脳裏に焼き付いていた
病院を変わることも健康問題を考えたとき大変重要


 この時、府高委員長には、

「また、病院に通院していても、どうも良くならない、自分の自覚症状と医師の治療があっていない、などと思うことがあれば、病院を変わることもこの間の教職員のいのちと健康問題を考えたとき大変重要であることが分かってきました。」

という「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案」の文章が浮かんだとのこと。

 医者から、もう一度検査を、経過も診るためにH県K市までくるのは遠いから、京都もしくは自宅からいつでもいける病院に代わる病院を紹介するから、といわれて本人も「そう思っていました。」と言い、医師に紹介状を書いてもらい、すぐS県S医大病院に精密検査・入院ということになった。

癌宣告を受けてとった委員長の行動

 結局、府高委員長は、癌・手術・入院を宣告される。

 頭の中では、組合委員長として休んでいた間の残った仕事が渦巻いたけれど、
「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案」の文章がそれを打ち消したとのこと。
 本部、近畿、全国、他団体に「入院治療のため休む。」と言って、委員長の「代休」である代行をみんなで決めてもらい長期入院、リハビリをして、組合本部の仕事に復帰。
 委員長を「定年退職した」後も検査通院を欠かしたことがない。
 彼は、

「口だけ言うのではなく、実行しないと委員長がウソを言っていることになる。それではいけないお思い続けた。」
「休んで、治療して、つくづく思ったのは労働安全衛生の重要さと形式論議だけではダメだと言うことと、妻の深い愛を知ったことだ。」

と全国の教職員組合会議で報告し、労働安全衛生のあり方をよりリアルに説明するようになった。

教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために(第1次討議資料) 今後の連載のために 一部分再録






教育と労働安全衛生と福祉の事実: 教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために(第1次討議資料) ( その3 )

2011年6月28日火曜日

労働安全衛生を形がい化させないと 労働安全衛生の中味を重視


                         山城貞治(みなさんへの通信20)

 労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」(1997年7月第1号)発行後、府教委には様々な動きが出てきた。
 府教委との労働安全衛生体制協議・及び確立前の出来事であるが、制度だけに依拠するのではなく、いのちと健康を守る運動の強化こそが大切であり、体制が確立しても運動がなければ形がい化する教訓を示してくれたものであった。
 以下、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」の実現した事項も経過を省略して掲載して行きたい。

府教委現職死亡や教職員の
健康破壊の対応が遅れていることを謝罪

 府教委は、1997年11月13日の府高府教委交渉の労働安全衛生問題の追求をうけ、
「教職員の健康問題は重要な問題であり、府教委として責任をもって解決にあたらなければならないと認識している。」
と回答。
 この間の現職死亡や教職員の健康破壊の対応が遅れていることを謝罪していますが、府高府教委交渉後、教育長名による学校長あての
「時間外勤務の縮減等による教職員の総実勤時間の短縮について」
の通達を出しました。

問題があるが  協定を守る府教委

 通達では、年休の計画的な使用など「労働基準法上の年休は労働者が時季を指定することによって取得できる。」という原則に違反して管理職が「時季を指定」させようとする労働基準法違反の部分などなど多くの問題がありますが、時間外勤務が教職員の健康に重大な影響を与えている現在の長時間過密労働を、「教職員の健康と福祉を害する」ことがないよう47協定に基づく通達を出しています。

6点以上の改善・遵守を文章で通達

 特に

・時間外勤務をさせる場合は、緊急性、必要性だけでなく教職員の健康状況、 学校の協力体制等を考慮すること。
・不必要で緊急性がないのに教職員を勤務させることのないようにすること。
・週40時間労働になるようにすること。
・学校運営の精選を図り勤務時間内に各種会議が終了するようにすること。
・休日勤務を出来るだけ控えるようにすること。
・管理職は、教職員が退勤しやすいようにすること。

などのうえに管理職は
「学校の実情に応じた具体的な対応策の推進に努めること。」
としています。 

教職員すべての課題  
   長時間過密労働の解決問題

 11月におこなわれた宇治市議会で、市議が教職員の日曜祝日勤務実態と代休がとれていないこと及び教職員のいのちと健康の問題を取りあげたところ、宇治市は「小中学校で教員数が国の基準より35人」も不足していることを回答。

 近畿でも京都が、最低の教員定数であることを裏付けていることが判明しました。
 このように長時間過密労働の解決問題は、教職員のいのちと健康を守るための定数問題や学校環境、管理職の態度などあらゆる問題に波及します。
 そのため以下の点を校長交渉などを通じて各分会で取り組んで下さい。

 学校で三つの取り組みを

① 管理職に勤務時間厳守とともに仕事内容の負担を改善させ、自宅に仕事を持ち帰えらされている実態の責任を明らかにさせ、「見せかけだけの勤務時間」に終わらせないこと。
② 教職員の健康を考えた「学校の実情に応じた具体な対応策」を明らかにさせること。
③ 京都府人事委員会が各学校に指導した労働基準法・労働安全衛生法違反の具体的項 目を管理職自らすべての教職員に明らかにするよう交渉すること。

( 参考資料 注:1997(平成9)年に 府教委がだした通達・一部省略)

各府立学校長 様                 京都府教育委員会   教育長

時間外勤務の縮減等による教職員の総実勤務時間の短縮について(通達)

 教職員の時間外勤務の縮減は、教職員の健康及び福祉の増進にとって極めて重要であり、校務の精選等に配慮し、勤務時間内に校務が効率的に遂行されるように意識啓発を行うよう、これまで、繰り返し指導してきたところです。
 時間外勤務の縮減の動きは時代のすう勢であり、国や他府県において積極的に推進され、また、本府においても平成9年10月13日の府人事委員会勧告の中で、総実勤務時間の短縮に向けた取組を一層積極的に続けていく必要がある旨が述べられています。
 ついては、下記事項に注意の上、時間外勤務の縮減等により総実勤務時間を短縮すべく、なお一層の取組を図るよう格別に配慮してください。
               記
1 教育職員に対して時間外勤務をさせる場合は、職員の給与等に関する条例(昭
和31年京都府条例第28号)第37条第3項に規定する4項目の業務に従事する場合で臨時又は緊急にやむを得ない必要があるときに限るものとしている「義務教育諸学校等の教育職員に対する時間外勤務等の特例についてj(昭和47年7月18日付け7教職第227号教育長通達)の趣旨を十分に踏まえること。

2 時間外勤務をさせる場合は、当該業務の緊急性、必要性等のほか、業務に従事する教職員の健康状態、学校内における協力体制等について十分考慮し、不要不急な業務で時間外勤務をすることのないように配慮すること。

3 週休日に勤務を命じる必要がある場合には、当該勤務を命じる必要のある日にできるだけ近接した日に週休日の振替等を行い、教職員の勤務時間が週40時間(週休土曜日のない週にあっては44時間)勤務となるように努めること。

4 各学校においては、これまでに行われてきのた学校運営や諸慣行の全般を、再度点穣し直し、特に次に掲げることにも留意しつつ、校内の各分掌事務の円滑化を図り、学校運営が合理的かつ計画的に行われるように努めること。

(1) 各種会議については、やむを得ない場合を除き、会議内容の精選、会議回数の縮減、開始・終了時刻の厳守、勤務時間内に終了可能な開始時刻の設定、資料の事前準備、効率的な議事進行等、合理的な運営に努めること。

(2) 学校行事については精選を更に図りつつ、年間を通して計画的に実施し、学校行事等を週休日や祝日(国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)
に定める休日をいう。)に実施することは、それぞれの地域との連携に留意しつつ、できるだけ控えるように努めること。

(3) 管理職員においては、職場の状況に応じ教職員の退勤を促す等、教職員が退勤しやすい職場の雰囲気づくりに努めること。

(4) 部活動の運営についても、各学校の実態に応じた創意工夫を図った上で、教職員の健康管理のみならず、児童生徒の健康、学習時間の確保等についても十分に配慮しながら行うように努めること。

(5) 勤務時間外に補習授業等の業務が行われる場合には、児童生徒や教職員の健康にも十分に配慮するような実施計画の下で行うようにすること。

5 年次休暇の使用については、府人事委員会勧告の中で年次休暇の使用促進について引き続き関係者のより一層の努力が必要であると報告されていることを踏まえ、管理職員は、授業等の学校教育活動への影響にも留意しつつ、学校休業日等の適切な時期における年次休暇の集中消化等を含め、年間を通じた教職員の年次休暇の計画的な使用の促進に努めること。

6 管理職員は、常に教職員の時間外勤務の状況や健康状態の把握に努め、率先して時間外勤務の縮減についての意識の啓発を行い、学校の実情に応じた具体的な対応策の推進に努めること。

7 管理職員は、所属職員の適正な勤務時間管理の徹底を図り、かりそめにも府民の誤解を招くような勤務形態が生じることのないようにすること。

2011年6月27日月曜日

労働災害が起こることは予測できる 予防する法・行政の改善に変革することこそ絶対条件


                   山城貞治(みなさんへの通信19)

HOSOKAWA ADVICE 
現場に対応できない法体系 
細川汀 京都市立衛生研究所(当時)
(1971年6
月8日制定から10年が経過した光と影が語るもの)
  労働安全衛生法10周年特集

 1982年10月 労働安全衛生広報1号 より転載

くり返し同じ  死者の発生
 重症患者をだしてはいけない

 従来の職業病問題の多くは、

死者の発生、重症患者の(くり返し転医後の)偶然の発見、または、職場での多発

⇒ 患者・家族の労災申請または「守る会」、患者会、労働組合の抗議
⇒ 労基署の対応 
⇒ 発病原因(直接)の推定と管理基準以下への改善、特殊健診の実施
⇒ 作業、経験年数、症状、部位を限定した認定、行政指導通達 
 ⇒ 患者の軽快・分散と問題の「消失」、追跡の中断

というパターンを採ってきた。

 例えば、70年から筆者が一貫して提起している保育所保母のけい腕・腰痛の防止対策について、労働省は75年認定基準通達において
「業務内容にそれ程の特異性もないので」
一般的には業務上とみとめない態度を態度をとってきた。
 しかし、81年の労働保険審査会は、
保母の作業内容・作業姿勢が上下肢腰部に及ぼす負荷が大きく、業務の特殊性から休憩がとり難く、厚生省令設置基準の保母定数では相当に負担が大きいこと
などを認めた。
 これに対し、労働省は直ちに事務連絡(第35号)を発し、それによって労働省の方針は変わらない。
 「原因因子としての医学的知見がえられない」
という態度を表明し、実態の把握、原因の究明を含めて予防対策を何らとろうとしない。

予防を中心としたパターンに 変革 してこそ

 このような状況を、

労働及び健康実態の継続的把握と改善努力、有害作業導入前安全衛生チエックと追跡

⇒ 患者の早期認定・治療、要注意者に対する作業管理
⇒  学習教育の徹底、すべての訴えと症状(全身的)と迅速な原因調査(すべての要因特に背景)と防止措置、専門家集団の協力 
⇒地域における相談・診断・治療・リハビリテーションでの体制 
⇒ 労基署・局の対応と追跡 
⇒ 予防を中心とする法・行政の改善

と言ったパターンに改める必要がある。

対策の不備が
 いろいろな形で現れてくるであろう

 70年代にそれ以前に発生したじん肺、振動病、職業がんなどの対策が積み残ったように、80年代も70年代の対策の不備がいろいろな形で現れてくるであろう。
 過労死やメカトロニクス障害の問題はその一つと言えるかもしれない。

専門研究者に聞こうともしない行政では
  労働災害が ひろがる


 じん肺法改正(78年)、有機則改正(79年)に際しても専門研究者(日本産業衛生学会など)の意見の理念的な部分が取り入れられなかったことからも、このような事態が起こることは予測できる。
 もちろん、現在予測し難い新しい技術革新や作業態様の変化によって起こるであろう労働衛生の課題については(その体制を整備することなしには)論外であろことは言うまでもない。

(注:メカトロニクスは、機械工学「メカニクス、mechanics」と電子工学「エレクトロニクス、electronics」を合わせた和製英語であるが、今日この技術で多くの問題が生じている。)
 
                                                             (  了  )

原子力発電所事故 アスベスト被害 列車脱線追突 有害物質被害 を労働安全衛生法等で規制が あまりにもズサンだ と29年前に指摘


                      山城貞治( みなさんへの通信 18)

HOSOKAWA ADVICE 

現場に対応できない法体系
                 細川汀 京都市立衛生研究所(当時)
(1971年6月8日制定から10年が経過した光と影が語るもの)    
労働安全衛生法10周年特集
 1982年10月 労働安全衛生広報1号 より転載

労働安全衛生法 6点以上の重大問題を指摘

 安衛法(注:労働安全衛生法の略称)が規制範囲の拡大、厚みのある行政、中小企業の指導援助により労災職病病を防止するとして制定されたとき、

筆者は次のような問題を提起した。

欠けている
 資本の法的・社会的に追求する姿勢

(1)労働省は労働安全衛生について国民の関心が低いという理由から、資本の労働安全衛生・災害補償責任を法的・社会的に追求する姿勢が書けている。

 企業内の「災害かくし」や職業病の泣き寝入りや企業内処理の実態を把握しようとしていない。
 (労災認定申請がなければ事件の発生を認めない。)

(2)快適基準、安全衛生基準の定義と設定が不明確である。 
 特に安全に比しても衛生についての設備・機械・工具の認可、点検制度が欠けている。
 物質の有害性チエックにしても、事前の点検だけでなく事後のチエックもすべきである。
 
 安全衛生委員会には巡視、点検、分析、計画、教育訓練の権限を与える必要がある。

3)特に50人以下の小零細、下請け労働者などの安全衛生、健康管理などが依然として空白のままになっている。

 それは地域保健でも同様で82年施行の老人福祉法でも例外でない。
 総合的な制度、対象の整備が必要である。

(4)監督官、専門官、調査官などの整備と再教育が遅れている。

  複雑化、大型化する技術に対応できるよう、監督の内容や方法も改正する必要がある。
 危険有害作業者の実態と作業者(退職者を含む)の健康状態を完全に把握するための法整備を行わなければならない(労働省の言う第88条では不充分)、全体に予防基準の設定が遅れている。

保障されていない
知る 学ぶ 調べる 申告する 要求する権利
診察を受ける 治療する 医者を選ぶ 職場復帰する権利


(5)労働者の権利と責任が不明確になっている。

 危険有害、不健康因子について、
知る、学ぶ、調べる、
申告する、要求する権利、
及び被災者・患者が診察を受ける、治療する、自ら医者を選ぶ
、職場復帰する権利を保障することによって、
事業者の安全衛生義務を規定すべきである。

(6)鉱山、船舶、自治体、三公社五現業などの事業体の安全衛生、労働基準監督官が統一されていないことが全体の対策の遅れの原因になっている。

 電電公社交換手のけい腕(73年)や郵政外務労働のバイク利用に伴う障害(77年)もその一例である。

( 注:当時三公社五現業とは、三公社は 日本専売公社・日本国有鉄道・日本電信電話公社  五現業は 国の経営する企業 1.郵便、郵便貯金、郵便為替、郵便振替及び簡易生命保険の事業 2.国有林野事業 3.日本銀行券、紙幣、国債、収入印紙、郵便切手、郵便はがき等の印刷の事業 4.造幣事業(賞はい等の製造の事業を含む。) 5.アルコール専売事業 を言った。 )

 これらの事は、その後の

クロム、
塩ビ、
クロロプレン、
石綿(注:アスベスト)、
エポキシ樹脂問題、
ずい道掘り作業者のじん肺、
振動病の多発、
コンピューター作業者の障害、
国鉄緩急車乗務員やスチュワーデスの腰痛多発、
敦賀原発事故、
夕張炭鉱災害、
産業用ロボットによる圧死、

などの発生と経過を見れば、法の体系化と具体化に欠陥があったことは明らかだろう。

 安全衛生対策に最も重要な予算と専任体制、担当スタッフの充実、日常的系統的な安全衛生教育、監督指導命令の周知と実施などについては法的規制が不足しているため、現場の変化と実情にたいしていないことが多いように思われる。
                               ( つづく)

2011年6月26日日曜日

ダメだ  患者になるのを待つだけ と言わせる中味の労働安全衛生法では


              山城貞治(みなさんへの通信17)

HOSOKAWA ADVICE 
現場に対応できない法体系 
                            細川汀 京都市立衛生研究所(当時)
(1971年6月8日制定から10年が経過した 光と影が語るもの) 労働安全衛生法10周年特集 

     1982年10月 労働安全衛生広報1号 より転載

けいわん・振動病の対応は早かったが
  労働負担の改善は後退する

 その次には、当時激増しつつあったチェンストアのチェッカーのけい肩腕障害対策と、民間林業の振動病対策とが、筆者が直接関係しただけに特に思い出深い。
 前者については、労働組合や学会の提起に対する労働者の対応は、法制度(注:労働安全衛生法)後非常に早く、73年には作業管理通達の決定・指導・点検行われ、事業体の労働条件(人員・休憩・健康診断など)もかなり改善され、タッチ力の軽い金銭登録機が使用され、その結果患者発生数も減少した。
 しかし、女子作業者の勤続年数が平均2~4年と短く、パートやアルバイト作業者が大半を占め、患者補償も労災保険によらず企業内で止めるという企業体質を変えることは行われなかった。
 そのために、実際の患者発生数が把握追求されないままに、あたかも職業病問題が解決されたように関係者が判断してしまい、作業者の労働負担改善の努力は止まり、逆に最近は通達水準より後退した動きさえ見られる。

振動病対策は改善されたが
      放置された小零細企業

 また民間林業の振動病についても、それまで緩やかだった労働者の対応が、法制定後全国実態調査(73年)、健康診断(73年)、機械改良(75年)、作業管理(75年)、認定基準(75年)、治療(76年)、衛生教育(77年)通達などにみられるように体系的に行われた。
 これによって全国的にこの問題の大きさと深刻さが正しく認識されるようになった。

 しかし、山林労働、特に小零細企業における衛生管理体制は、チェンソーによる伐木作業以外に生活し難いために予防や社会復帰が進まない状況、過疎化も重なって職業病医の不足、などの基本的な点を改めていないため、患者発生は現在も食い止めることができていない。

お粗末な労働安全衛生法10年の「総括」

 振動病防止のために法・規制を作れという学会などの意見に対し、労働省は81年総合対策推進通達を出してそれに代わるものと答えたが、その内容は振動工具種類や事業場の把握内容を限定し、健診や認定の遅れている府県を点検せず、
専ら
「関係者の理解と協力」、
「意識の高揚」、
実効のあがらなかった「作業管理の適正化の指導を」うたっているのみで、
安衛法(注:労働安全衛生法の略称)10年の総括としてはお粗末としか言いようがない。

労災給付「赤字」を宣伝し
  労働者を追い詰める労働省

 また、補償については、補償課「林業関係の労災保険収支の実状と問題点」(80年)が、林業関係の労災赤字が全体の赤字の30%を超え、このままで行けば昭和60(1985)年には1億円に達するために給付の制限、ことに取り組みの進んでいる府県を「特定地域」とし、療養患者数の減少を主張したことを受けて、「総合対策」は全体補償の削減、認定業務の要件増加などを示している。
 このことが本当に患者発生の予防や治療、職場復帰に有効であろうか。
 労災赤字による保険料の増大をおそれて事業者はますます消極的になり、雇用や生活の不安から労働者はますます病気をかくす傾向を強めている。

  現在もチェンソーを1日4~6時間使用する労働者も多く、予防対策が遅々として進まないために

「むしろ患者になるのを待つだけ」

という声さえあるという。
 このような状態が(注:労働安全衛生法に基づく)取り組み後10年経過した今日では解決していないことは、安衛法の

「快適な作業環境の実現と労働条件の改善」(第3条)

障害障害防止措置(第22条)

「作業環境の測定」(第65条)

「作業時間の制限」(第69条)

などの項目において、振動病防止のための具体的規定を行わなかったし、今も行おうとしていないことと無関係ではないだろう。
                           ( つづく )

労働安全衛生法(安衛法)の条文は、1982年当時の条文です。 

労働安全衛生法(安衛法)制定10年目の事実



                             山城貞治( みなさんへの通信 16 )

「労働安全衛生とは、 労働者が労働(仕事)をすることで、ケガや病気や死ぬことなどがないようにするすべてのことをいう。
 労働者を働かせている側や労働の場を提供している側には、労働者が安全で健康で快適な労働が出来るようあらゆる対策を行わなければならない。
 また労働者が労働をすることで、ケガや病気や死ぬなどのことがあった場合は、すべての責任をとらなければならない。
 そして、すべての労働者がいきいきと健康で文化的な生活が出来るようにしなければならない。
 このことが労働安全衛生ということが出来ます。」

と言う府高労働安全衛生対策委員会の考えに対して、細川汀先生から、賛同とともに次の文章が送られてきた。
長文なので、分割して掲載させていただく。

HOSOKAWA ADVICE

現場に対応できない法体系
 細川汀 京都市立衛生研究所(当時)
(1971年6月8日制定から 労働安全衛生法10周年特集 )
  1982年10月  労働安全衛生広報1号 より転載

 
10年前の思い出が 今でも現実に
 
安衛法(注:労働安全衛生法の略称)の制定前後には思い出が多い。

 その中でも、73年1月発生し91人が重軽傷を負った、東亜ペイト此花工場の爆発現場の生々しい状況が10年経過した今も鮮烈である。

十分指摘できなかったのは水準が
           低かったのかもしれない
 と労働省衛生部長が言ったが


 この時、労働省衛生部長は現場に来て、
「安衛法(注:労働安全衛生法の略)制定早々の大事故で残念だ。
  監督官が点検していたのに十分指摘できなかったのは水準が低かったのかもしれない」

と語っている。
 翌年、出光石油、住友化学、大阪石油化学など全国で16件の化学工場の爆発災害が相次いだ。

国の対策の効果のなさを示した
 ダイセル堺工場の大爆発

 その後、国は事業所の自主活動を中心とした安衛法に則して、コソビナート災害防止通達(72年)、化学工場監督指導通達(74年)、化学プラントにかかわるセーフティー・アセスメント通達(76年)などの対策を行ってきた。
 その効果が果たして上がったのか、その具体的な回答が、今年8月21日に発生したダイセル堺工場の大爆発であったと言えよう。

 この工場では、8月20日の未明、合成樹脂製造プラントの脱臭装置に通じる配管が、3ヶ所破裂、アクリロニトリルとスチレンの混合液が入ったまま重合反応中であった二缶のかくはん機が停止し、ガスが発生した。

危険があるのに生産を続けた結果 大爆発

 しかし、会社は

「原料を抜き取り(そのための地下タンクがあった)、水で、薄め安定させつつつ重合禁止剤を投入する」

かわりに、

「通常10時間で終わる反応を(缶に水を注いで)落とし、15時間で反応させる方法」

を採った。
 このため反応がまに固形物ができ、かくはん機が停止したが、なお生産を続けた。
 その結果、
 翌21日の午後5時半反応がまが爆発し、死者6人、重傷者6人、軽傷者は住民を含めて162人、工場の周囲半径1キロの範囲で住宅半壊11戸、部分壊75戸を含め被害は4000戸を超え、工場の85%が破壊された。

死者・負傷者・破壊が実証した
 労働安全衛生法(安衛法)の形がい化
   災害防止の効力のないこと


 今年の化学工場の爆発は、新聞報道だけで鹿島コンビナート鹿島石油(4人死亡、4人負傷)水島エチレン倉敷(1人死亡)、知多石油名古屋(1人死亡)川鉄化学千葉(8人負傷)など発生している。

 このダイセルの事故で特徴的なことは、小爆発初生前後に会社が化学的知識に浅い消防本部との対応に終わっていることであり、その後の原因究明や責任追及を含めて新聞には労働省、労基局一つの行動、一つの談話さえ今のところ報道されていないことである。

 現実には、何らの対応もないと思いたくないが、社会的にはまったく無視されていることは、安衛法の形がい化、あるいは災害防止の歯止めとしての効力がなかったことを実証するものと言える。
                                                                      ( つづく )

2011年6月25日土曜日

労働安全衛生 とはなにか 労働安全衛生法の実効をもとめるのが 労働安全衛生でないと明確化


                 山城貞治( みなさんへの通信 15 )

労働安全衛生とは?何を言うのか

  府高労働安全衛生対策委員会では、

「労働安全衛生について わかりやすく説明してほしい」
という意見をうけて各専門家や今までの教職員の意見を考えて、討論をくり返し、文章の推敲を重ねた。
 その結果、次のように「労働安全衛生を理解すればいいのではないか」と検討した。
 そして、みなさんのご意見を聞いた。

労働安全衛生は すべての労働者がいきいきと健康で
文化的な生活が出来るようすることを目的に


 「労働安全衛生とは、
 労働者が労働(仕事)をすることで、ケガや病気や死ぬことなどがないようにするすべてのことをいう。
 労働者を働かせている側や労働の場を提供している側には、労働者が安全で健康で快適な労働が出来るようあらゆる対策を行わなければならない。
 また労働者が労働をすることで、ケガや病気や死ぬなどのことがあった場合は、すべての責任をとらなければならない。
 そして、すべての労働者がいきいきと健康で文化的な生活が出来るようにしなければならない。
 このことが労働安全衛生ということが出来ます。」




では、府立学校の労働安全衛生とは、

「府立学校の労働安全衛生とは、京都府及び京都府教育委員会は、教職員が労働をすることで、ケガや病気や死ぬなどのことがないよう安全で健康で快適な労働が出来るようあらゆる対策を行なわなければならない。
 また、教職員が労働をすることによってケガや病気や死ぬなどのことがあった場合は、すべての責任をとらなければならない。
 そして、教職員がいきいきと健康で文化的な生活が出来るようにしなければならない。」



ということです。

 このことから、もう一度私たち教職員の「いのちと健康と労働」の問題を見直してみましょう。

 大阪職業病対策連絡会機関紙「労働と健康」に、府高労働安全衛生対策委員会アドバイザーの辻村一郎先生は、「いのちと健康を守る課題の位置づけ」と題して以下の文章を書いておられます。

企業は 
 ケガは本人の不注意

 病気は本人の体質 不摂生 気のせい 
 と私傷病として扱い 『労災かくし』をする


 「 労働災害(公務災害)に対して私傷病という用語がある。
 これは業務と関係のない、本人の『責任』で発生したケガや病気を私傷病としている。

 また、企業はケガは本人の不注意、病気は本人の体質、不摂生、気のせい、といい私傷病として扱い、『労災かくし』をする傾向が長年にわたって根強くつづいている。

 勇気ある労働者が告発しないかぎり労災はかくされたままになっているのである。
 しかし、現実には、労働者の労働と生活をみると労働者の病気は職場での労働条件、作業環境やとくに企業の健康管理に関係のないものはない。

『それ自体としては職業性の要因をまったくもっていない、いろいろな病気でも労働時間が長かったり、労働負担が重いことによって発症したり増悪したりするものである。
 どんな病気でもその人がおこなっている労働によって負荷・負担がかかって、その負担が限度をこえることによって悪くなる。

私病と思われる病気の中に
 職業病がいっぱい紛れ込んでいる


 また仕事によって健診が受けられなかったり、
治療に行けなかったりすれば(これは非常に多い)新たに発病したり、
急に悪化することは当然のことで、これも企業の健康管理責任になる。

 それどころか一般の病気、いわゆる私病と思われる病気の中に職業病がいっぱい紛れ込んでいる。

 職業性の中毒、たとえばある鉛中毒患者は高血圧症、腎障害、痛風として診断されて長期にわたって私病として処理されてきた。

 また、別の鉛中毒患者は鉛による貧血と胃腸障害を、食事の不摂生や胃潰瘍によるものと診断されてきた例もある。

 じん肺の呼吸困難や動悸を成人病と診断された例。

 職業性ガンでベンジジンは18年~20年後に(退職後も)発病されるから私病扱いされることが少なくない。

 大事なことは、職業病は労働者の運動によって、職業病であることを明らかにして政府によって職業病にさせてきたことである。

 その意味では、私傷病として扱われるものの中には多数の労災・職業病が含まれている、というより労働者のケガや病気は労働と関係しているのである。』(田尻俊一郎「労働者にとって私病とは」【労働と健康】NO62、1984.4.1から参照・引用した)』

「合理化」を認めていては
     労働安全衛生は存在しない

 そこで労働者のいのちと健康を守るためには、『合理化』に反対することを基礎にして労働条件改善・安全衛生確保のとりくみをさけて通れないことは言うまでもない。
 問題は、その課題と位置づけである。」

 以上の文章を「企業を、京都府・京都府教育委員会」に読み替えて、もう一度読み直し、みんなと話し合いましょう。
 
 府高労働安全衛生対策委員会で話されている中にも「私傷病」と言われている中に、どうも「職業病」ではないかと思われることが多くあり、調査を進めています。

労働者を医者に連れて行くことから 労働安全衛生活動は始まります


                             山城貞治( みなさんへの通信 19 )

 府高委員長のもとに、組合の会議では出されない苦情が数人の分会役員から出されていた。

あんなニュース誰も読んでいない
   組合費の無駄遣いはやめるべき


 労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」は、本部のニュースより多い。
3日に一度時には、2日に一度の回数送られてくる。
 あんなニュース誰も読んでいない。
 組合費の無駄遣いはやめるべきだ。
などなどだった。
 そのたび、委員長は
現職死亡が増えていること、
病院に早く行けば助かるのに行けてなかったこと、
本部としてはいのちと健康をなによりも大切にしたい、
と思って労働安全衛生委員の協力をもらって作成してもらっていることなど、
何度も説明したとのこと。

 でも、「紙の無駄だ」「再生紙を使うべきだ」などなど強く言われて、委員長として組合員をまとめる立場から悩んでいるとの話が労働安全衛生委員に相談があった。

再生紙を使わなかった
ニュース「教職員のいのちと健康」のわけ


 たしかに、労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」は、再生紙を使っていなかった。
 京都府や学校では資源の無駄、材木伐採による環境破壊などなどが強調されて、すべて再生紙に変えられていた。
 だが、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために」を作成するときに、有害物質の研究者に相談したときにこのようなことを言われた。

「黒板のチョークは身体によくないとして、ボードにマジックインキで書く学校がある。でも、あのマジックの揮発性の物質は非常に危険なものと言うことはご存じない先生が多い。」

「再生紙。地球の環境に優しい、と言われているが、再生紙を作るためどれだけ有害物質が使われているか数え切れない程。結局、環境を悪くしている。」

との指摘を受けて、労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」の紙だけは、普通紙で一番安価なものを使っていた。
 当時は、再生紙のほうが高く、書記局で計算してもらうと「教職員のいのちと健康」発行すべての費用は、1円だった。
 委員長からは、
「そんなことは充分、充分分かっているけれど、発行部数を少なくして組合費を始末していることにしないと納得してくれない。」
「悪いけれど、発行部数を減らしてくれないか。」
と労働安全衛生対策委員会に提起があった。
 発行部数を減らしてもたかだか数百円。
 しかも、組合に入っていない教職員にも配っているのに、それならその分私が出すわ。など意見が出たが、委員長の立場と府高の組合役員の意識を考えて、組合分+5~6部を各分会に配布することになった。

読ませて欲しい くれない?ファイルして読んでいる
家で家族で読んでいる


 ところが数日して、少なくない分会から

「教職員のいのちと健康の部数が足らない。 組合に入っていない人に読ませて、と言われて渡したらしたら足らなくなった」

などの意見が出てきた。そのため、各分会ごとに+分を聞いて配布することになった。
 分会役員からクレームがつき、分会に入っていない教職員から
「読ませて欲しい」「くれない?ファイルして読んでいる」「家で家族で読んでいる」
などなどの話が舞い込んできた。
 これには委員長もただただ頭を抱え込むだけだった。
 また、委員長は他の教職員組合から「府高のやっていることは労働安全衛生法を実効あるものにしてないから、労働安全衛生していない。」と何度も繰り返し言われていたことも分かった。

あたりまえのことだから 労働安全衛生ではない
            と言われたけれど


 また、「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案 」の

1,からだの調子が悪い、病院にいかんならんなあ、と思っている人、思いながらも病院に行けてない人は、無条件で自分の信頼できる医者・病院に行こう。そして、自分の健康の様子をチエックしよう。また医者から「休むよう」に言われたら必ず休もう。
 2,病気や病気がちの教職員、病気で休んでおられる教職員に対しては、 休んでいる間の職場の保障を府教委や管理職に要求しよう。
3,生理休暇を学習するだけでなく、生理休暇を権利としてとろう。
4,食事を規則正しくとろう。「立ち食い」「チョイ食い」をやめて、せめて休んでゆったりした食事と休憩を確保しよう。このことが出来るように府教委・管理職に要求しよう。トイレに行きたいときは、がまんせず行こう。
5,府高労働安全衛生対策委員会のストレッチを労働時間中にこまめにやろう。
6,もしも教職員が、病気や災害で倒れたり、死亡したりすることがあったら、直ちに事実を調査し府高本部に連絡しよう。
7,府教委や管理職が、教職員の健康状況を悪用したり、他の人に漏らしたり、健康状況を利用して教職員を「おどかしたり」「懐柔したり」「嫌がらせをする」などがあれば、事実と証拠をつかみ、府教委や管理職に直ちに抗議し、闘いをすすめよう。
 8,すべての分会に労働安全衛生担当者を置き、府高労働安全衛生の取り組みを成功させよう。
 9,「教職員の労働安全衛生入門」「安全で健康に働く」をみんなで学習し、意見交流を進め、教職員の労働安全衛生の深い理解を進めよう。

は、「あたりまえのことだから、労働安全衛生ではない」とある大学の労働衛生研究の著名な方からおしかりを受けた。
 このことを永く労働安全衛生研究に携わってきた細川汀に相談する、と以下のような手紙が来た。
 細川汀先生は、ニュース「教職員のいのちと健康」を出す度に、一度も抜けることなく、すべての号に感想や意見やアドバイスなどを簡潔に送ってくださっていた。
 そのため「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案 」に対する細川汀先生からの手紙を転載させていただくが、これかは、「HOSOKAWA ADVICE」で時々掲載させていただく。
 
細川汀先生からのアドバイス。
HOSOKAWA ADVICE


 あなたたちの言われるように、労働者を医者に連れて行くことから労働安全衛生活動は始まります。
 活動家の仕事は、職場と労働の常時点検、有訴者やケガ人を医者に連れて行く。病気やケガの原因を調査し、記録することにつきると思います。
 労働安全衛生担当者の会議は、とてもよい討議で一度聞いて見たいものと思いました。
 「在職死亡」については、そのつど十分な討議をして下さい。「押しつけられた仕事と好きな仕事がゴッチャ」「熱が何度なら休めるか」「保健室に休みに来る先生が多い」「妊娠しても立ちづめ」「年休取り消し」「長時間労働に歯止め」「子供用の手洗い場で中腰」など、どれもすぐ取り上げ、各々に具体的な要求づくりを組織できるでしょう。
 「専門家」の人にも現場をじっくり見せて、一緒に考えさせて下さい。お礼まで

2011年6月24日金曜日

なんで校長さんは…… こんなにまでして死んだんや


                    山城貞治( みなさんへの通信 18 )

 「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案」を出して次々と職場から意見が出てきたことの一部は、再掲載した。
 しかし、府高の教職員の家族の中には、他教組や組合に入っていない教職員も居たが、家族で労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」が読んでいた。

無念で死んだ校長先生の気持ちをせめて せめて

 ある日、労働安全衛生委員のところに電話がかかってきた。
 
「私の学校の校長先生が自殺した。みんなで、校長先生が自殺したところに、せめて線香でもと思って、その場所に行きかけたんです。」
「でも、河原の木に首をくくってと聞いていたので、土手から河原に降りようとしたら、雑草と蔓などが絡まりついているので女の先生は、少し降りたところで待って、男の先生が線香を持って行かれました。」
「でも、帰ってきた先生の服は、裂けたり、ほころんだり。」

草とトゲのある灌木と蔓が巻き付いた
   とても歩けない河原を歩き続けた
 校長さんの気持


「どうしたの?」
と聞いたら、

「もうすごい草とトゲのある灌木と蔓が巻き付いたとことで、1mも歩くの 大変やった。校長さんは、こんなにまででしてここを歩いて、と思うと涙  が出て。」
「死ぬ気ですすんだにしても、よっぽどのことがないと進めない所を、ただ ただ歩いたんや、と思うけど。本当に進まれない所を歩いたんやと思うと、 よっぽどの言うに言われないことがあつたんやと思った。」
「辿り着いた木は、背丈ぐらいの小さな灌木。」
「なんで校長さんは、こんなにまでして死んだんや」
「みんなで、支えられなかったことが悔やまれる。」

と言い合って先生たちが泣き続けたとの話であった。

「教職員のいのちと健康」でとりあげて

 校長さんも、大変な状況におかれている。
 ぜひ、労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」でもそのことを取り上げて欲しい、との電話。
 奥さんは、府高の組合員ではなかったけど、組合委員の夫が電話を代わって、

こんなの ほっといていいのか

「こんなん、ほっとけへん。嫁さん今も落ち込んで泣いてるけど、労働安全衛生問題違うか。こんなのほっといていいのか。」
「難しいと思うけど、新聞記事には出てないことがあるはず。教職員のいのちと健康、で取り上げて

欲しいと切々と訴えられたとのこと。
 そこで、奥さんの所属する教職員組合に話を聞きに行ったら、

「この話は、うちとこの話、府高さんとは関係ないでしょ。」
「労働安全衛生ニュースに載せたかったら、どうぞ自由に」

と言われ、府高委員長とと相談した結果、テリトリーはないが、今回は新聞記事の引用と副委員長のコメントだけにしておこう、と言うことになった。
 後で知ったのだが、この時、府高委員長は他の教職員組合からかなり批判をされて、苦しんでいた。 
 以下当時掲載した労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」は、次の通りとなった。

教職員の健康・衛生管理は
その重要性を増してきております
 と言った言葉はどこへ

 O月O日付「京都新聞」は、△中学校長が仕事(公務)上の問題に関わって「自殺」した旨の報道を行いました。
 その報道からもこの自殺は、「公務災害」と思われる事件であり、事業者としてのOOOO市並びにOOOO市教育委員会の責任は重大です。
 特に、OOOO市教育委員会このO月に
「今日、不登校問題、いじめ問題、生徒指導、学力・進路などの様々な課題が山積するもとで、日夜ご尽力いただたいてる教職員の健康・衛生管理はその重要性を増してきております」
として、
「教頭を中心として、各学校、幼稚園における健康・衛生管理体制の一層め充実・整備を図っていく」
という「労務管理」強化を進めようとしている矢先の事件として無視できない重大な問題があります。
 私たちは、教頭を中心とした健康管理体制を作ろうとするOOOO市並びにOOOO市教育委員会の動きについて
「教職員の真の労働安全衛生を考えないばかりか、教職員が自らの健康問題の意見すら言えない状況をさらに『強固』にし、教職員の健康状況を一層踏みにじり、管理統制の目的として利用しようとするもので、『労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保しなければならない』などの労働安全衛生法の事業者責務を真っ向から踏みにじるものである」
と指摘したばかりです。

死亡した胎児をお腹のなかに入れたまま
 新任の先生を働かせていたということを
 忘れたのか


 今回の校長が自らの生命を絶つという痛ましい事件を考えても、OOOO市教委の「労務管理」強化は、教職員のみならず管理職のいのちと健康を脅かすものであり、OOOO市並びにOOOO市教育委員会このような動きに対して強い怒り、を禁じ得ません。
 今回増補新版として発行された『教職員の労働安全衛生入門』のなかで、細川汀氏は1990年に起きた
「OOOO市並びにOOOO市教育委員会が死亡した胎児をお腹のなかに入れたまま新任の先生を働かせていたという事件がありました」
とOOOO市並びにOOOO市教育委員会の教職員に対する非人間的な対応などに対して厳しく批判し、教職員の本当の労働安全衛生の方向を示唆されています。
 そして
「大切なのは、人間のいのちと健康を守ることを教育のなかでもっとも大切にすること」
と強調されています。

生かされていない
 修学旅行中に死亡したKT先生の公務災害認定

 OOOO市教育委員会は、修学旅行中に死亡したKT先生の公務災害認定が1993年2月大阪高裁判決で確定したにもかかわらず、教職員のいのちと健康を守るための労働条件改善はもとより、その責任を何ら反省しないばかりか、逆に今回のような教職員のいのちと健康を踏みにじる「労務管理」を一層強化しているのは許し難いことです。

2011年6月22日水曜日

休むと職場の中で ナマケテいるという見方が広がるが


                             山城貞治(みなさんへの通信17)

真面目な教師ほどすすむ健康悪化

  「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案」を出して次々と職場から意見が出てきたことを引き続き紹介する。
 教職員の健康実態報告について、そんなにほどくはないのでは、と言う意見が出たが、真剣に教育に取り組んでいる教師ほど、健康破壊が進んでいたのは明確だった。
取り組んだ 

長時間通勤と腰痛とリハビリ勤務


・大阪府との境から、八木町まで長時間通勤している先生が腰痛で9ヶ月間休んでいた。職場復帰の日をめざして「リハビリ勤務をしたい。」ということであった。
 主治医の診断書には、職場復帰に備えて部分的に職場めざすことが重要である、ということなどが書かれていたので管理職に出した。

 他校の前例があり、その要求が通った。
 でも、それで問題が解決したわけではない。
 復帰後の労働条件は、管理職の責任でもあるし、分会が取り組まなければならない、と考えている。
 しかし、ひとりの問題ではなく職場全体の問題として行かなければ、と思っている。

切迫流産の可能性があるよ と

・分会員が非常に少ない職場。
 切迫流産の可能性があるということで、やっと休んでいる先生がいる。
 その先生はいそがしい部にいる。
 一例をいうと、0時間目があって、妊娠しているのに9時まで立ちつづけ。身体の不調を訴えられていた。
 結局、椅子を教室に持ち込んで授業。
 その先生は、前にいた高校の前例もあって
「休めない!」
という意識が強かった。

「切迫流産の可能性があるよ。」

といわれて悩んだあげく、養護教諭や他の先生と相談した。
休むと「またさぼっている。」という先生が
 「休むと職場の中で、ナマケテいるという見方が広がっている。」

と。休んだ先生を自分もそう見ていた。「だから休めない。」ということを言っていた。

 「自分の体の調子が悪いのに、休めない。そういう考えで生徒に接していて、ドウナン。」

と話した。

「生徒も体が悪ければ、しっかり休め、というのだから、先生も調子が悪ければ休まんと。」

と話をして、産休にはいる前に休まれた。

 休むと「またさぼっている。」という先生たちが言い出したが……

生徒も教師も管理職も
  休ませて 休ませて  と保健室に

・保健室には、生徒も休みに来るけれど、先生も休みに来る。
 保健部におられる先生ならそのことはよく知っていると思う。
管理職も来る。
 ウンウンうなって

「休ませてくれ」

と保健室にやってくる。
 休養室はあるけれど、職員室から離れた北向きのじめじめした部屋。布団もない。
 保健室には、養護教諭がカラカラらにしてある「きれいな布団」がある。

  「先生休んだら」

と言うと

「休めない!」

という返事が返ってくる。休めない状況が学校にある。
 労働安全衛生では、自分たちの置かれている状況を知って、それを変えてゆく意識が大切。
 それとともに今の「多忙」をつくっている管理体制との闘いは、切っても切れない問題だ。

あっこはこんだけしか
   うちとこは こんだけしている

・今の職場を見ていると、まず見なければならないのは、仕事が増やされていること。
 なにげなくやっている仕事も、5年前、10年前と比べると非常に多くなっている。
 自分でやっているように見えても、「やらされている」気がする。
 でも気づかないのは、「比較の論理」。

「あっこはこんだけしかしていない。でもうちとこは、こんだけしている。」

 仕事が多い、少ないなどで教師間で比較するのではなく、「しんどい」と思っていることが、教職員間でお互い、ドウ尊重しあえるか、が大切。

みんなで考える
   職場の仲間づくり 集団づくりこそ

・「多忙はナンデカ」を明らかにしつつ、お互いが団結できる職場をつくってゆかなければ。

労働安全衛生の大きな柱に「職場の仲間づくり、集団づくり、みんなで考える。」をつねに考えてゆかないとダメだ。
 そうでないと、お互いの条件・立場も身体も違うのだから、違いをこえて共闘する。そこを重視してゆかなければ。

休憩時間をとれるようにしよう と言うと

 6,7年前に長期病休者が、年間20人以上も続出し、教職員の中で「危機感」が広がった。
 そのため、健康のことをなんとかしなければならない、ということを学校で合意。
 健康問題対策会議がつくられた。そこで、休憩時間をとれるようにしようと言うことになった。

どうせとれっこない
     そんなんとれるわけない

 小学部では、休み時間がないまま、働きづめ。
 それを月、火、木、金に休憩時間を40分とろう、と。
ところが

「そんなんとれるわけない」
「どうせとれっこない」

ということからはじまった。
 そして、提案されたのは、研修時間という健康回復のための時間。会議を精選する。ということだった。

一番困難だった 学校行事の見直しを

 もう一つは、行事の見直し。行事のためにおそくまで学校に残ることが続く。
ところがこの行事見直しが一番むずかしく、合意が得られなかった。
 合意が得られたところから、全校いっせいに取り組んだ。
 そして、「研修時間という健康回復のための時間」のはじめの頃は、病休、特休、年休を取った人がいたときに、その空いた時間に空き時間の先生が入る、ということをしていた。
 
おかしいことは
 おかしいと感じるようになって

それがだんだん、おかしいとみんな考えるようになっていった。
 それで、おかしいところは、管理職に言うようになった。
 そして、校医に頼んで、校内巡視をしてもらったり、労働安全衛生体制のある学校への視察などや病休の先生が復帰してまた病休になることが多いので、リハビリ勤務を考えている。
 「長期病休の人が、身体をだんだん慣らして職場復帰できるように」
と言ったけれど、校長は、
「今の体制にはそういうものはないから、病気を全部治して、仕事が出来るように全部なおして出てきなさい。」
と言う。
 でも、現実にはそれは無理。
 だから無理して学校に出てきて、また、病休に入られる。
 今の体制でギリギリ可能な案を出しても「それは出来ない」と管理職は言う。自助努力なら認めるが……

健康診断結果の 作業経軽減はナシ

 健康診断で異常があった人への「軽減」、検診を増やすなどの提案をしてゆきたいと考えている。
 健康診断で異常があった人などは、本当は作業の軽減をしなければならないのに、府教委や管理職はやらない。
 時間軽減の問題も、校長は
「今の範囲ではないから」
「法にないから、法の範囲で」
と言い、やればやるほど、健康要求を今の体制の範囲ならやって良いというようにしてくる。
 労働安全衛生法にある事業者である、京都府・府教委・校長に要求して闘わないと、本当の労働安全衛生要求は勝ち取れない、と思う。

2011年6月21日火曜日

生徒に語っている健康のあり方が               自分たちを縛っている



  山城貞治(みなさんへの通信16)

  「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案」を出して次々と職場から意見が出てきた。以下紹介する。

分・秒単位で記録しようと考えたが

・自分の仕事(労働)を分・秒単位で記録しようと考えた。
  それは、障害児学校での労働実態を明らかにしようと考えたからである。
 1週間を目標にはじめたが、2日も続かなかった。記録を記録を、と考えていたが、ふ、と気がつくと記入を忘れていた。
 いそがしすぎて記録もメモもできないのが、私たち障害児学校の労働状況。
 ビデオで私たちの教育の取り組みを追いかけ、労働状況を明らかにしなければならないくらい、時間に追われている。
 自分たちの労働を客観的に見ることが出きる専門的な労働安全衛生対策の取り組みが大切ではないか。

次から次に病気になり けがするが危機感だけ

・今年度だけを考えても1ヶ月以上の病休者が16人。腰痛・けいわんが8人、婦人病2人、精神疾患関連2人、けが4人。
 次から次に病気になりけがになる。
 なぜそうなってゆくのかが考えられていない。
 ほっといたら大変なことになるという危機感はあるけど、原因追及・対策がやられてないことを痛感している。
 さらに9月から医療費の改悪があり、分会会議で話し合ったところ
「そうなんや、いままでこんなにかかってたんが、こんなんになった。」
という話が次から次に飛び出して、こんなにも多くの教職員が病院に通院していたのか、とあらためて知った。
 病休で休んでいる教職員のことが「あの人は腰痛で休んでいる」という話だけで終わっている。
 病状をつかんで、その人へどういう支援が出きるのか、を考えることが不十分やった、と分会役員の中で話し合えるようになってきている。

労働安全衛生せんならん
 と思うけれどなにをせんならんのか


 でも、あせる。労働安全衛生せんならん、と思うけれど、なにをせんならんのか。
「思いつくつくママやっていいのか」
といわれると迷う。

「労働安全衛生学習会は、むずかしすぎてよういかん。」

という教職員もいる。
 困って……労働安全衛生学習の資料を何人の人が目をとうすのか、ということがある。
 副委員長が、かみ砕いて説明してくれた。かみ砕いて説明してもらうとわかるんやけど労働安全衛生関係の文章はなかなか分かりにくい。
 そういう中でどうしていったらいいのかの「知恵」を借りたいし、経験を出して欲しい。 

大切な健康問題共通認識
                         
・全校的な共通認識をはかるかが大切。
 各学部や聴言室、事務室寄宿舎がありふだん顔を合わすことがなく、仕事の条件も違う。
 ある学部で病気の人が出ても学部によって実態が違うことからくる気持が食い違いうことがある。
 そのことをどう克服して、健康問題で大変な実態をそれぞれの条件は違うけれど、健康問題でどのように共通認識を持つかということが大切ではないか。
 労働安全衛生対策委員会を分会で作って問題になったのは、
「熱が37度出ていても休めない」
ということがある。
 それぞれが自分の教育実銭を担当しているので、
「絶対休めないんだ。」
と無理している実態がある。

教育実践と健康をどう守るのか

 ストレスが非常に大きい。
 それが全校のことになり切れていない。
 教育実銭と絡んでいる中で健康をどう守るか、という共通理解を形成することは大変むずかしい面がある。
 でも、それをやり遂げないと、と感じています。
 権利の問題でおかしい、ということがあってもやってしまっている。
 それから精神的疲労・ストレスの問題も、ぜひ取り上げて欲しい。
 管理職との関係でも管理体制の問題でストレスが多い。
 そのことが表れにくいけれど、健康破壊につながっていると思われる。 

10日前に退院した先生も修学旅行の付き添い

・修学旅行の問題。北海道までは飛行機。帰りは、船にするようにということで、31時間かけて帰ってくる。
 代休もないまま次の日平常授業。
 無理やないか、という意見が出た。一定のつじつま合わせがされてるが。
 入院していて10日前に退院した先生も修学旅行の付き添いで行くが、管理職は健康面での配慮など何も考えていない。

病気になって年休を出したも
  「年休は認められない」と教頭


・神経関連の病気で休んでいた先生が、職場復帰。
 でもチームを組む先生もしんどくて、疲れ切っていている。
 眠れず、睡眠剤を飲んでいるとのこと。それもこれもあって複雑。
 ある職務分野では、病気で出てきたり休んだりする人がある。
 ある日、ある先生が病気になられて休まれた。
 すると、一人の先生が一日年休を出して休んでいたら、教頭から年休が認められない、というような電話が先生の自宅にあった。
 午後から学校に来ることになった。
 教頭は、「ともかく、学校がしんどいので出てきてほしい」と言う。

給料日は年休認められない と管理職

・年休を出していたら、管理職から、

「今日は給料日だから出てこい。労働基準法の直接通貨で本人へ払わなければならわなければならないから年休は認められない。変更権をワシは言っている」
と言うので、労働基準監督署に聞いたら
「そんなんぜんぜん関係ない」
って。
 それで校長交渉して、批判したことがある。

 年休や病気の人が出ても学校がまうようにするのは、府教委、校長の責任。

セコムの防犯機器の時間をのばしてまで

・ 管理職の巧みな管理体制。そのため「自主規制」「多忙」が続出。
 せんならんことが多い、だからやらんならん。そのため帰れない。
 結果的に、だからだらだら残る。
 セコムの防犯機器が導入されたら勤務時間が終わって早く帰れるのか、と思っていたら、防犯機器の時間をのばしていつまでも残る。
 だから勤務時間が終わって帰る人を、「早く帰る」と悪く言う人がいる。
 高校展があって二日間徹夜した先生がいる。11時すぎまで学校に残っているのがあたりまえのようになっている。
 管理職は「帰れ」と口先だけは言う。
 組合員の少ない学校ではそうなっているのではないか。
 安全衛生委員会が出来たら、管理職に「勧告」出来るとか。歯止め、ブレーキがかけられるように。
 教職員が「けんせい」し合っている。
 長時間労働になっている現状を変えるための、早く帰るための規制は、労働安全衛生にないのか。

府高労働安全衛生政策討議資料を
みんなで「読み合わせ」

・府高労働安全衛生政策討議資料を読み合わせした。

 府立校全体で、安全衛生委員会をつくってゆく、ということは良いと思う。しかし、障害児校では規模が大きいし……。
 3,4年前から分会では、校務分掌に健康対策委員会をつくるよう要求し、健康対策部をつくった。
 たとえば手洗い場。低く作ってあるので、かがんで洗わざるをえない。
 健康上手の位置で洗えるようにしてほしい、腰痛健康診断があるが、その結果の状況を出し合って校長に言って行こうとか、今まで分会で言っていたことが校務で言えるようになった。
 前は、腰痛体操は、8時半前。
 今年は、8時半からしましょう、ということが健康対策委員会から提案されるようになった。
 それだけではダメだけれど、いくつかやってゆかんと。

生徒に語っている健康のあり方が
 自分たちを縛っている

・学校で生徒への「皆勤賞」がある。
 3年間無遅刻無欠席だと表彰される。
 自分もしんどい時に、「休もうかなあ」と考えるときがある。
 その時、自分のやっていたことを考える。
 生徒の進路のことで、「推薦状」を書いたりする時に。生徒がしんどいときに、家に帰って養生するということが大切だと分かっていても「がんばれへんか」と聞いてしまう。
 自分たちが生徒に語っている健康のあり方が、自分たちを縛っているんじゃないか。そういうことをよく考える。
 休んでいる生徒のことは、進路や成績の評価で難しいことがあるが、自分たち教職員が健康のことを考えないと自分も生徒も縛ってしまうことになる。
 教職員の健康診断がやられるのは、授業の合間。
 午前中に3コマ、4コマの授業中に血液の検査。
 血圧調べてもらっている時に、ある生徒のことで呼び出しがかかる。とたんに血圧があがった。
 そんな状況で教職員の健康診断がやられていて、本当に正確なことが分かるのかなあ……と思う。

退職まで20年ほどあるが
 このまま働けるかどうか

 新任から養護学校の教師になって18年。

 退職まで20年ほどあるが、このまま働けるかどうか、を考えたらとても不安。
 あと10年いや7年働けたらいいと思うくらい。
 定年になって、退職することは不可能、と思うぐらいしんどいと実感している。
 養護学校で働いていて定年退職して、その後も健康に老後を送れるようにしなければいけない。
 今の事態は全くそうではない。
 自分自身では、1年でも長く働けるようにというのが現状。
 職員会議で、たびたび健康問題を発言したので「あんた分会の健康問題の担当者になって」と言われて担当者になった。
 自分自身が健康でないのでやって行けるかどうかが不安だから、健康管理担当者会議というのが学校の校務にある。
 その中に分会担当者として、いさんで参加した。準備をして会議に臨んだ。

管理職はクラー止めてさっさと帰るが
うだる暑さの中で教職員は

 しかし、管理職には、健康問題についての考えは全くないことを感じた。
 たとえば、事故で「むち打ち」になった先生に対して管理職はとても冷たい。「診断書を学校まで持ってこい」と言う。
 「みんなの労働実態を出して改善できることが必要ではないか」
と言ったら
「いや違います。この健康管理担当者会議は、健康相談日の日程を決める会議なんです。」
と管理職。
 言いたいことがいっぱいあったのにガックリなる、ストレスがたまる状況。
 夏、部屋が暑すぎて困るのに、管理職はクーラーを止めてさっさと帰る。
 教職員のその時のうだる暑さで仕事する状況など無視。
 教職員が増えたことがあって、休養室が遠い遠いところになったり。
                                         
遠距離通勤で疲労がピークに

 「健康機器を買ってほしい。」
「健康管理医が来てくれるなら校内巡視をしてほしい」
とか言うと、
「健康機器は校内予算がない。家にあるから持ってくる」 
と管理職の解決のしかた。
 学校サイド、分会サイドで解決してゆかなければならない問題があるな、と痛感した。
 養護学校の平均年齢が高く、遠距離通勤が増えている。
 通勤による疲労が多い。

「そんなん忙しいて行けへん」と言う返事だったが


                            山城貞治(みなさんへの通信15)

 「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案  1997年10月18日」を出して、多くの反響があった。
 現在でも、繰り返し職場で、「九つの緊急提案」をみんなに知らせている職場がある。
 そのたびに、「いいこと言ってくれた。」「病院に行ったら早く来たらか、治りが早くなる言われた」との報告がある。
 もう何十年も前に知らせたのに、と思うけれど労働安全衛生は永くやらないといけないなあって話している教職員もいる。
 もちろん、「すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案 」に対して反対意見もあったが、それは内容ではなかった。それは後で述べる。
 まず、二つの意見を知らせたい。

転勤した教職員が死亡したことがあったので……

 校長に何言うても聞かないから、あきらめる傾向があるけれど、労働安全衛生問題は他でできんことがあってもやらないと。
 転勤した教職員が死亡したことがあったので……

 いのちと健康の問題、労働安全衛生問題は職場に体制を作ってやらなあかん……と思うことがあっても、踏ん切りがついていないので今日はこんどこそとやって来た。
 養護教諭にも協力してもらったり、病気の人にも協力してもらったりしてやってゆきたい。

あんたたちが考えなさい わしゃしらん と校長

 数年前に喫煙問題に取り組んだ。職員室で愛煙家が喫煙しているので、管理職に「喫煙室を設けよ!」と言うたら、「あんたたちが考えなさい。わしゃしらん。」と言われて、ビニールで分煙室を作ったんです。
 でも風が吹くと煙は流れるし、漏れるし。
 のどが痛くなる人や鼻の悪い人がいて悩んでいることが分かった。
 そこで、最近喫煙者に呼びかけた。忙しかったけど、10人中3人が集ってくれた。
 「校長は換気扇をつけると言ってるけどどうしようか」と。

押しつけられた仕事と好きな仕事がゴッチャ

 愛煙家の要求もあるので……気持ちよく過ごせるように「分煙室を設けるように」と話し合いをすすめている。
「日本一の高校を」と校長が言う。
 教師も展示会に向けて、11時過ぎまで学校に残って仕事をしている。ケガをした人もいる。
 「押しつけられた仕事と好きな仕事がゴッチャ」になっている労働実態がある。
検査行ったらどうや と何度もすすめらてたのにとお母さん
                             
「そんなん忙しいて行けへん」と言う返事だったが

 ほぼ3週間前にうちの職場から現職死亡が1名でたんですけど……先日おまいりに行ったとき、お母さんが、こうおっしゃられました。

 「ちょうど1年前の10月。調子が悪いんや。いつもお酒を飲むのに、最近お酒がすすめへん。」

と言うので、お母さんが、
「検査行ったらどうや」

と何度もすすめらてたそうです。すると、

「そんなん忙しいて行けへん」

と言う返事だったそうです。 

学期末には戻ってきます と言ったのに
   それ以降教壇に立たれることはなかった


 結局、体調が悪くなってから3ヶ月ぐらいで検査されたんです。
 12月の期末考査が終わった時に
「明日からちょっと検査で入院しますけれど、学期末には戻ってきますので、あとよろしく頼みます」と。
 それ以降教壇に立たれることはなかった。
 検査の結果は進行性の癌。
 本人も告知されていて、その後たびたび職場に、顔をお見せになって現在の病状を話しておられました。

余命ないから子どもたちとすごす時間を と

 自分でも、余命あまりないということを実感されていて、その後休職に入られて……。
 家のことは奥さんにまかせっきりだったので……取り戻すということで3人のお子さんといろいろ話をしたり、出かけたりして……亡くなられた。

不注意論ではなく
 病院に行くひまがなかったのが実態 

クラブでも京都では上位でがんばってこられた先生だし、職場でも保健部長として先頭に立ってがんばった先生。

大切な 「ちょっと悪いなと思ったら医者にかかる」

 まず、提起されているように「ちょっと悪いなと思ったら医者にかかる」ということが大切。
 1年1回の健康診断があるが、1年1回では、ひっかからない、わからへん場合もある。
 私も医者に行っているけど医者は、
「半日やそこらでわからへんで。最低一泊して検査してもらわんと」
と言うことで検査をすすめられているけど、忙しくてなかなか行けない。
 身近なところで亡くなられた先生をみて、家族の悲しまられていることを見て……やはり、自分のいのち、家族のことを考えて割り切って病院に行かんと。

 最後に命を落とすことにつながることを痛感しました。

2011年6月20日月曜日

教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために第1次討議資料1997年8月」から「すぐにでもできる労働安全衛生九つの緊急提案」(1997年10月18日)へ




山城貞治(みなさんへの通信14)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」への意見の一部を引続き再録するが、労働安全衛生対策委員会では、いくら論じていてはダメダ、至急みんなに提起しなければならないことがあると言うことに至った。
 そこで労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」に「すぐにでもできる労働安全衛生九つの緊急提案」を掲載することになる。

府高本部の役員と一緒にMさん宅にお見舞いに
                            R障害児学校 Kさん

病気で休んでいる教職員へのあたたかい支援と闘いを!
☆のんびり、気を楽にして、あわてず休養してね。 
☆腰痛持ちだから、貴方の痛みがよくわかるよ。 
☆今より働きやすい職場にして待ってるよ。
 これは、5月に腰痛で長期の病休に入ったMさんへの私たち寄せ書きの一部です。
 小学部のMさんは、昨年、MK養護学校から転勤し重複児グループの教育を担当。
 その年の秋から腰痛に悩まされ、今年の5月連休明けに
「毎晩痛み止めを飲まないと眠れない。夜中に痛みでうなされる。もう限界!!」
とやむなく長期の病休に入られました。
 7月、府高本部と連絡を取り府高本部の役員さんと一緒にMさん宅にお見舞いに行きました。
 Mさんは、

「やっぱり早めに病休とっといたらよかった。無理してこじらせた。」
「がまんしてた…転勤して1年目やったし…」
「フリーの教員がいないので、みんなに迷惑かけるし……」
と私たちに訴えられました。
 Mさんだけがしんどかったのではありません。

「あなたは、元気に働いている?」
 「そういう自分は元気に働いているか?」


 小学部では、昨年13名中11人が、また今年もすでに12名中5名がなんらかの病気による休みをとっています。
 教職員の健康破壊がすすんでいました。それだからよけいMさんは、無理をして病状を悪化せざるを得なかったのです。
 そのため私たち分会は府高本部と連絡を取り、7月に校長へさらに9月に府教委へと緊急要求書を提出。
 小学部の教職員の健康破壊は、授業の持ち時間数の増加、子どもの障害への配慮からくる緊張と介助的作業の増加、ここ3、4年連続の不当で無配慮な異動などが病気で休む教職員続出の要因として、緊急改善とフリー教員の早急配置を要求していました。
 夏休みの終わりの8月末、私たちは、学校の教職員の健康対策の話し合いをすすめ ています。
 学校では、小学部だけでなくすべての教職員に労働安全衛生が必要になっています。
 私は、一日も早く職場復帰をしたいとねがっているMさんをはじめ、多くの病休者に支援するだけではなく「ともに闘おう」という決意をしています。
 「あなたは、元気に働いている?」
 「そういう自分は元気に働いているか?」
 まづ、みんなで声をかけ合ってみよう!

  生活破壊、健康破壊に歯止めをかけるのはだれ? ー いのちと健康の問題は、闘わないと守れないことを明らかに ー
                                                             ひとりの養護教諭から

 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生対策委員会討議資料や「教職員のための いのちと健康と労働」を充分読んでいます。
 特に「教職員のためのいのちと健康と労働」NO8,NO9は、教育のはたす役割や教職員の任務について的(まと)をえた意見が出ていると思いました。
 私たちの毎日は、目の前にいる生徒のことを考えるといろいろな課題があることに気づき、自分の「意志」で仕事をしているように感じ、自分の生活時間に学校の仕事をどんどん入れてしまい、それにブレーキがかかりません。
 教育の仕事は魅力ある仕事だから、よけいにそうなるのかもしれません。
 でも、それでは、生活や人生を大切にし、教育という労働を通して生徒たちに、生きて教えることにはなりません。

長続きしない 自己犠牲

 日々に追われ、いわば「なりゆきまかせ……」になっているとも思います。
 もっとよく考えると、不十分な教育予算と労働条件を放置して、私たちがすすんで働くかのように仕向けてくる教育政策は、ひどいなあと思います。
 このまま教職員の正当な権利が保障されない状況がもっとすすむなら、「民主的人格を生徒に育成する」ことや「いのちを大切にする教育」は、とてもとても困難です。
 教師の「善意に名を借りた自己犠牲」の持ち出しだけでは、教師の生活破壊や健康破壊はもっと進んで行くと思います。
 自己犠牲は決して長続きしません。
 それに対して、だれが歯止めをかけてくれるのでしょうか?
 教育委員会や文部省が?
 個人で?
 家族が?
 それとも働く状況をよく知っている職場の仲間や組合の闘いでしょうか?
 やっぱりなにより組合の取り組みに期待したいし、組合本部まかせにしないでみんなで考えることが、今もっとも大切であるように感じていますが、いかがでしょう。
 この夏、先輩の養護教諭の先生からこんな話を聞きました。

学んだことから教えることへ
そして教えたことが自分のなかまへの取り組みに


「ずっと以前、性教育をはじめた頃、生徒に性教育を教えるために母性保護も学習した。
 そのころ中学校卒業後すぐに働く生徒も少なくなかったから、性教育の中で生理休暇のことも、なぜ必要か、もふくめて教育した。
 そして、自分が授業をさぼるのに生理だとウソの理由にしてはいけないことも教えた。そして教師自身も生理休暇の必要性がわかり、生理休暇を取れるよう組合で取り組んだ。」

 学んだことから教えることへ、そして、教えたことが自分のなかまへの取り組みに生かすことであった、との話でした。
 今、学ぶことと、それを生かすことの「乖離(かいり)」がさまざまに言われますが、いのちと健康の取り組みに、結びつけて考えてゆきたいと思っています。
 組合では、労働者の基本的権利の問題なんかも取りあげて、いのちと健康の問題は闘わないと守れない、ことにふれていってほしいと思います。
 
緊急提案を出さなければ

そして緊急提案として労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」1997年10月20日 NO15に以下のことを提案した。

教職員のいのちと健康を守り、真の労働安全衛生をすべての教職員のものとするための闘いを進めよう!
 ー抵抗なくして安全なし、闘いなくして労働なしー


病気や災害は個人の体質や不注意によって起こるものではない。
 仲間を見殺しにする学校現場があるとするなら、それは人間を育て人間を大切にする社会を作る教育の場とは言えない。
 教職員は、どんなことがあっても自分の責任のように思うのが常である(そのことを責めているのではない)が、教職員自身の責任にすることは誤っている。本当の原因は別にあり、その責任を明らかにしないかぎり、事故や災害は再びくりかえされるであろう。
 多くの事実がそのことを示しているではないか。
細川汀・垰田和史共著「教職員のための労働安全衛生入門」より









すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案 
                   1997年10月18日
 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生対策委員会 


「教職員のためのいのちと健康と労働」NO11、で副委員長の緊急の訴えが出されました。
 この訴えは、府立校の在職死亡が今年に入って現在分かる範囲でも5名を越えたこと、退職後すぐ死亡している府立校の教職員が少なくないことなどから、緊急対策の提案がだされたものです。
 さらに、京都府立高等学校教職員組合がこの間明らかにしてきた教職員のいのちと健康をまもるための要求に対し、府教委は労働条件の抜本的改善や具体的な手だてを打とうとしていないことに対して再び「厳しい指弾の声明」を出したものです。
 教職員の労働条件改善や労働の上でのいのちと健康を守る責任は、労働基準法や労働安全衛生法上も使用者である京都府教育委員会や事業者である京都府・京都府教育委員会にあることは明白です。
 しかし、彼らがなんら手を打たないからといって、これ以上の死亡者や病休者などを出すことは、どうしても防がなければなりません。
 そのため副委員長は、5点の教職員に対し、緊急の取り組みを提起しました。それをより具体的に提案したのが以下の文章です。
 なおこの提案は、教職員のいのちと健康を守るための提案ですが、京都府・京都府教育委員会の責任を明らかにし、「健康は自己責任」という政府や行政や教育委員会の攻撃を許さない闘いはいささかも手をゆるめることなくすすめて行くことを前提としたものです。


1,からだの調子が悪い、病院にいかんならんなあ、と思っている人、思いながらも病院に行けてない人は、無条件で自分の信頼できる医者・病院に行こう。そして、自分の健康の様子をチエックしよう。また医者から「休むよう」に言われたら必ず休もう。

 寝ていて「途中で目が覚める」「眠れない」「食欲がなくなる」などは、「休め」の合図。内科も精神科も気軽に受診しよう。
 この間府立校の現職死亡や重症の病気、慢性の病気になっている教職員の状況を調べてみると、早く病院に行っていれば、いのちや健康状況の悪化が防げたということが多くあります。
 教職員の健康状況を調べた労働安全衛生研究者から早い時期からこのことが指摘されていました。
 しかし教職員は、府教委などにより長時間過密労働などさまざまなことが「自主的という名を借りた強制」によって、病院に行くひまもないまま自己の健康状況に手が打たれず、自分でどうしようもないぐらいになって病院に行った段階で、手遅れだった、もっと早く治療を受けていればここまで悪化しなかったのに、ということが少なくありません。
 同僚から病院に行くようにすすめられても、「まだ大丈夫や」「休めへん」「時間がない」「自分がいないと教育はどうなるのや、クラスをどうするのや」などのことで病院に行かず死亡した教職員もあり、アドバイスした教職員からは、「無理矢理でも病院につれて行けば良かった」と痛恨の思いの反省の声も聞きます。

 「病院に行こうとすると『見えない垣根』が多くあって、ずるずるとなり、病院に行けなかった。治療を受てから、やっぱり早く病院に行っていれば良かったと思った。早くそのことをみんなに知らせて欲しい。」
 「身体の調子が悪そうだから今日は帰り、あとは心配せんと」
 「調子が悪かったら休み」と話しかけられた仲間の声がうれしかった。」
などの意見も寄せられています。
 仲間として教職員の健康を心配して養護教員部からもこれらの指摘は数多くあります。
 時間が出来たとき、ひまが出来たときと思わず、からだや精神状況が悪いときは、無条件で病院に行きましょう。
 また、病院に通院していても、どうも良くならない、自分の自覚症状と医師の治療があっていない、などと思うことがあれば、病院を変わることもこの間の教職員のいのちと健康問題を考えたとき大変重要であることが分かってきました。
 でも、どこの病院へ行けばよいのか迷ったときは、養護教諭に相談してみましょう。
 迷ったときは、養護教員部が、同じ働く仲間としての立場から健康情報を把握し、相談にのってくれるそうです。
 府高労働安全衛生対策委員会のアドバイザーには、労働安全衛生研究者や医科大学の先生もおられます。その先生からもアドバイスがいただけます。

 2,病気や病気がちの教職員、病気で休んでおられる教職員に対しては、 休んでいる間の職場の保障を府教委や管理職に要求しよう。

 また、病気が 良くなった、と医者からいわれた先生や病気治療で一定期間休んでいた教職員の
職場復帰に対しては、府教委や管理職にリハビリ勤務を要求しよう。
 まわりの教職員は、病気や病気がちや休んでいる教職員へ仲間としての援助を惜しまず、協力しよう。
 病気で休んだり通院するための時間や人員配置は、あきらめることなく仲間の連帯と統一で府教委・管理職に要求しつつ、教職員として助け合い、励まし合いましょう。病気によっては、デリケートな対応が必要な場合もあります。
 その場合は、相談して気配りのある配慮をしましょう。
 そして、「あの人が休むと迷惑する」「自分もしんどいけどがんばっているのに休むなんて」などなどのことは、みんなで話し合い、教職員自身の問題解決にさせられている状況を明らかにし、個人と個人の問題として考えないで、そう考えざるを得なくさせている府教委・管理職の責任として考えましょう。
 その場合は、以下7、の「健康上のプライバシー」を必ず守らせましょう。

3,生理休暇を学習するだけでなく、生理休暇を権利としてとろう。

 女性教職員の異常出産、流産、死産が増えています。
 生理休暇を取っている教職員は、異常出産などが少ないことは明らかです。
 異常出産、流産、死産の予防のためにも女性の健康のためにも生理休暇があります。
 しかし、その権利がほとんど行使されていません。
 すこやかに子どもを生み育てるためにも、元気に更年期を迎えるためにも生理休暇を取ろう。さらに、更年期をむかえた人も生理休暇をとりましょう。

4,食事を規則正しくとろう。「立ち食い」「チョイ食い」をやめて、せめて休んでゆったりした食事と休憩を確保しよう。このことが出来るように府教委・管理職に要求しよう。トイレに行きたいときは、がまんせず行こう。

 また、トイレに行く時間と教職員がいつでも行けるトイレの設置を府教委・管理職に人権問題としても要求しよう。
 養護学校では、教職員の使用するトイレのプライバシーを守る施設にするのは、当然の人権要求。設備の緊急改善を要求しよう。

5,府高労働安全衛生対策委員会のストレッチを労働時間中にこまめにやろう。

 みんなが集まるところやコンピューターの置かれているところや休養室に、労働安全衛生対策委員会作成のストレッチを張り合わせ、意識的に筋肉の緊張をとり身体をほぐそう。
 緊張の連続と身体を使ったときには、ストレッチで、「ホット」一息しましょう。

6,もしも教職員が、病気や災害で倒れたり、死亡したりすることがあったら、直ちに事実を調査し府高本部に連絡しよう。

 府高執行部を呼び原因調査・追求を行い、府教委と管理職の責任を明らかにしよう。
 また病気や災害の原因が府教委と管理職にある場合は、緊急集会や抗議集会を直ちに開こう。そして、多くの教職員や他労組の参加を呼びかけよう。
 教職員の交通事故、病気、自殺などのことも、府高と連絡をとり、府教委などが、事故や災害や病気を個人責任にしたり、責任転嫁したり、労働安全衛生上の問題などがないかなどを検討・調査しよう。
 これは、二度と同じことを繰り返さず、教職員のいのちと健康を守るためにもきわめて重要な取り組みです。

 しかし、労働の上で、災害や病気や死亡などを生み出さないようにする「予防」こそが、労働安全衛生です。私たちは、仲間が災害をうけたり、病気や死亡する事がないよう「予防」を最優先させましょう。

7,府教委や管理職が、教職員の健康状況を悪用したり、他の人に漏らしたり、健康状況を利用して教職員を「おどかしたり」「懐柔したり」「嫌がらせをする」などがあれば、事実と証拠をつかみ、府教委や管理職に直ちに抗議し、闘いをすすめよう。

 教職員の健康状況は、労働安全衛生法上でもプライバシーの保護として制約があり、先進諸国では、本人の了解なしにはたとえ管理職であっても知らせないということは常識の事項。
 使用者側が、労働者の健康状況を利用して管理統制をする事を国際的にも禁じる方向が打ち出されます。

 8,すべての分会に労働安全衛生担当者を置き、府高労働安全衛生の取り組みを成功させよう。

 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生対策委員会「教職員の労働安全衛生衛生問題の政策とその要求実現のために(第1次討議資料)」の分会討議をさらにすすめ、意見や質問や提案を分会労働安全衛生担当者・府高労働安全衛生対策委員会に結集させよう。
 また各種労働安全衛生学習会や他労組の労働安全衛生の取り組みから学びましょう。

9,「教職員の労働安全衛生入門」「安全で健康に働く」をみんなで学習し、意見交流を進め、教職員の労働安全衛生の深い理解を進めよう。

 府高労働安全衛生対策委員会労働安全衛生政策討議資料、京教組養護教員部「教職員のいのちと健康を守る労働安全衛生活動をめざして・討議資料」で討論し、話し合おう。
  「教職員の労働安全衛生入門」「安全で健康に働く」は、今日の教職員の労働安全衛生問題を考える上で欠かせない重要な本です。
  あらゆる角度から学習しましょう。

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために第1次討議資料」へ寄せられた意見を すべて掲載して さらに要求


 山城貞治( みなさんへの通信 13 )

 労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」に「教職員の労働安全衛生問題政策とその要求実現のために(第1次討議資料)」へのみなさんのご意見をお寄せ下さい。」と掲載したところ想像を超えた職場から意見が出された。
 それを労働安全衛生対策委員会で検討し、関連する資料も付けた。
 そのぼんの一部を紹介する(実名での意見であったがここではイニシャルにする。)

  退職平均年齢が50歳以下と知って妻と子のことも考えた討議資料
                           JN高分会 自分の健康を考えはじめた教師
 第一次討議資料を読んで、自分の健康と妻と子のことを考えた。7年間で110人を越える現職死亡が多い、しかも、
 小学校の退職平均年齢が48.9歳、
 中学校が47.5歳、
ということを全教11回定期大会で京教組藤本書記長が発言していた。
 このことを放つておいていいのか、と切実に思う。具体策がどうしても必要だ。
 がんばりすぎは良くない、がんばってしまうが……。
 これまでは、生徒にためという名目で、出来ないことも無理して引き受けると言うことが多々あった。
 教師も自分たちの要求をハッキリ出して、府教委の責任と保障をハッキリすることはが大切。
 私たちは、他の労働者や労働組合が労働形態から提起している問題を受け止めることが大切。
 出来ないと言うことは、「デキナイ」とハッキリ言うことが大切であることはよく分かった。

教育運動に強いが、労働運動に弱いことの克服を
                                               熊 産気


 いのちと健康を守る。
 大変大切なことではある。
 ぜひ、労働基準法や労働安全衛生法が完全適用され、安心して働ける職場が出来ることを望む立場で、いくつかの点で質問したい。

 われわれは、労働の対価として賃金を受け取っているが、教職員にとっての労働(職務内容)が明確にされていないのではないか。
 職種ごとの職務内容(任務論)の確立がされてない中、労働安全衛生法もないのではないか。
 明確に職務内容があるのなら、職種ごとにハッキリ示して欲しい。
 労働安全衛生法に取り組むなら、労働者一人一人の仕事がなになのかを、ハッキリさせておく必要があるがどうか。
 今、公務災害認定で訴訟がやられているが、労使間で職務内容の確認が出来ていないことが原因として考えられるのではないか。
 契約があいまいでは、話にもならないと考えるがどうか。
 特にふれられていない、放課後のクラブ活動や休日にやられている(自主的)クラブ活動をどうとらえるのか。
 
こういったあいまいにことをすましている部分まで、手をつける覚悟が本当にあるのか。
 教職員の勤務形態として、職務内容や服務について一定の自己責任や管理でおこなわれている実態があると思うが、すべて管理職の下でおこなうことになり、管理強化がすすむ面もでてくるがどうか。
 個々の労働感といったものが、否定される部分がでてくると思うが、どうか。労働安全衛生法というのは労働者を守るべき法律であるはずだと思う。
 しかし、一般的に、法律は、どのような者にとっても都合良く解釈できる要素がある。
 労安討議資料にしても、内容はプラス面ばかりが強調されているが、そうで内面も多々あると思うが、どうか。
 既特権の剥奪や労働慣行の廃止などマイナス面もでてくる職場もあるのではないか。
 これらのことを考えて組合は本気で取り組む気があるのか。
 労働者(教職員)の労働意識を根本的に変えていく必要があると思うがどうか。
 教職員も労働者であるという意識がうすいと思うがどうか。
 教育運動には、教職員組合は強いと思うが、労働運動に弱点を持つと思うが、どうか。
 最後に、組合としてどのような学校現場(職場)を理想としているのか。
 また当面なにを獲得目標にしていおられるのか。以上、思いつきの文章になりましたが、質問します。

 府高労働安全衛生第一次討議資料を読んでの感想

1.民主的教師・教育論が果たしてきた役割をあらためて分析、評価しなおすことが必要ではないか?

 教師自らが誤った認識によって、「生徒のため」などという「美名」の下で、自らの権利を自らで制限あるいは、攻撃によって制限されてきた権利を自ら合理化してしまうことが多々あったように思われる。
 またこれまで、そのような自己犠牲を当然と考えていた者からみれば、労働安全衛生体制の確立は、権利のみを全面に、「生徒に冷たい教師」を作り出す体制のようにも映るかも知れない。
 それは「労働安全衛生体制の確立と民主教育を守り発展させていくということが何ら矛盾しない。」という観点が不十分であることのあらわれでもある。
 教職員の権利憲章や労働安全衛生の観点からみて、これまで不十分であった点や誤った点を明らかにし、その上で、労働安全衛生の観点を確立することが必要であると思う。

2.労働安全衛生の問題が府高で取り上げられ、ここまで教職員の関心を集めるまでになった状況で、少し労働安全衛生の言葉が一人歩きをしはじめている感じも一方である。
 これさえあれば労働安全衛生が確立され、あたかも何でもできるような錯覚がひろまりつつあるのではないか?
 労働安全衛生体制の確立はそのようなものではないはずである。
 その中身を本当に有効なものとするには当然に、当局との激烈とも言える、その時々の「力関係」での闘いが必要であるのではないか?
 討議資料を見る限りにはこのような観点が十分には伝わってこない。
 職場でも活きたものとする心構えが必要であることを強調すべき。とも思う。

3.個別の問題で……意見と質問

・学校現場での新規の機械などの導入に関しては、安全教育が必要なことが当然であるが、そもそも安全な機械を導入させることが大切であると思う。
 例.職場のコンピュータディスプレイなど、安かろう悪かろうなものを導入するから、目が疲れるのである。きちんと労働安全衛生の観点で機器選定すべきである。

・産業医の果たす役割が今ひとつわかりにくい。
 例えば単純な疑問として産業医は労働者と設置者のどちらの味方なの?
 個人の主治医と産業医の見解が食い違った場合にはどうなるの?

・東京などで成績率の導入による勤勉手当の差別化の動きがある。そこで、勤務評定による差別賃金制度の導入をやめさせることを追加したらどうか?
多忙化を進めるものでしかないと思う。

府立学校全体に安全衛生委員会を!
                         TN養護学校KM分会 TK


 安全衛生委員会を府立学校全体でつくることに、基本的に賛成。
 いろいろと分会に差違がある中で、すべての職場で一律のものを持つことが運動を広げる糸口になるからです。
 それを基礎に、すべての職場で実態をふまえた労働安全衛生体制を。
じっくり読んで考える
                                
 府高労働安全衛生第一次討議資料は、ゆっくり読んで考えたいと思います。
 職場で問題があるたびに、討議資料を取り出し、読み直し、考えてゆきたいと思います。
 
 府立高全体の安全衛生委員会は必要
                        YS海養護学校分会 NK


 府立学校全体で、ひとつの安全衛生委員会をつくることは必要だと思います。
 
個々の職場の問題が、どうなってゆくのか?
ということもあるので、個々の職場においても安全衛生委員会は、必要だと思います。
うちの学校では、当面は、公務の健康対策委員会があるのでいいと思いますが……。
 こまかいところは読めていないので分かりません。

労働安全衛生基礎資料
労働安全衛生基礎資料国際労働機関(ILO)夜業に関する条約(第171号)日本は、批准していません。
以下仮訳の抜粋です。

 第3条
1,夜業の性質から必要とされる夜業労働者のための特別措置(少なくとも第4条から第10条までに定める措置を含む。)は、夜業労働者の健康を保護し、夜業労働者が家族的責任及び社会的責任を果たすことを援助し、職業上の昇進のための機会を提供し及び夜業労働者に対し適切に補償するためにとられる。
 この措置は、安全及び母性保護の分野においても夜業に従事するすべての労働者のためにとられる。

 第10条
1,使用者は、夜業労働者の業務を必要とする勤務計画を導入するに当たっては、必要とされる職業上の健康のための措置及び社会的な便益について並びにその勤務計画の詳細及び事業場とその従業員とに最も適する夜業の編成の形態の詳細について、関係のある労働者の代表と協議する。
 夜業労働者を雇用する事業場においては、この協議を定期的に行う。

2011年6月19日日曜日

文部科学省は  十数年前から学校安全対策を検討していた



 山城貞治(みなさんへの通信12)

 労働安全衛生対策委員会の活動を急速に強めないとだめだ、労働安全衛生対策委員のみなさんにおねがいする、と府高委員長の要請を受けた労働安全衛生対策委員会は、
 (労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」)を発行し続けるが、それが後々大きな波紋と問題解決を産みだしていく。






















府教委に
安全ぬきの衛生委員会を訂正させる

 まず、労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」NO1を紹介する。

 府教委安全ぬきの衛生委員会を訂正   - 府高執行部、府教委を鋭く追求 -  

 7月4日(金)( 注 1997年)に行われた府高の府教委交渉で、府高執行部は、教職員の健康問題を取り上げ、府教委を厳しく追及。
 特に府教委が、府議会文教委員会や京教組の府教委交渉で教職員の健康のための「衛生委員会を検討」と回答し、健康上の安全問題を「ぬき」にしている点を厳しく追及しました。

 副委員長は

「労働安全衛生法にもとづく健康診断が行われていない」
「人事委員会ですら府教委に36項目の労働基準法・労働安全衛生法違反があると指摘しているではないか」
「労働安全衛生委員会の設置や産業医などの職場巡視すら出来ていないではないか」

と府教委の責任を追及。すると府教委は、
「労安法の趣旨の方向が実現するようにしたい。」

と回答。
 府高委員長が、

「府教委は、従来から衛生委員会と回答している。なぜ『安全』をはずすのか!労働安全衛生法の基本である労働安全衛生委員会設置でいいんだな」

と府教委の教職員の安全を無視した姿勢を批判。府教委は、

「そのとおりです。」

と回答。
 書記長はすかさず

「(府高と)労働安全衛生委員会設置で詰めていくのだな」

と再確認を求めたところ、府教委から

「中身も含めてこれから詰めていく」

との回答を引き出しました。

安全対策は いのちと健康に直結する

 安全問題は、労働安全衛生法上でも
「労働者の危険を防止するための基本となる対策」
「労働災害の原因及び再発防止対策」
などに関わる重大事項で、まさに教職員のいのちと健康に関わる重要事項です。
 またそのための手だてを講じなかった場合には、厳しい罰則が決められています。
 府教委は、ひたすら「安全ぬき」の「衛生委員会設置」を言い続けていましたが、今回の府高の府教委交渉でその責任逃れが暴露され、「労働安全衛生委員会設置」を約束せざるを得なくなりました。
 府高組合員の切実な要求と労働安全衛生問題の学習と取り組みが今回の府教委回答を引き出す成果となっています。
 私たちは、引き続き教職員の労働安全衛生の具体的対策を府教委に要求してゆく必要があります。

文部科学省の動きは先んじていた

 このNO1に掲載した以下の文章は、文部科学省の方向を打ち出すものにしていたとは気がつかなかった。
 掲載した記事は、次のようなものであった。

この夏「教職員のための労働安全衛生入門」でリフレッシュ  - 文部官僚も読んだ注目の本をあなたも -

  今、全国の教職員のいのちと健康を守る上で最適な入門書は、「教職員のための労働安全衛生入門(文理閣発行)」が大きな注目を浴び読まれています。
 この本のきっかけを作ったのが京教組養護教員部。
 教職員の健康診断項目が大きく変わったことをきっかけに教職員の健康と労働を考えよう、と学習会を開き、その学習報告を自主出版しました。
 ところがこの本が全国の教職員から大評判。
 仲間の過労死や病気といった深刻な問題に解明を与えてくれるだけでなく、教育委員会と対等に闘えるテキスト見っかった。
 教職員の疲労の原因がよくわかった。
 疲れていては、いい教育ができない、ではどうすればいいのかが分かった。などの感想が寄せられてきました。
 そこで、自主出版の本を広く読んでもらうために細川汀先生、垰田和史先生の全面協力を得て大幅改定され出版されたのが「最新教職員のための労働安全入門」です。
 
文部官僚が
「最新教職員のための労働安全入門」を取り寄せ研究

 この本を文部官僚が取り寄せ研究していたことも最近分かってきました。
 彼らは、教職員の労働安全衛生入門のテキストとして「最新教職員のための労働安全入門」を無視できなくなっているのです。
 この夏、少しゆっくり出来るとき、この本を読んでみませんか?
 秋に新しい知恵と力が湧いてくると思います。

と言う記事であった。
 「この本を文部官僚が取り寄せ研究していたこと」と書いたのは、自主出版の本を広く読んでもらうために細川汀先生、垰田和史先生の全面協力を得て大幅改定され出版するため出版社に絶えず出入りしていた労働安全衛生委員が、配送担当者から
「文部省から新聞広告を見て電話があった。至急直接3冊を送って欲しいとの注文があったので送った。」
との話を聞いた。
 そこで、「文部省宛か」と聞くと
「いや なんかかなり偉いさんみたいやった。」
と言うことで、よく調べて見ると上級文部官僚宛だった。
 この時は、学校保健法と労働安全衛生法との違いを調べていたのではないか、と軽く考えられていた。

 安全対策マニュアルを出すために使われ
 学校保健法から学校保健安全法改正に

 ところが、この段階で文部科学省内部では、学校安全対策がすでに検討されており、その後相次ぐ学校安全問題にその安全対策マニュアルを出した。

 そして、「学校保健法等の一部を改正する法律(平成20年6月18日法律第73号)」によって、2009年(平成21年)4月1日、学校保健法から学校保健安全法に改正され、学校における安全管理に関する条項が加えられた。

教職員の
労働安全衛生も長いスパンで考えてこそ

 その間の資料を調べてみると、従来の学校保健法で使われた用語・文章ではなく、「最新教職員のための労働安全入門」に書かれていることとほぼ等しい用語・文章が出てくる。
 文部省では、十数年前から「学校安全対策」を検討していたことが解った。
 彼らは、単に「学校保健法と労働安全衛生法との違い」だけでなく、「学校安全対策検討」のため「最新教職員のための労働安全入門」を入手したのだ、ということが今ごろ解る。
 
 彼らは、長いスパンで考えていたのである。 

二度と教職員を見殺しにするような職場にしてはいけないという思いで いつぱいだった

 山城貞治(みなさんへの通信11)

人事委員会の指摘は府教委は知らない

 府高委員長は再度、府教委に問い詰めた。

「人事委員会に学校に安全衛生管理体制の確立をと1981(昭和56)年もまえに指摘されているではないか。」
「府教委は現時点で安全衛生委員会なり、衛生委員会は府高を抜きにつくるはずはないという返事をしたはずだ。」
「どういうことだ。説明せよ。」
と言うと、府教委は、

「あれ(人事委員会)は、学校長に言ったことで、府教委は関与していない。」

府高が知らないのに
 京教組と安全衛生管理体制協議とは

「現に、安全衛生管理体制問題では、1993(平成5)年11月から府教委と京教組第1回協議をしている。」
「府教委としては、労働安全衛生法にそった安全衛生委員会を置きたい、と京教組に提起した。」
「その後、京教組から労働安全衛生法からすれば、衛生委員会設置だと言われて、その方向で話をしている。」

 それを聞いた府高委員長はびっくりして、

「このまえ、現時点で安全衛生委員会なり、衛生委員会は府高を抜きにつくるはずはないという返事だったではないか。」
と言うと
「そうです」
「では、京教組となぜはなしをするのか」
と言うと

「京教組さんが、対応したいと言うことだったので。府高さんはご存じないのですか。」
とやり返されてしまった。
 この話を聞いた府高委員長はかんかんに怒って、京教組書記局に質問に行った。

労働安全衛生法は
教職員のいのちと健康を守る
と言いながら読んでいない

 当時のやりとりはおよそ以下のようだったと聞いている。

「労働安全衛生体制問題で、該当の府高を抜きに何度、なにを話たのか。なぜわれわれに知らさなかったのか。」
「いや、労働安全衛生体制をどうつくるかという申しれが1992(平成4)年府教委からあったから」
「では、なぜ京教組の機関会議で、それを知らさなかったんだ。」
「いや、府教委が内々でということだったので。」
「うちうちとはどういうこと。教職員のいのちと健康問題なのに、うちうち、内緒は絶対してはいけないこと。
 賃金や諸手当問題など話を詰まるまで検討することはあるが、それとこれとは違う。
 しかも、府教委は、労働安全衛生法にそった安全衛生委員会を置きたい、と京教組に提起したのに、逆に、京教組から労働安全衛生法からすれば、衛生委員会設置だ、と言ったらしが、事実なのか。」
「労働安全衛生法では、衛生委員会となっているから」
「労働安全衛生法には、安全衛生委員会、衛生委員会、合わせて安全衛生委員会となっているではないか。」
「日頃から、労働安全衛生法は、教職員のいのちと健康を守る、と言いながら、労働安全衛生法を読んでないということではないか。」
「……」

絶対 
安全対策抜きの衛生委員会は認められない

「しかも、京教組は15支部の集まり、連合体だろう。
 労働安全衛生法から言えば、府教委の事業場は府立学校であり、当該労働組合は府高となるではないか。」
「いったい何のために府教委に、安全対策抜き、の衛生委員会を言い出したのか。
 京都の教職員の災害は、警察官より多いと京教組が資料を出して説明していたではないか。」
「いや、各学校に衛生委員会を作ってもらうためのモデル案をしめそうと思って。」

小学校や中学校では
衛生委員会もできなくなる

「何を言っているの。
京都府下の小中学校で教職員が50人以下のところは、ほとんど。
 ほとんどの学校では、衛生委員会すら出来なくなるということになる。」
「えっ」
「労働安全衛生法とその関連文章等読んでいるのか。
 小規模事業場は衛生委員会も安全衛生委員会もつくらなくてもよいと解釈されている。
 だが、労働災害が一番多いのは、50人以下の中小零細会社じゃないか。労働安全衛生法は、そういう中小零細の会社で働く労働者のことを蔑ろにしている。
 そのような、労働安全衛生法の問題点はいくつもある。そこをキッチリ見ないでいるからそうなるのだ。」
「……」
「府教委との協議は、京教組ではなく府高がする。」

絶対
教職員のいのちと健康を守らないとの決意が

 府高委員長は、キッパリ言い切って、府高本部に戻り、労働安全衛生対策委員会の活動を急速に強めないとだめだ、労働安全衛生対策委員のみなさんにおねがいする、と行動を起こした。

「教職員を見殺しにしない」「してはいけない」という決意がみなぎっていたと、最近、その当時の府高委員長は、元労働安全衛生委員長に幾度もなく言っている。

2011年6月17日金曜日

なにも知らされていなかった 労働基準法・労働安全衛生法違反


 山城貞治(みなさんへの通信10)

府教委に確かめた府高委員長

 「衛生委員会」がつくられていると学校長が報告しているようだ、という報告を受けた府高委員長は、すぐに府教委に問い合わせるとともに各分会に校長に確かめるように指示した。
 各分会からの報告は、
「校長は組合を抜きにかってにつくらない」
というのがほとんどであったが、
「言えない」「何も言うなといわれている。」
という校長もあったとのこと。
 府教委は、安全衛生委員会は府高を抜きにつくるはずはないという返事だった。

以降経過を省略して書くと次のようになる。

奇妙な 
 「言えない」「何も言うなといわれている。」
という校長の発言

 府高労働安全衛生対策委員会では、各学校の校長や府教委の答えに疑問を持った。
 特に「言えない」「何も言うなといわれている。」という校長の話は疑問がある。
 ないならないでキッパリ言えばいいのに、「何も言うなといわれている。」とは、誰に言われているのだろうか。
 おかしい。調べて見る必要がある。
 ということで、府立学校の労働基準監督(寄宿舎・給食現場・現業現場などは労働基準監督署)に行っている府人事委員会事務局を訪ねることになった。

見えた府人事委員会の
労働基準法・労働安全衛生法
    に関する膨大な資料から

 府高労働安全衛生対策委員会として、労働安全衛生問題に取り組みたいから府人事委員会が労働基準法・労働安全衛生法に基づき府立学校の監督を行う場合の手引きや指導文章すべてをいただきたい、と言うと府人事委員会はこころよく承諾して、後日、膨大な資料を提供してくれた。(今日では、これらの情報は情報開示で誰でも入手出来る。)
 
その膨大な資料を読んでいた府高労働安全衛生委員は、ある重大なことが書かれていることを知った。

労働基準法・労働安全衛生法違反
 はすでに府立学校に指摘されていた

 1970(昭和45年) 11月5日
 京都府人事委員会、MK養護の寄宿舎、労働基準法8条号別区分で、「教育事業」ではなく「保健衛生の事業」と決定。(以降同様)

 京都府人事委員会は労働基準法違反がないかどうかを労働基準監督署の「立入調査」に該当するものとして京都府・京都府教育委員会・京都府警管轄の「事業場」に「事業場調査」という名称で立入調査を開始・
 教育委員会関係は、TB高校工業課程を実施。
 この段階では指導指摘はせず、翌年から指摘を開始。当初は主に工課程・農課程・養護学校を中心に「事業場調査」を実施していた。
(京都府立高校学校では、戦後の高校3原則を堅持し、工業高校や商業高校や農業高校ではなく、高校の総合制のため普通科・工業科・商業科などが同一校に設置されていた。)

1972(昭和47)年6月8日労働安全衛生法成立

1973(昭和48)年 1月31日
 京都府人事委員会労働安全衛生法施行にともない号令名等を改正。

労働安全衛生法成立後
7年間で府職員の労働安全衛生規定が作られたのに

1979(昭和54)年 6月29日
京都府職員安全衛生管理規程定められる。

1981(昭和56)年 7月23日 にMI養護学校への立入調査には、労働基準監督署は参加せず。

1、宿日直の許可。
2、年休の消化をさせていない。
3、女子職員の特別休暇ががとれにくくされている。

9月30日  MN高校に京都府人事委員会とともに労働基準監督署による「立入調査」。

1、労働基準法36条による協定。
2、宿日直許可。
3、安全対策。
4、安全衛生管理体制の確立。
5、男女別休養室の設置。
6、特殊健診の実施。
7、有機溶剤・特定化学物質の取扱い。

などなどの11項目が法違反として京都府教育委員会と学校に指摘し、その改善と報告を求める文章による指導をしていた。

1月26日にKZ高校へ京都府人事委員会が立入調査

1、労働基準法36条による協定。
2、宿日直許可。
3、安全対策。
4、安全衛生管理体制の確立。
5、男女別休養室の設置。
6、特殊健診の実施。
7、有機溶剤・特定化学物質の取扱い。
8、年休の消化をさせていない。
9、女子職員の特別休暇ががとれにくくされている。

 入手出来た資料では、これ以降は以前は不明であった。

人事委員会と労働基準局で
 監督の範囲で新たな協定

1982(昭和57)年 1月16日
 府教委、京都府教育庁職員安全衛生管理規定を定める。

 10月28日
 京都府人事委員会従来の協定見直し、用語、用字の「整理」し、労働基準局(当時)と労働基準監督機関の職権の行使の範囲と分担など新たな協定締結。
 府立校では、障害児学校の寄宿舎などが労基局の監督下におかれる。
 しかし、京都府人事委員会では対応できない、化学・工業・農業・などや機械関係などは労働基準監督署などの協力を得る。

安全衛生管理体制の確立などは
 労働安全衛生法成立時以降から
  府教委に指導されていた

 知り得た範囲でも、1981(昭和56)年 には、府人事委員会は、労働基準法・労働安全衛生法違反事項を府立学校に立入調査で指摘していた。
  しかも、安全衛生管理体制の確立をもとっくに指導していたのである。

 1997年以前でも府高の教職員はこのことすら知らされていなかったことになる。
 そこで、府高委員長は再度、府教委に問い詰めることになるが、そこでまた驚くことが続出することになる。今だから、そのことを気兼ねなく明らかに出来る。

2011年6月16日木曜日

百の論議よりもいのちと健康を守る取り組みを具体的に




  山城貞治(みなさんへの通信9)

 労働安全衛生法が、ややこしくされているのは労働者の保護の精神がないためで、京都過労死弁護団の弁護士から

「労働安全衛生法と関連規則、通達など読み切れないほど膨大なものだ。」
と言われ、
「安易に労働安全衛生法云々を言うより、まずみんなのいのちと健康をねがう要求。そこから出発しないとダメダ。教組はそこが弱い。」
と京都を中心に取り組んだ過労死事案の経験からの教訓をズバリ言われ、
「ようは、みんなのいのちと健康を守る取り組みを具体的にしているのか。」
と突きつけられた。
百の論議よりもたしかな一歩であった
 教職員のいのちと健康問題を最優先するため労働安全衛生体制もその視点から考えることとなった。

学んだ 自治体労働者の先駆的な取り組み

 その点で、自治体労働者の先駆的な取り組みから学ぶことになった。

 「いのちと健康を守る」自治体労働者の労働安全衛生読本(自治労連労働安全衛生・職業病対策委員会編 学習の友社)には、次のようなことが書かれていた。

曖昧な「 事業場」の概念・定義

第2編安全衛生を考える視点

 ③「事業場」とは何をさすのか?
「事業場」という言葉をいままで使用してきましたが、「事業場」とは何をさすのでしょうか。

 「事業場」単位で総括安全管理者をはじめ、安全管理者、衛生管理者、各種委員会等の設置・選任が行なわれるのですから、「事業場」の概念、定義は極めて重要です。 
 ところが、労働安全衛生法には「事業場」の定義がありません。
 この「事業場」の概念、定義が暖昧をために、自治体の安全管理体制や、安全衛生委員会の設置や運営等にもさまざまな問題をもたらしています。

事業場とは相関連する組織
のもとに継続的に行われる作業
の一体、と労働省

 労働省は、この「事業場」の定義に関して、
「この法律は、事業場を単位として、その業種、規模等に応じて、安全衛生管理体制、工事計画の届出等の規定を適用することにしており、この法律による事業場の適用単位の考え方は、労働基準法における考え方と同一である。」
とした上で、
「ここで、事業場とは、工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいう。
 したがって、一の事業場であるか否かは主として場所的観念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として一の事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とするものである。」
 (「労働安全衛生法の施行について」昭47.9.18発基第91号)という考えを一応は示しています。

教育委員会の管轄下の給食場を
 一括してひとつの事業場と労働省

 しかし、同時に、

「同一場所にあっても、著しく労働態様を異にする部門が存する場合に、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場ととらえることによってこの法律がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場ととらえるものとする。」
として、具体例として
「工場内の診療所、自動車販売会社に付属する自動車整備工場、学校に附置された給食場等」
を列記しています。
 ここで学校給食の例が出てきましたので、ついでに述べますと、昭48.3.2基発100号
「公立学校の学校給食事業に対する労働基準法の適用について」で、

「今後は、一の教育委員会の管轄下の給食場を一括して一の事業場」とするとともに、労働基準法8条の適用に関しては1号の「製造業」として取り扱う

との見解を示しています。

労働監督機関は
自治体によって異なる等
  複雑怪奇な状況

 ここまでのべてきますと、民間も自治体も事情は同じであると思われるかもしれませんが、実はもう少し複雑な問題が介在するのです。
 民間の場合は、監督機関がすべて労働基準監督署ですから、「事業場」をどのように扱うのかについて暖味な点があっても、労働基準監督署の方で判断、指導を行なうことができます。
 しかし、自治体の場合は、指導監督機関が労働基準監督署、人事委員会(人事委員)、首長の3つにわかれています。
 しかも、このわかれ方が、労働基準法8条による「業種」(1~17号)、現業・非現業等の相違、自治体の性格(都道府県、政令都市等の人事委員会のある自治体、人事委員会のない自治体)、さらには、労働基準局と人事委員会の「協議」によって「業種別」の監督機関の振り分けが自治体によって異なる等の複雑怪奇な状況になっています
 
安全衛生委員会設置は
 自治体では
民間に比べてよく言えば「柔軟」
悪く言えば「いい加減」

 多少わかリにくかったかもしれませんが、以上のことから導かれることは、自治体の場合、安全衛生委員会を設置する「事業場」をどのように設定するのかについて、民間に比べてよく言えば「柔軟」に、悪く言えば「いい加減」に扱うことができるということです。
 「事業場」の問題が、安全衛生委員会のつくり方に大きな関係を持つ.ていることがおわかりいただけたと思います。

以上のことなどなどを学んで、府高の学校に安全衛生委員会を設置する場合は、いくつかの経験を積んで実施することから、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」では、

「安全衛生委員会」が真に教職員のいのちと健康を守る実績ができた段階で、各校で「安全衛生委員会」を作り、さらにきめの細かい教職員のいのちと健康を守る体制を確立すること。

という政策を打ち出した。

とんでもないことが発覚

 だが、学校の教職員から1997年以前にもうすでに学校に「衛生委員会」がつくられていると学校長が報告しているようだ。調べてくれ、という意見がいくつか舞い込んだ。
 そこで調べて見るととんでもないことが発覚した。