2011年7月31日日曜日

危険なアスベストは除去してこそ 安全な学校生活が送れるのに


山城貞治(みなさんへの通信53)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その33)


マスコミのアスベストに対する認識の甘さと報道
 と取材したマスコミ労働者がアスベストを吸引する
   危険も知らないままで

 マスコミ各社がA高校に押し寄せ、写真・テレビに映そうとしたが、A高校の吹きつけアスベストの面積は小さく、写真・テレビでは、ドコにアスベストがあるのか分からないためマスコミ各社は教室の完全密封を解き、前回と同様に校長に指さすように強固に申し入れてきた。

 あまりの強引な話の前で、管理職は教室の完全密封を解き写真・テレビを撮ったが、校長は指さすようなことは何度言われてもしなかったが、写真・テレビは撮り放題であった。

他校はもっと広範囲で
  見てすぐわかる吹きつけアスベストがあったのに

 マスコミが帰った後、教室は再び完全密封をし、衛生委員会が開かれた。
 校長・事務部長から報告を受け、各校の様子を聞くと「サンプル採取による成分分析調査の結果」は、さほど違いがないが数値的に高いと断定したA高校が選ばれたらしく、他校はもっと広い面積でアスベストが吹き付けられ、教室も数十教室に見つけられていた。
 そのことからマスコミをA高校に、引きつけ、他の府立学校の問題へとマスコミが飛びつくのを避けようとしたのではないかとも考えられた。

吹きつけアスベストはとっくに剥落していた

 次の写真は、比較的吹き付けアスベストが少なかったG高校の天井とひび割れ、剥落した吹きつけアスベストと飛散した痕跡の写真(赤線に注意)である。
 だが、このG高校よりひどい状態の高校があった。

 マスコミの取材に府教委は来なかったし、京都府・府教委の謝罪も今後の対処も何らされないまま、学校だけで判断がもとめられることとなった。


















































絶対にアスベストを除去すべきとの意見に
    府教委は同じ答えで終わろうとしたが

 衛生委員から、

1,吹きつけアスベストが見つかったことを全生徒と教職員。保護者・付近住民に事実と謝罪をまず知らせる事。
2,さらに、吹きつけアスベストが工事された時期に遡って、卒業生・教職員・付近住民に知らせる事と共に1,2,の人々全員の特殊健康診断を行うこと。
3,学校の建物に使用されたアスベストは「目視」以外にないか、どうか、専門家に来て調査してもらうこと。
4,見つかったアスベストは封じ込めでは、地震や思わぬ災害が起きたとき、アスベストは一層飛散することになる。(その後、A高校に活断層が横切っていること。そのため優先的に耐震補強工事が行われる。また府立学校のほとんどに年次ごとによる耐震補強工事が行われた。)
5,A高校での吹きつけアスベストは、少ない面積とも言えるが、少ない面積だからアスベストは、安全だという「量の問題」ではない。
 アスベストが、刺さるとそこから悪化し、癌を誘発する危険な物質である事を考えて、「吹きつけアスベストの壁面の全面的除去」が必要である。
 そのため、ただちに府教委に対して学校としても吹きつけアスベストの除去工事を始めるように申し入れること。

が提案され了解された。

 しかし、府教委は「アスベスト除去は、費用がかかる。従来の塗り込め方式でいい」と言う以外、一切の話を受け付けなかった。

2011年7月29日金曜日

アスベストの危険性と安全対策より マスコミ対策を優先し 生徒・教職員・府民の健康安全を考えない教育委員の責任はどこへ


山城貞治(みなさんへの通信52)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その32)


 1986(昭和61)年6月京都府議会で、「子供たちが義務教育の9年間、さらに高校、大学までの16年間にわたって、現に多くのアスベストが使用されている学校でこれを吸い続けているとしたら、10年後、20年後、肺がんの大量発生が予想されるわけで、空恐ろしい限りではありませんか。多くの学校現場で、廊下のPタイルや壁が破れているのを見かけますが、これらの改善は即刻急がなければならないと考えますが、教育長の御所見を伺います。」という質問に対して、教育長は、「教育委員会の関係でありますが、アスベストにつきまして、府の教育委員会におきましては、現在学校とか廊下ではこのような材料は使用いたしておりません」と答えていた。

20年前に府議会でアスベストは使用していないと答弁したのに
アスベストが見つかった時のあまりにも短い教育委員会会議


 ところが、2005年8月24日京都府教委は府立学校3校でアスベストが吹きつけられているのを確認したと発表。
 翌日の25日開かれた会議録では、わずか1時間9分の第1回京都府教育委員会会議で、アスベスト問題が報告されている。
 各教育委員の指導を受けることなく、教育行政スペースで会議が進められていることが良くわかる。
 近年、その内容が明らかにされたので掲載する。
   
イ 府立学校等の吹き付けアスベスト調査(第一次調査)の結果について
【報告】
管理部長(注:府教委管理部長)から府立学校その他教育委員会所管施設におけるアスベスト使用状況調査を実施した結果概要について報告された。
 府立学校については3校で吹き付けアスベストが確認され、17校でアスベスト含有の疑いが強い建材が確認されたこと、アスベストが確認された府立学校については夏休み中を目途に飛散防止工事が完了予定であること、アスベスト含有の疑いが強い府立学校についてはサンプル採取による成分分析調査の結果を待ち必要な安全対策を行う予定であること。また、府立学校以外の所管施設においては吹き付けアスベストは確認されておらず、府立学校と同様に成分分析調査の結果を待ち、必要な安全対策を行うこととしたい旨の報告があった。
【意見等】
 マスコミでも大きく取り上げられているが、生徒が不安にならないよう安全対策についてはしっかりと調査等を行っていることを伝える必要がある。
 アスベストは飛散すると危険ではあるが固定されていれば危険なものではないところから飛散防止処置を適切に行えば安全であり不安を持つ必要がないので、十分調査の上、必要な処置を早急に行うこととの意見集約がなされた。

たったこれだけで終わっている。

生徒・教職員・学校周辺・府民のアスベストの危険性
と安全問題がほとんど論じられることもなく終了

 アスベストの深刻さや生徒・教職員・学校周辺・府民への安全問題がほとんど論じられることもなく、「生徒が不安にならないよう安全対策についてはしっかりと調査等を行っていることを伝える」だけで終わっているのが京都府教育委員会の最高会議なのである。
 ここには、1986(昭和61)年6月京都府議会での教育長の答弁誤りや反省やなどはみじんもない。

府立学校でアスベストは絶対飛散しない
 と考えていた教育委員

 「アスベストは飛散すると危険ではあるが固定されていれば危険なものではない」という考えの誤りは、すでに1986(昭和61)年6月京都府議会で指摘されている。
 学校の建物・機器で、損傷やひび割れや故障などは日常的にあるもので、その修繕・改善がほとんどの府立学校から提出されていることすら無視して会議は極めて短時間で終わっている。

府立学校で、吹きつけアスベストが続々と見つかる

 しかし、その後、「アスベスト(石綿)使用状況調査をするのか。設計図書の点検と職員の目視による調査」だけでも続々とアスベスト使用が見つかり報告され府教委は追加報告を続々とすることになる。
 A高校では、2回目として府教委は、アスベスト吹きつけで最もアスベストが多く見つかった学校としてマスコミに報告した。そのためマスコミ各社が押し寄せる大騒ぎになり、新聞・テレビに報道される事になる。

アスベストが飛散しないための緊急措置とその後の措置
















 その直前、校長(衛生委員会議長)から衛生委員会を開きたいとの要請があった。
 衛生委員会では、衛生管理者(事務部長)から本校で一番古い棟(校舎)のあまり使用されない教室(旧特別教室・旧商業科タイプ室)の黒板上部の一部で吹きつけアスベストが見つかった。(青でラインを引いた部分)他の教室では見つかっていない。府教委から報道各社に発表される予定である、との報告があった。


アスベストの有無という 大変責任が重く
    困難な調査を事務部にやらせる府教委

 そのため衛生委員から
「どのような方法で見つかったのか」
と言う質問に対して、衛生管理者(事務部長)から

「府教委から設計図の点検と職員の目視による調査の指導があり、多くの設計図書の点検と全校舎や天井裏などあらゆるところを見て回って調べた。その結果、それらしいところがあると報告」「その後、業者が来てサンプル(赤い←)を採って調べたところアスベストが見つかったとの報告を府教委から受けた。」

と言う報告だった。そこで矢継ぎ早に質問が出た。そして次のことが判明した。

・調査はその学校の事務部が「設計図書の点検と職員の目視による調査」をするように指導があったこと。
・設計図の点検といっても改修・修理などくり返しているので膨大な設計図を調べなければならなかったこと。
 設計図には、どのような建材が使われているか書かれておらず、目視による調査に頼らざるを得ず大変苦労した。今回発見された教室の一部分は、壁が一度も改修されておらず上部のみ埃がくっついて見た目では区別がつかず、念には念をと思い報告したところアスベストが見つかった。
 なぜ、あの、面積の少ない部分のみに吹き付けアスベストがあったのか、あまりにも過去のことで調べる事が出来なかった。
・府教委からは今のところ何の指導がないが、教室を閉め、使用しないようにしてある。教室の配分はこの会議後教務に変更してもらう。

と言うようなことであった。

ともかく教室すべてを覆い アスベストが飛散しないように

 そこで衛生委員から
「教室のあらゆる隙間を目張りなどして完全に締め切って、教室外に漏れないようにすること。」
「教室の前を通らないようにすること」
「報道各社が来ても、閉鎖を解き、前回発表されたときと同じように教室に入れるなどすると閉鎖した意味がなくなるから閉鎖された教室を見せるだけにすること。それは、報道を断るのではなく、危険なアスベストが見つかり飛散を防ぐためである趣旨を説明すること」
「生徒・教職員・保護者に事実を知らせ、立入禁止を徹底すること」
「明日、再度時間をつくつて衛生委員会を開くこと」
ということで、会議は終わり、教室外側から空気の流通がないようにした。

 しかし、府教委は、吹きつけアスベストが府立校で濃度が一番高かったのがA高校と発表したためマスコミ各社が、A高校のみに押し寄せることとなってしまった。

2011年7月28日木曜日

子どもたちが義務教育の9年間、さらに高校、大学までの16年間にわたって、現に多くのアスベストが使用されている学校でこれを吸い続けているとしたら、10年後、20年後、肺がんの大量発生が予想されるわけで、空恐ろしい限りではありませんか、と府議が質問したのに事実無根の答弁をした府教委が


山城貞治(みなさんへの通信51)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その31)


 2005年8月に府教委が府立学校でアスベスト(石綿)使用状況調査をし、アスベストが見つかった個所の天井を二重にし、外気との接触を遮断する工事に順次着手した件はA高校の衛生委員会(この段階では、結局、府立校には、衛生委員会がつくられることになっていた。)で、取り上げられた。

専門家に調査させるべきだ 
素人では 分からないからよけいにこのアスベストが怖いのだ


労働者側委員から

「府教委は、アスベストなどを府立学校では一切使用していないと言っていたではないか。」
「本校でもアスベスト(石綿)使用状況調査をするのか。設計図書の点検と職員の目視による調査だけで分かるなら、見えない部分にもアスベストが使用されているはず。学校関係者に任せるのではなく専門家に調査させるべきだ。素人では、分からないからよけいにこのアスベストが怖いのだ。」
「だいたいアスベストが飛散しているかもしれない体育館に校長が入って指さし、マスコミが報道することおかしい。一切、アスベストが飛散しないように封鎖すべきだろう。」
「府教委のアスベストを塗り込めるやり方は、間違いがある。剥落したらどうするのか。特に体育館では、体育・クラブなどで激しい運動をするため普通教室以上にアスベストを大量に吸い込む危険性がある。」
「生徒や教職員・学校種辺の住民に事態を説明し、アスベストを取り除くことが第一だ。」
と指摘があったが、管理職は何も知らされていないという返事だった。

アスベストの危険性を徹底的に教職員に知らせたが

 管理職の一部には「きれいな空気を吸って、吐き出せばアスベストも出るのでは。」という意見が出たが、産業医(府教委は健康管理医という)から「いや、そんなものではありませんよ。極めて有害で深刻な問題ですよ。」との話があった。

 その後、労働者側委員が出す衛生委員会ニュースで徹底したアスベストの危険性と特徴を全教職員に知らせたが、その後、A高校でも「吹きつけアスベスト」が見つかった、と府教委がマスコミに知らせ大問題になる。

20年前に府議会でアスベスト問題が取り上げられていたのに
     それを無視しつづけた府教委


 ところが、府立学校でアスベスト問題が大問題になる20年、19年前に京都府議会でアスベスト問題がとりあげられていた事を知るのはズーッとあとであった。
 そこで、1986(昭和61)年6月京都府議会の議事録の抜粋を一部紹介する。

府会議員 次に、アスベスト、いわゆる石綿粉じん対策について質問をいたします。
私は、昨年2月定例会でもこの対策について質問をいたしました。
 この間、国会においても梅田勝前衆議院議員が対策を要求して、厚生省もやっと重い腰を上げ、本格的な調査を行うべく本年度の予算に計上いたしております。
 さらにこの間、多くの学者の研究、調査によって、私が問題にしましたとおり、アスベストを含有するヒューム管からの溶出によって上水道の水から体内に入った結果、これが胃がんの原因となっているとの研究結果が報告されるなど、一層深刻な問題となってきております。
 しかし、京都建築労働組合の対策部会の調査によれば、現在もなお多くの建築資材に含まれたまま使用されたり、労働省が「使用してはならない」としている塗装材料でも、罰則規定がないため、元請の指示によって今なおこれの吹きつけ作業が行われている事実や、清酒のろ過装置に使用されているなど、具体的には何の対策も行われていないのが実態であります。
 一部の建築資材、例えば冷暖房用の断熱材の中に含有表示されているものがあるにすぎず、私がさきの質問で指摘した危険性と新たな研究結果など、肺がんや胃がんの原因としての深刻さに比べると、その対策はまだ緒についたとさえ言えない状況です。
 すなわち、肺がんや胃がんの原因とされるアスベストは、今もなお何らの具体的規制を受けることのないままに、人々の胃を冒し、空気を汚染して充満し、蓄積され続けているわけであります。
 最近、がんによる死亡者が年々ふえ続け、しかも40代の働き盛りの人にも多発をしています。
 そこで質問いたしますが、昨年私が質問しました際・衛生部長は・環境庁が発表した大気汚染調査結果の域を出ない答弁をされましたが、私が今申し上げたとおり、危険性については一層明確になってきています。
 その後、本府独自の調査や研究対策はどうされてきたのか。 お尋ねをいたします。
 国においても今年から調査を行うわけですから、府民の健康を守り、環境対策を進めておられる所管の部長として、今後どう対処されるのか、この間の取り組みと、今後どうされるおつもりか。 また調査をされていましたら、その結果をお答えいただきたいのであります。
 
さらに教育長にお尋ねをいたします。私は昨年の質問で、アメリカの例も述べて、学校の校舎や体育館、あるいはこれらの天井や壁、廊下のPタイルなど、学校現場にこれがたくさん使用されていること。
 肺がんの場合は潜伏期間が約20年という長いものであること、また発病率が極めて高いことを指摘し、注意と改善を勧告しました。
 教育委員会は、この点について調査や改善を行ってこられたのでしょうか。
 お尋ねをいたします。
 また、新築や改築に際して、使用する資材の点検などは行われているのかどうか、お尋ねをいたします。
 子供たちが義務教育の9年間、さらに高校、大学までの16年間にわたって、現に多くのアスベストが使用されている学校でこれを吸い続けているとしたら、10年後、20年後、肺がんの大量発生が予想されるわけで、空恐ろしい限りではありませんか。
 多くの学校現場で、廊下のPタイルや壁が破れているのを見かけますが、これらの改善は即刻急がなければならないと考えますが、教育長の御所見を伺います。


府会議員の質問につき衛生部長が知事に代わって答弁

衛生部長 アスベストによる大気汚染の問題につきましては、環境庁において昭和56年から3カ年計画で各調査を行い、その結果が昨年の2月に公表されたところであります。それによりますと、一般国民にとってのリスクは小さいものの、アスベストが環境蓄積性の高い物質であり、また広範囲に使用されている等から、引き続き環境庁としては環境濃度の推移を把握することとして、昨年度から新たに継続的モニタリングを行っているところでありまして、このモニタリングに京都府も大いに協力をしてきたところであります。この結果につきましては、環境庁においてとりまとめられる予定になっておりまして、その結果に大きな関心を持って見詰めてまいりたい、このように考えております。

教育長 教育委員会の関係でありますが、アスベストにつきまして、府の教育委員会におきましては、現在学校とか廊下ではこのような材料は使用いたしておりませんが、今後関係機関の指導を得まして対応してまいりたいと思っております。

2011年7月27日水曜日

静かなる時限爆弾 アスベストをひたすら隠し続けた教育委員会と教職員組合の果たす役割


山城貞治(みなさんへの通信50)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その30)


 A小学校のアスベスト除去は全面的に行われ、現業職(当時学校用務員・給食調理員)の健康診断が行われ、アスベスト問題に系統的に取り組んでいる、という宇治市職労委員長の話は非常にショッキングだった。

なぜ教職員組合はもっと早く学校にある「静かなる時限爆弾」 アスベスト除去に取り組んでいなかったのか

 さらに、A小学校に多くの組合員がいる教職員組合が、宇治市職労の申し入れにもかからわらずアスベスト問題に取り組まなかったこともさらにショッキングな話であった。
 市職労では、幾度も申し入れたが教職員組合が「共闘」しなかったとのこと。 この両組合は決して対立関係にある組合ではなく、友好関係は強くあったが、市職労の申し入れを取り上げなかったとのこと。

京都府職労から労働安全衛生・労働安全衛生体制の申し入れを京教組執行委員担当が頭から否定した「悲劇」

 これらの事はのちのち知ることになるが、労働安全衛生法成立時以降、京都府の職員の組合である京都府職労が、京教組(当時15支部の連合組合)に労働安全衛生と労働安全衛生体制の申し入れを行っていた。
 窓口で対応した執行委員は、「うちとこはそんなことと関係ありません。」とけんもほろろに断り、執行委員会の議題にもあげていなかったことが解る。
 教職員組合には、あまりにも宇治市職労委員長の話と共通する課題・問題が多い。

労働基準・労働安全衛生を徹底して
 組合学習をすすめていなかった教職員組合

 教職員に労働安全衛生法の「適用」と1996年頃からにわかに主張した京教組は、過去のいきさつ経過をまったく調べもしていなかったのである。

 1972(昭和四十七)年六月労働安全衛生法成立時以降、京都府人事委員会の「監督」に対して、府教委・府立学校管理職は、労働安全衛生体制はもちろん各種労働安全衛生法に基づく措置をしていたとする「虚偽報告」が全面的に明らかになって、府教委は労働安全衛生協議に応じてくる。

 各教育委員会の責任は重大だが、それを追及し、教職員のいのちと健康を守ろうとしなかった教職員組合の問題は肯定出来ないものがある。
 これらの違いはどこにあるのだろうか。
 それは、宇治市職労委員長が明確に述べていた。

委員長は、
 おくれたわけを考えると、特に労働基準法と労働安全衛生法との「からみ」が公務員の場合どうなるのかということが充分とらえ切れていなかったし、充分な学習が出来きれていなかったことが最大の理由としてあげられます。
 そのため宇治市職労としては、宇治市当局に労働安全衛生委員会の確立の要求書を出す前に、徹底した組合としての学習をすすめました。
と述べている。

アスベストの危険と対策が大幅に遅れる

 教職員組合では、この取り組みがほとんどされていなかったために労働安全衛生の取り組みが「おくれた」し、アスベストの危険性について知ろうともしなかったし、聞こうともしなかったと考えられる。
 後日、宇治市職労の取り組んだアスベスト問題時にA小学校に勤務していた教師に聞いたところ「そんなことがあったの」という程度であった。
 宇治市職労の委員長の話を受けて、府高労働安全衛生委員会及び府高本部は府教委に対して府立学校におけるアスベスト使用状況・その除去を申し入れた。
 しかし、「アスベストは府立学校では使われていない」と言う回答で、激しいやりとりになったが、府教委はアスベスト問題では頑なに話し合いに応じなくなった。

隠されていたすベスト問題が表面化、しかし、それでも

2005年を前後して、次の新聞記事が掲載された。

洛東高など3校確認 府立学校の石綿使用 京都府教委 飛散防止へ緊急工事

天井裏にアスベストが吹きつけられているのが確認され、
囲い込み工事が行われる洛東高体育館(京都市山科区安朱)
  

 京都府教委は24日、府立学校などのアスベスト(石綿)使用状況調査で、洛東高(京都市山科区)など府内3校の天井裏などにアスベストが吹きつけられているのを確認したと発表した。いずれも立ち入り禁止にし、飛散防止のため緊急の囲い込み工事を行う。

 府教委は8月1日から10日まで、毒性の強い青石綿などの製造や使用が禁止された1996年度以前に完成したすべての府立学校や府教委所管の施設について、設計図書の点検と職員の目視による調査を行った。
 その結果、▽洛東高の体育館3階天井裏の鉄骨▽久美浜高(京丹後市)の農場コンピューター室天井裏鉄骨▽向日が丘養護学校(長岡京市)の特別教室棟2棟や体育館更衣室、寄宿舎棟食堂の天井-の3校計6カ所でアスベストが吹きつけられているのを確認した。
 府教委はアスベストが見つかった個所の天井を二重にし、外気との接触を遮断する工事に順次着手。工事前後に周辺大気の粉じん濃度調査も行い、飛散状況をチェックする。府教委では「できるだけ早く工事を終え、授業への支障はないようにする」としている。
 府教委はまた、アスベストを含有している可能性がある「ロックウール」(岩綿)については17校3施設、同じく「パーライト」と「バーミキュライト」については64校6施設で使用を確認。アスベストが実際に含有されているか調査した上で対応を検討する。 (京都新聞) 8月24日

2011年7月26日火曜日

労働組合の使命は、天災・人災を問わず組合員のいのちと健康を守ること。そのためにも、労災・職業病を発生させないための職場づくりを最優先させることが重要。 また、いかに予防を重視するかがキーワード


山城貞治(みなさんへの通信49)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その29)


  労働安全衛生は、系統的持続的取り組みが必要である。
 一時的問題の解決は、数十年後に働く人々の重大な健康被害を招く。
 山城貞治(みなさんへの通信)の最後に京都府高では、安全衛生委員会や衛生委員会が結果的にどのようになったかを述べる。

ホームページが示す
  労働安全衛生の系統的持続的取り組み

 しかし、15年間の月日は、府高本部の当初の意気込みと系統的持続的取り組みが見失われているようである。
 それは、1997年から2006年までの約10年間の労働安全衛生の取り組みと各種学習資料・テキストや出版社と協力して出版した労働安全衛生などが、京都府高ホームページですべて、バッサリと掲載されていないことでも解る。
 京都府高労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」は、5分冊の合本にして、ひろくみなさんからの意見を聞いてきた。
 だが、それすらもホームページで掲載されていない。
 そこで、このブログをお借りして、山城貞治がその一部を紹介している。

 1998年1月から3回にわたって京都府下の宇治市職労の委員長へのインタビューを労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」に掲載した。 以下その一部を抜粋して紹介する。

労働基準法と労働安全衛生法との「からみ」が
公務員の場合どうなるのかということが充分とらえ切れていなかった。
 また充分な学習が出来きれていなかったことが最大の理由


宇治市職労が、宇治市当局と労働安全衛生委員会を確立させたのは、1987年。他の自治労連の労働安全衛生の取り組みよりおそかったのでは?

〔宇治市職労委員長〕
 正直言って、おそいんです。
 自治労連として、単組としての取り組むことの要請は、以前からあったんですが。
 もとも宇治市職労は、

「労働組合の使命は、天災・人災を問わず組合員のいのちと健康を守ること。そのためにも、労災・職業病を発生させないための職場づくりを最優先させることが重要。また、いかに予防を重視するかがキーワード。」

という基本的な立場がありましたから。
 労働安全衛生委員会の確立が、おくれたわけを考えると、特に労働基準法と労働安全衛生法との「からみ」が公務員の場合どうなるのかということが充分とらえ切れていなかったし、充分な学習が出来きれていなかったことが最大の理由としてあげられます。
 そのため宇治市職労としては、宇治市当局に労働安全衛生委員会の確立の要求書を出す前に、徹底した組合としての学習をすすめました。

私たち公務員も
 労働基準法や労働安全衛生法の全面適用がある

 民間の労働組合と学習する中で、
「私たち公務員も労働基準法や労働安全衛生法の全面適用があるんだ」
ということを学ぶ度に深めてきました。

 その結果を1987年3月24日に「要求書」として宇治市に提出。
 同年5月8日に宇治市当局から文書による回答があり、職員側委員の専従などで要求が満たされてはいない部分がありましたが、1987年7月に宇治市で労働安全衛生委員会の確立をしました。
当局と文章でのやりとりした理由は

労働安全衛生委員会確立のために文章でのやりとりしたんですか?どんな文章ですか?

〔宇治市職労委員長〕
 次のようなことです。
 私たちは、

「職員の命と健康を守ることと快適な職場環境をつくることは、宇治市当局の重大な責務です。
 そのために、労災・職業病を発生させないことを基本に安全衛生研修・教育の実施、健康診断の実施と管理、自主的な健康づくり、病弱者並びに長期欠勤後の復帰時の業務の軽減対策等の活動を目的とした、労働安全衛生委員会の確立は急務の課題です。」
として、3点の要求をしました。

1,労働安全衛生委員会の確立にあたっては、市職員の労働基準法並びに労働安全衛生法上の運用上の点を勘案し、中央安全衛生委員会の確立と清掃・水道・下水道・保育所・学校・消防の6つの職場安全衛生委員会を確立すること。(注:宇治市職労の場合は、学校の現業職などを組織している。)

宇治市の回答 労働安全衛生法にもとづいて設置する安全衛生委員会は、事業場を単位として、その業種、規模等に応じて整備をはかることを基本としていますが、一方、地方自治体における設置については、組織の規模、任命権者とのからみ等を考慮して判断することが望ましいとの見解も示されているところでもあります。
 今回 宇治市における労働安全衛生管理体制を整備し実施をする時点では先般提案した方法でまいりたいと考えます。

2,労働安全衛生委員会の確立にあたっての管理規定並びに設置要項の制定については、労使協議と合意の下で行うこと。

宇治市の回答 規則の制定については、基本部分の合意が得られた後は、事務的な処理のルールに従い、当局で処理をしたいと考えております。

3,労働安全衛生委員会の活動強化をはかるため、組合側委員について専従職員を配置すること。

宇治市の回答 労働安全衛生法に基づいて実施する内容については、専ら当局責任において行うものとされており、この基本姿勢をふまえて今回実施をしようというものであります。
 従って、担当者も専任職員を配置しており、当面は1名でやりきれるものと考えております。
などです。
 この10年間の闘いの経過の中で、どんな成果を勝ち取ってきたかを説明すると次のようになります。

 宇治市の場合は、安全衛生委員会の中にいくつかの小委員会を設置するというユニークな方法?。
 安全ぬきの衛生委員会では無意味?。

〔宇治市職労委員長〕
 ええそうです。安全衛生委員会のあり方については徹底的に討論しましたから。
 安全ぬきの衛生委員会なんて、無意味ですよ。
 安全対策がなければ、労働安全衛生は意味をなさない。
 労働安全衛生委員会活動では、委員会発足時に社会問題になっていたB型肝炎問題に取り組みました。
 消防職員の救急措置などでB型肝炎にかからないため予防ワクチン接種の実施を当局に迫りました。

 宇治市当局は、「予算がない」。
 安全衛生委員会ではげしく追求・交渉して補正予算を組ませた。
 全員が予防ワクチン接種できるように。
 それと今も引き続き問題にしているアスベスト対策。 

教職員組合がアスベスト対策除去・健康診断などの
   要求を共にしなかったために

 A小学校でアスベストがむき出しになっていた。
 これについて除去する。職員については、アスベストの影響がないかどうかの健康診断を実施させた。

 ところが、宇治久世教組(注:宇治市などを含む教職員組合・現業職などは宇治市職労に組合加入)も教職員組合などは要求しなかったため宇治市職労組合員以外の教職員には、健康診断が実施されなかったという問題を残しました。

2011年7月24日日曜日

危険だから学校の建物から撤去したPCB液が入った安定器を 学校で保管させる府教委の安全対策への無責任な態度が さらに事態を悪化させる


山城貞治(みなさんへの通信48)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その28)


山積みされたPCB液が入った取り外した安定器

A校では、PCB液が入った取り外した安定器は、山積み状態にされ、別の場所に格納されていた。
  そして蛍光灯は増灯され、新型に付け替えられた。
 このことを前後して天井や教室の壁も塗り替えられたが、府高労働安全衛生委員が日常的に校舎の色配置の重要性も考えられ天井と教室の壁面は反射率の一番高い白ではなく、淡いクリーム色に塗り替えられていた。

電気代は安くついたが
PCB液が入った取り外した安定器の処理は

 蛍光灯が入れ替えられて事務部長に聞くと

「たしかに言われた通りでした。蛍光灯増等して電気代がかさむと思っていたけれど、電気代が減っていました。やはり、定期的に蛍光灯を取り替えるほうが、蛍光灯の費用が電気代が減っることで、出費が減ることが分かりました。」

という返事だった。

「でも、あの大量の安定器はどうするの」
「それが、府教委待ちで……」
「早く処理してもらわないと、困るなあ」
「そうなんです」

と言う話になった。

「PCB暴露による健康対策等検討専門家会議」などが
設置された市もあったが
 府教委から謝罪も何のアクションもない

  天井の照明器具が破裂して、安定器内のPCB液が飛び散るという問題が生じた市では、PCBがカネミ油症の原因物質であり、またPCBの一部であるコプラナーPCBがダイオキシン類(PCDDs,PCDFs,及びCo-PCB)に分類されていることから、その健康への影響が心配されたために、教育委員会のもとに「PCB暴露による健康対策等検討専門家会議」が設置された、教育委員会からの謝罪も報道されていた。
  でも、府教委から何の対処もないまま時間だけが経ち、結局、PCB液が入った取り外した安定器を学校が保管することになった。

PCB液が入った取り外した安定器は
頑丈な倉庫が新たに作られ学校で保存
は許されない、と申し入れ

 府高労働安全衛生委員は、「そんな危険なものを学校に保管すること自体危険。除去して安全性を守るべき。」と分会と一緒に校長に申し入れたが、「学校で保管を言われているので」というばかりであった。

 結局、「危険、立入絶対禁止」という頑丈な倉庫が新たに作られ、PCB液が入った取り外した安定器はそこに入れられた。
 校長は、府教委は対処を業者と詰めをしているのでその間保管するだけ、とまたまた府教委を信じ切っているようであった。
 それにしては、頑丈な倉庫が新たに作られたのはなぜか、という問いに答えられないまま時間だけが何年も過ぎ去ったが、他校でも同様な事が行われていることが解り、府高本部と労働安全衛生委員会は「PCB液が入った取り外した安定器」を学校で保管する事は安全に関わることだから撤去を申し入れた。
 でも府教委は何もしなかった。

驚かされた府議会の事実に基づかない答弁と府教委の態度

 PCB液が入った取り外した安定器問題について、その後、数年してある元府高労働安全衛生委員から、2001(平成13)2月京都府議会定例会の議事録を見てびっくりしたとの連絡があった。
 そのやりとりの概要は次の通りであった。

PCB無害化廃棄処理を義務づける法案が提出されたが、
府会議員の質問

府会議員

 発がん性物質であるポリ塩化ビフェニール、いわゆるPCBについてお尋ねいたします。
 PCBは、1968年のカネミ油症事件を契機に1972年から生産・販売が禁止され、それまで絶縁油として使われた使用済み高圧コンデンサーやトランスなどは、厳重な保管が義務づけられたのであります。
 このときは、PCBを無害化する技術がなかったために、このような処置がとられたわけであります。
 最近、PCBを熱処理ではなく科学的に無害化する技術が開発され、これに伴い、今開催中の国会に電力会社など保管事業者に無害化廃棄処理を義務づける法案が提出されたのであります。 これに伴い、都道府県や政令指定都市には、自治体内の事業者がPCB廃棄物を無害化廃棄することを促進する処理計画の策定をすることや、事業者のチェックのために事業者から毎年、保管・処理状況の報告を受け、期間内に処理できない者には立入調査や改善を命令し、さらに罰則もあるとのことであります。

蛍光灯の安定器にも使用されている各学校の状況もの府議の質問に

 そこで、お尋ねいたします。
 この法案の成立を前にして、本府で絶縁体として使用されたPCBが、どれだけあって、また現在保管されている量がどれくらいなのか、紛失しているものがないのか、現在の実態をどのように把握されているのか、お聞かせください。
 あわせて、コンデンサーなど大きな機器だけでなく、蛍光灯の安定器にも使用されており、最近、他府県の学校の教室でこの安定器が破裂し生徒がこれを体に浴びる事故も発生したことから、本府の各学校の状況もお聞かせください。

学校の蛍光灯安定器は、
早期の交換と適切な管理の指導が進められている
   と知事答弁 しかし教育長は答えず

京都府知事

 PCBにつきましては、平成10年度の調査によりまして、京都府内において保管されている高圧トランス、コンデンサーは 8,325台でございまして、15台の紛失を確認したところから、追跡調査を実施し2台を発見するとともに、改めてすべての保管事業所に対し、適正保管について文書指導を行ったところでございます。

 また、学校の蛍光灯安定器につきましては、府教育委員会の調査によりますと、現在、府立学校で180台、公立の幼稚園・小中校で39校約 2,500台が使用されておりまして、これらについては早期の交換と適切な管理の指導が進められているところであります。
 なお、府立学校につきましては、平成13年度早期にすべて対応することとされておりまして、今議会において必要な予算措置をお願いしているところであります。
 いずれにいたしましても、国における法整備の動向なども注視しながら、引き続き適正な保管を指導してまいりたいと考えております。

 安全対策に 事なかれ主義で無責任な府教委の態度

 通常ならば、京都府教育委員会教育長は答弁するはずのものが、何も答弁していない、事に驚かされたばかりか、必要な予算措置とは、頑丈な倉庫をつくる予算であったこと。
 また、府会議員が、PCBを熱処理ではなく科学的に無害化する技術が開発されたことを明らかにしているのに、頑丈な倉庫を作ったままで、安全対策上の問題に対して責任ある行動を取らないで事なかれ主義で無責任な府教委の態度に重大な問題があることが一層判明した。

事業者はやはり京都府・京都府教育委員会であるが

 府高労働安全衛生対策委員会では、

 学校の安全対策などすべてのイニシアチブは知事にあり、府立学校の管理運営を任されている府教委にはいくらでも逃げ道があること。
 従って、府立学校の事業者はやはり京都府・京都府教育委員会である事が鮮明になったこと。
  校長を労働安全衛生法上の事業者とすることは重大な過ちを招くこと。
 以上の事を確認して、危険有害物質の除去を強固にすすめること。
を確認したが、府議会や府議員との連絡は、待ちの姿勢では、何も伝わってこないことを脳裏に焼き付けておかなければならないと知った。

府会議員は
せめて学校の現状を見に来て欲しい、との声も

 労働安全衛生委員の中には、

蛍光灯の安定器の台数が全く違う。一桁少なく言っているのではないか。学校数も。」
「府会議員が学校に来て現状を見るぐらいしても良いのではないか。」
「質問したことが、本当に実行されているのか見に来るぐらいしても良いのに。」

などの不満も出た。

 そのため、府立学校の吹きつけアスベスト問題の問題の時に、A高校の分会役員は現状と対処問題について府会議員に学校の現状を見に来て欲しいと強く要望したが、大々的な報道がされているのに府会議員は誰一人来ることはなかった。

2011年7月23日土曜日

府議会の事実でない答弁が 学校に危険を呼び込んだ


山城貞治(みなさんへの通信47)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その27)


 府高労働安全衛生対策委員会では、府高本部を通じ

政策(12)の学校における有害性のあるものや物理的性質(引火性、爆発性、揮発性など)、発ガン性(変異原性)、アレルギー、遺伝性毒性などの予防策(設備、装置、予防具など)と緊急対策を行うべきだという要求は、1997年から常時要求してきた。

 またA校でもそれらの問題を要求・指摘し、分かる範囲での改善をしてきた。

天井からPCBが飛び散る信じられない事件が

 2000年(平成12年)を前後して各地の学校で天井の照明器具が破裂して、安定器内のPCB液が飛び散るという問題が生じていた。
 ある市の小学校では、教室の突然天井の照明器具が破裂し、はずれ、器具に内装された安定器内のPCB液が飛び散り、その下にいた生徒に降り注いだ。 
 そして、生徒の衣服などにかかり、煙とこげた強い臭いも発生した。

学校は古い校舎が多いから
 「同じ問題がある」と指摘したが

 これらの事が、マスコミで報道されるとA高校の府高労働安全衛生委員は、校長、事務部長のところに行き、

「本校の蛍光灯も古く付け替えをと言っていたけれど府教委が承認しなかった。」
「蛍光灯が切れたら付け替えるより、定期的に付け替えたほうが電気代が安くつくと言い続けていた。」
「でも、今回報道されている照明器具が破裂とPCB問題は、危険きわまりないもの。」
「特に古い器具に問題があるので総点検して欲しい。」

と申し入れた。
 管理職もそれなりに聞いたようであるが、府教委からの報告は府立学校の蛍光灯の器具には問題がない、と言うことだったので……と歯切れの悪い答えだった。
 A校の蛍光灯は無数にあり、高い天井にあり、どのような器具が使われているか、学校で調べる事は簡単でなかった。

文教委員会の教育長の事実
     でない答弁と裏腹に工事が

 そうこうする内に府議会文教委員会で、天井の照明器具が破裂して、安定器内のPCB液が飛び散る問題が取り上げられた。
 教育長は、そのようなことは府立学校には一切ないと答弁した、と報道された。
 ところが、翌年、A高校でいくつかの教育棟の蛍光灯がすべて取り外す工事がはじまることが、校長から発表された。
 
府高労働安全衛生委員は、「安定器内のPCB液が入った蛍光灯器具だろう。」と言い、その事実をみんなに知らせ、この際すべての照明器具を点検すべきであると主張した。
 しかし、内々に……と言われていると管理職はくり返すだけで、府教委から口止めされているようであった。
 その理由は、府議会文教委員会の答弁にあることは考えられた。

工事の工程と安全対策を言ったが

 そこで、「安定器内のPCB液が入った蛍光灯器具危険である」ことは間違いのない事実。
 工事の工程の安全対策・生徒や教職員の安全確保・取り外した「安定器」の処理について、質問したところ、管理職から

「万全の対策をすると府教委から言われている。」

との話であったが、全面的に信じがたい事であった。

今までこんな古い器具を使ってはったんですなあ

 工事は夏休みに行われて、大量の蛍光灯器具が外され、慎重に「安定器」が外されている様子を見ながら、業者に声をかけた。

「大変ですわ。おおすぎるし。」
「今までこんな古い器具を使ってはったんですなあ」
「慎重にしてますよ。」
「取り外した安定器のことは、どうするかは聞いてません。」

と言うことだった。
 管理職も危険な器具は、業者がなんとか処理するだろうと府教委を信じ切っているようであった。

2011年7月22日金曜日

生徒の 興味・関心をひくための 引火、爆発などの実験は必要か


山城貞治(みなさんへの通信46)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その26)


分煙・喫煙室は効果がないことは明らかだったが

(11)学校における喫煙は、その有害性を周知するとともに分煙室は最低条件として設置すること。

 この問題は正面から取り上げないで、粉じん・発がん性の問題として捉え、労働安全衛生の立場から正面から全面禁止としなかった。
 A校の場合は、喫煙室は、室外と室内の二つに設けられていたが、のちのち、分煙は効果がないことが解ったことも知らせた。
 本人被害だけではなく、周辺被害を与えることも。
 禁煙指導は、学校保健指導としても、生徒指導としても取り上げられたが、(12)の項目も意識してA校の労働安全衛生は取り組んだ。

労働条件の悪い病院ほど喫煙率が高い

  滋賀医大予防医学講座(現社会医学講座)が、滋賀県の三つの大病院の看護師の健康調査報告を読むと労働安全衛生も含めて労働条件の悪い病院ほど喫煙率が高い。ストレスが多くなると喫煙することも調査されていたことも参考にした。
 しかし、禁煙教育に熱心だった教師が、(12)の項目の時、特に学校の蛍光灯の安定器にも使用されてPCB問題やアスベスト問題の時には沈黙したのは非常に残念なことであった。

労働安全衛生政策(12)の問題と取り組みは
   書ききれないほど多い
    それほど 学校は有害物質に曝されている


(12)学校における有害性のあるものや物理的性質(引火性、爆発性、揮発性など)、発ガン性(変異原性)、アレルギー、遺伝性毒性などの予防策(設備、装置、予防具など)と緊急対策を行わせる。有害物の基準は、日本産業衛生学会の許容濃度基準を尊重すること。

  これは、もともと「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」を作成する段階で、理科教諭・実習教諭(実習助手)代表者から多くの意見が出たため結果的に(12)の文章で一致した項目である。
 初期の(案)では、

「例え、学習指導要領に書かれているばあいでも、危険な実験・有害物質の使用をやめる。生徒に有害物質や実験の安全性を教える」
などのことが提案されていた。

引火、爆発などの実験は止められないとの猛反発

 しかし、化学を教える教師の代表は

「そんなことでは、授業についてこない。引火、爆発などの実験を目の前で見せて、ヒックリ、驚かさせる。そこから授業をしないと今どきの高校生は授業についてこない。」

「化学工場や有害物質を扱う仕事をしている人々や研究者から、年々高校や大学を卒業して働く若い人が、危険性や安全性を言ってもまったく受け付けない傾向が強くなっている、と聞くが。」
というと、

「たしかに、アメリカから本校に視察にした化学教師は、アメリカではあなたがやっている様な危険な実験は禁止されている、と言っていた。」
「では、止めたら」
と言うと、授業の成立や興味関心を引き出すためが第一条件だ。

有害物質の学習と労働安全衛生でかわってきた教職員

 また、そうでなければ、実習教諭の仕事がなくなる、などなど激しい反対があり、「例え、学習指導要領に書かれているばあいでも、危険な実験・有害物質の使用をやめる。生徒に有害物質や実験の安全性を教える」の文言は検討課題として削除された。

 しかし、大阪で職対連が協賛していた「有害物質を考える」各種研究会に参加する中で、反対していた教師の考えも大きく変わることになる。
 さらにその後出された新学習指導要領では、「危険な実験の禁止」「安全」などの文言が化学などの理科や他の教科でも加わってくる。
 
明るみになった 府立学校のPCB問題

  そして、府立学校の蛍光灯の安定器にも使用されてPCB問題では、さらに労働安全衛生政策(12)の取り組みの必要性が避けられなくなり、次から次へと府立学校の「有害物質」問題が明るみに出る。

2011年7月20日水曜日

まずは 日頃の職員室での仕事を考え 諸外国の事例を紹介するなどの問題点を考える 労働安全衛生活動を進めた


山城貞治(みなさんへの通信45)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その25)


 A校などでは、教職員の協力を得て、職員室の改善事例を提案したりした。
 まず、
 レターケースから書類をとるときに、一番「腰に負担」がかからないのは?①②③どれだと思いますか。レターケースの位置の改善で、腰痛を引き起こす要因が改善されます。ご意見をお寄せください。
 などとして日頃何気なく考えている職員室での「作業」と「姿勢」を提起した。





  そして、スウェーデン国立労働生活研究所が実施した研究プロジェクトをあわせて紹介した。

スウェーデン国立労働生活研究所が研究した教員の健康とストレスの二つの要因
教員間に増大する健康問題とストレス

発行「WORKING LIFE」 2000 NO.2(訳 国際安全衛生センター)

 スウェーデンの教員の20%が、深刻な健康問題と長期的な病休のリスクを負っている。
 スウェーデン国立労働生活研究所が実施した研究プロジェクトで明らかになった。
   1990年代の全国的な労働環境に関するデータを整理した結果、

学校の教員のなかで、

労働量、
疲労感、
あきらめ感、
 不信感

が急速に増大し、特に後期中等教育に携わる女性教員に顕著なことが分かった。





学校に行きたくない
  女性教員が4年間で2倍に

 たとえば、後期中等教育の女性教員のなかで、仕事に行きたくないと感じる人の割合は、1993年の16%から1997年の30%へと倍増している。
 これは憂慮すべき事態である。公的部門の経済状況が改善したにもかかわらず、予測に反して、この傾向に前向きの変化がみられない。
 これはGunnar Aronsson教授と、スウェーデン国立労働生活研究所のInger Ohlsson所長が論文で示した見解である。

 大半の教員は、有意義な仕事をしていると信じており、また仕事の進め方に自らの影響力を行使できると感じているが、1990年代を通じて仕事量は大幅に増大し、学校経営者の側からのサポートは十分ではなかった。

 Aronsson教授とOhlsson所長は、社会的サポートによってストレスと健康への影響は低減できるにもかかわらず、この点で学校には大きな不備があると述べる。

健康を阻害する 学校と教員の労働には二つの大きな特徴

 教授らは、学校と教員の労働には二つの大きな特徴があり、これが健康問題の増大に関係しているとする。

 一つは、教員の生活・労働の場である組織は、相対立する目的と利害関係に満ちており、そこでは定義することの難しい作業の数が増えている。
 たとえば教員は、新しい学校の仕事を開発しながら、同時に自治体の予算を節約するよう求められる。

 二つ目の特徴は、つねに高い注意力と集中力を求められる点である。

教員には、特に 仕事を忘れるための場所が必要

 教員は教室内の視線が集中する中心的存在であり、したがって、リラックスし、精力を回復し、仕事を忘れるための場所が特に必要である。

 だが学校にはそうした環境がほとんどない。
 研究によると、集中力をようする仕事には開放型のオフィスは不適切であるとされているが、学校ではこうした必要性が無視されていると教授らは主張する。

難しい課題 個人差を十分配慮する区別と統一性 快適職場環境は描くものではない


山城貞治(みなさんへの通信44)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その24)


情緒的・精神的なゆとりとうるおいを
          だいじにする個人差の配慮

 学校がよみがえる労働安全衛生( 辻村一郎・川上雅詮 編 文理閣 )は、1998年11月に作成され、府高全組合委員に配布された。
 その本の中で辻村一郎先生(当時 同志社大学教授)は、「生きいき働き続けられる学校にするための労働安全衛生活動」の項で、快適職場環境を形成するためには、

「継続的・計画的に職場を改善することや労働者の意見をよく聞き、さらに個人差を十分配慮すること(例えば、部屋全体に暖房が入っていても個人によって寒いという訴えがあれば、その人の側にスポット暖房を置くなど)、情緒的・精神的なゆとりとうるおいをだいじにする」
事を強調されている。
 快適職場環境は、オフィスなどを想定して考えられているようで、学校のように夏や冬に使わない建築構造によって、快適さは、大きく異なる。
 ところが、近年、教育委員会などは教職員の勤務には夏休みも冬休みもない、と言い、ヨーロッパの労働と真逆な方向を打ち出してきた。

冷暖暖房など必要なかった時代に
      建てられた学校建築上の苦悩

 そのため、学校にクラーや暖房が入れられたたが、全館冷暖房でないため、教室と廊下の温度差は極端な違いとなり、労働安全衛生上の外気温の差が15度は絶えず生じ、それによる健康を害する生徒や教職員も少なくなかった。

 例えば、夏。冷房27,8度の教室からから34,5度以上の廊下や通路を通ってまた冷房27,8度の教室の教室へという移動のくり返しは、生徒以上に慢性病の教職員はもちろん自律神経の失調を産みだした。
 逆に冬は、暖房26,7度の教室からから0度もしくはマイナス1,2度以上の廊下や通路を通ってまた暖房26,7度の教室の教室の教室へという移動のくり返し。
 管理職が口うるさく言う学校では、その温度差はもっとひどくなっていた。

労働安全衛生上の「外気温」と「室内温」の差

 A校では、労働安全衛生上「外気温」と「室内温」の差がなぜ強調されているのか、を教職員に知らせ体感温度と湿度との関係を知らせた。
 各教室には、温度湿度計、職員室には温度湿度計と最高温度最低温度計がおかれ、教職員が絶えずその変化を解るようにした。
 そして、職員室の冬場の暖房を大幅に改善するように要求した。
 それまでむき出しのガスストーブで、少なくない教職員が服を焦がしたり、ガスストーブの上においていた大きなやかんを置く習慣は危険であること。
 そのため、せめて職員室をガスファンヒーターにして換気扇を増設し、こまめに調整するように改善をと文章で校長に申し入れた。
 これも事務部の人々の努力で年次改善が図られたが、「足が冷える」という声も出てきた。
 そこで、職員室の気流を調べたり、床面から順次天井までの温度を調べると、床面になぜか冷風が北南に流れていて職員室の空気がうまく循環していないことが解った。
 そのため苦肉の策として、各机の間に仕切りを作るなどしたが、冷房も同様のことが起きた。

業者が驚いた
 外気を取り入れる換気口などの設備がない部屋

 換気扇を取り替えに来た業者は、

「先生、この学校の部屋おかしいです。普通なら必ず空気の取り入れ口が各部屋に作られているが、それがまったくない。」
「だから、部屋を閉め切ると換気扇のモーターに負担がかかり、寿命が短くなるんです。」

と言われて、夏冬とも空気の取り入れのため部分的に窓を少し開けて空気を取り入れるよう、教職員に説明したが、それでもともかく窓を閉める教師、窓を大きく開けたまま帰宅する教師などさまざまで、 個人差を十分配慮すること、ではなく、個人の意思尊重になってしまったりした。
 教職員の間では、個人差を十分配慮する区別と統一性が難しく、それは教育でも同じではないかという意見が出た。

2011年7月19日火曜日

自然光・見渡せる教室か 閉鎖された教室か 学習効果は






































山城貞治
(みなさんへの通信43)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その23)
 教職員の労働が、長時間立ち仕事であることが基本的に改善がなされていないことを改めさせる。
 特に妊娠中や腰痛、頸肩腕障害や病気などの教職員が常時座ることができるようイスなどの配置を教室や教育現場に整備する。
 この場合、職場の労働環境は、大多数の教職員が満足しても不快に感じる教職員があれば、個人差を配慮する。
の課題にふれておきたい。

教職員の精神衛生の深刻さは
 1960年代の京都府議会本会議でも問題にされている


 「教職員の労働が、長時間立ち仕事であることが基本的に改善」という課題は、障害児学校での腰痛・けいわんの発生など問題にされ、腰痛・けいわんなどの特殊健康診断が府立校では、1970年頃から実施され、その公務災害認定をめぐって二つの公務災害認定が裁判で争われ、どちらも認定された。

 これらの腰痛・けいわんなどの発生は、障害児学校に集中的に現れているが、府立高校でも同様のことがある。
 最近、教職員のメンタル面(政策では、精神衛生とあえて表現している。)が問題にされているがそれは、最近にはじまったことでは決しない。
 1960年代の京都府議会本会議でも多数の管理職を含め教職員が「ノイローゼ」になって学校が立ち行かなくなっている、と府議が問題の深刻さを取り上げている事を考えるなら、潜在化していた教職員の精神負担がより表面化することとなったとも考えられる。
  このことについては、学校における人間関係や学校環境、労働環境の影響も多い。

教師が立つ教壇を広げる
    座れるイスもおける取り組み

 A高校では、ある旧棟の建物の教壇が極端に狭いため、授業中に先生が教壇から落ちる。
ひっくり返る、つまずくなどのことがあった。
    
       



 労働安全衛生委員として事務長が調べた結果、教室面積は他の棟より広いが、教壇だけがナゼか狭い、ことが判明。
 教職員の意見も聞いて、改善されたのが上の写真です。
 黒板面側の面の違うところが、(青の線が引かれた部分)教壇がひろげられた部分です。
 
改善されてから、 教職員の中から

「いつ落ちるかという緊張感がなくなって、安心」
「広くなって教壇を自由に歩きやすくなって、リラックス出来るようになった。」
「身体が、安定した感じなどの意見が出されています。」
 さらに、教師が座るイスも置けるスペースもとれるようになった。

閉鎖か、開放化、どちらが学習効果が上がるかの物議

 教室の廊下側のガラスが、授業に集中するためにすべて透明ガラスではなく、磨りガラスにかえられていました。
 ところが、全面磨りガラスになると廊下の向こうにの樹々の移ろいが見えなくなり生徒も教師も非常な「圧迫感」を受けていました。

「閉じ込められたような感じ」
「眼を1ヶ所に集中するとつかれる。」
「教室が廊下の灯りが入らず暗くなる」
「廊下を通人がまったく見えない。」
「不審者がいても分からない。」
「安全上非常見問題がある。いつも周辺が見渡せることが人間にとっては大切ではないのか。」

などの意見が出されました。
 しかし、
「磨りガラスのほうが、廊下を見て授業に集中しない生徒をなくせる。」

などの強固な意見もあったため廊下側の一部を透明ガラスに換えられました。

 この変化は、生徒にも教師にも好評で、特に教師は教壇に立っているため不審者が廊下を歩くとすぐわかる、圧迫した気分も少しは和らぐと言う意見が多数出されました。
 しかし、窓なしのほうが、学習に集中できるという一部の教師の強硬な意見もあり、学校環境・労働環境の改善の難しさがあった「改善」だったと言えます。



  さらに「 職場の労働環境は、大多数の教職員が満足しても不快に感じる教職員があれば、個人差を配慮する。」の「個人差」の問題ものちのち物議を醸すことになる。

2011年7月17日日曜日

言うほど簡単でない 快適職場環境 一番努力してくれたのは学校事務職員だった 教師はなぜ無関心だったのだか


山城貞治(みなさんへの通信42)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その22)

 意外だったのは、改善して欲しい、と言った教師が、改善されたことも知らないで、無反応なことが多くあったことである、と書いた。このことで不満を抱く教師は少なくないと思うが、事実そうであった。
 「改善された」目に見えるものでも、「ああ、よくなった」と言う教師は少なかった。
 このことは、府高委員長が心に刻んだ「見殺しにしているのではないか、」と言われたことと共通しているように思えてならない。

快適環境に出来るか 職員室は

 A校での改善の一部を紹介したい。

職員室の快適環境化

①イスの軽量化をはかるが、かといって軽すぎて滑りやすくならないもの。ストッパーがついているもの。
②肘付きは、必ずついているもので仕事時における腕を休める、リラックス効果がある。
などを考え暫時更新されたが、背もたれ部分が短い等まだまだ課題がある。
  Fは、教職員が座っていないスペースの写真であるが、教職員が座ると、たちまち行き来が難しいくなるなどの問題があった。Eは旧来の教頭などが使っていたイスである。

役付きは肘つき。
 役なしは肘なしという旧来の行政の伝統を受け継いだものであるが、おかしな伝統である。
 ちなみにEのイスは、重く座り心地が悪い。
 コンピュータの導入により、労働安全衛生委員は、背もたれがもっと長く、肘つきの高さ調整や机そのものの改善を求めた。
 しかし、ヨーロッパのようなコンピュータイスや机は、贅沢すぎるとの声が教師から強く出た。
 F 下方の左右に伸びるカバーは、コンピュータのランや電線が内部にある。
 狭い職員室でコードを引っかけつまずかないための安全対策として床全面に張り巡らされている。
 写真では見えないが、照明もかなり工夫され、それぞれの机にはデスク照明が配置されている。

大工事の結果の環境のよさ

 
前述した学校内を明るくする取り組みの一部は、以下の通りである。
A(校舎吹き抜け部分)・B(体育館天井)の照明灯は、非常に高い位置にあるため「球切れ」があってもすぐ球を換えることは出来ず、業者を呼んで球換えをすると足場を組んだり、クレーン車を必要としたので費用がかかるという問題があった。

 そのため球そのものを検討して省エネで、より明るい球に変更する。

 時間はかかるが、球の覆いごとワイヤーで降ろせるようにして「球切れ費用の削減」をはかることとなった。
 結果的にA・Bの照明効果は大きく、
それまである部分は明るくある部分は暗いという不均衡照明状況でがあったが、光が均一にとどく効果を生み出した。

エアコン設置できないから 大型ファンでが大好評 





 また工事の時にAの↑部分に大型ファン二機が設置された。
 Aは、吹き抜け構造になっているにもかかわらず天井には換気口がなかった。
 そのため夏期は1階、2階、3階と階段を上がる度に温度が上昇し、6月から9月にかけては熱風が籠もるとともにイス、机が高温になり、生徒の汗が机上にしたたり落ちるという状況があった。
 生徒の汗でプリントがクシャクシャになるという事がしばしばあった。

 3階の教室の部屋の温度を測ると40度程であったからどれ程暑いか想像できるだろう。
 学習する環境どころではなかったのである。
 府教委が冷房を設置する以前。
 この問題を改善するため分会役員・労働安全衛生員と事務部で話し合った結果、天井部分に換気を設備することでしのげるのではないか、ということになり、月日を経て大型ファンが設置された。
 ところがこのことを気づかない教師から、「この棟は やけに涼しいなあ」という感想が次々出されてきた。

新型インフルインザ流行時の夏場に威力発揮

 
このファンは、授業中は騒音をより少なくするためファンを停止するタイマー式で、冷房設備が全校に配置された段階でも引き続き稼働しているが、この棟の夏場の冷房による電気使用量は少なくなっている、と事務部長から報告があった。
 
さらに意外なことが、その後解った。
 新型インフルエンザが猛威をふるったとき、教室の温度がドンドンとあがった。
 そこでその後設置されたクーラーを入れることになった。
 このクーラーを入れるとき労働安全衛生対策員は「エアコンにしてほしい。巡回式のクーラーは効率がよいが、教室の空気をより汚染するだけだ。」と反対した。しかし、府教委は、エアコンを入れなかった。
 新型インフルエンザが流行しているときに教室を閉め切って、エアコンを入れるとさらに新型インフルエンザが広がる。
 そのため各教室では暑さをこらえることにしたが、大型ファンが設置が設置された棟だけは、涼しく、心地よい環境で学習できたと言うことがあった。

 夏場に新型インフルエンザの流行。環境の改善は、このようなところでも威力を発揮した。  職員室の快適環境化のためにまずイスが年次を追って更新された。


2011年7月15日金曜日

学校の安全対策改善は 容易ではなかったが


山城貞治(みなさんへの通信41)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その21)


解ってきた「仏をつくって魂入れず」の批判の内容

 労働基準監督官の学習や第一線背活躍されている弁護士・医師・研究者などの学習によって、京都府高では、「労働安全衛生体制確立で多くが解決するのではなく、労働条件の改善と要求運動や違法を許さない取り組みがないと労働安全衛生は生きてこない。
 「仏をつくって魂入れず」と他の労働安全衛生関係者から批判されていた事の意味が次第にわかりつつあった。

 そこで、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」労働安全衛生対策についての項目について述べて行きたい。

(10)職場の労働環境については根本的見直しをはかり、教職員の要求を受け入れ、生き生きと希望のもて、自由に話せる職場環境(快適で安全な職場)にすることを要求する。
 特に教職員の労働が、長時間立ち仕事であることが基本的に改善がなされていないことを改めさせる。特に妊娠中や腰痛、頸肩腕障害や病気などの教職員が常時座ることができるようイスなどの配置を教室や教育現場に整備する。職員室などの机イスなど既存の事務机などを快適なものとするため基本的に入れ替えるとともに職員室や事務室などを大幅に広げる。
 この場合、職場の労働環境は、大多数の教職員が満足しても不快に感じる教職員があれば、個人差を配慮する。


安全対策からのアンケートからの安全改善

 このことの取り組みは、府立学校でさまざまな取り組みがされた。
 そして、数え切れない労働安全衛生のための改善が図られた。

 そこでまず、A校での労働安全衛生の取り組みを紹介したい。
A校では、全教職員に安全対策からのアンケートをとった。
 最初の頃は、◎印の次のようなささやかな要求が出されてきた。それらは時間がかかったが、管理職へ要求し※印のように改善されて行った。

◎体育館2階のギャラリーがともかく危険。釘のついた角材が放置されて、足に刺さった人もいる。消火器と書いてある下に空の一升びんだけある。窓を開けようとすると、絶対危険。

※ 体育館2階のギャラリーにものを置かないようにして、危険なものは撤去。

簡単な改善も膨大な費用がかかるが
  事務職員が系統的粘り強く努力

 また、体育館のライト球が切れると大型クレーン車で天井まで昇降させライト球を変えなければならず、そのため一球変えるための費用が高額になり、放置されることが多かった。
 そのため、体育館の床が明るいところと暗いところがあり、教職員や生徒にとって非常に危険である事を府高労働安全衛生委員が指摘。
 事務担当者の職員は改善のために多額の費用がかかるため頭を抱えていたが、ライト球と改善費などを計算し、府教委に改善計画を提出。
 すぐには実現しなかったが、粘り強く事務部が府・府教委に予算要求。
 京都府の予算で、天井のライトが昇降できるように改善され、ライト球の付け替えが容易に出来るようになった

 しかし、この工事はライトの数から考えても大変な工事であった。
学校という「箱」を作るが そこで学ぶ人々のことが考えられていない

◎危険なのは雨が降った校舎に入る広いスペース。滑ってスッテンコロリと腰を打った人もいる。

※ これも簡単に解決できなかった。学校設計者が、外観を見栄えよくするためにギリシアまがいの高い柱を校舎入り口に立てたが、雨が降ると床面がずぶ濡れ、転んでケガをする教職員・生徒も多いため、滑り止めシートを置いた。
 しかし多数の生徒教職員が出入りするため、滑り止めシートがずれるなどのことが出てきた。
 床面の傾斜を測ると平面だったので、タイルをはがして傾斜を付けて、滑らないタイルを張り直す作業をしてもらった。
 すると、雨が吹き込んでも床に水が溜まることは非常にすくなったが、根本的解決にならなかった。

◎△号教室の両サイドの窓がサッシが曲がっているためかなかなか閉まらない。力を入れても閉まらない。
 ともかく閉めるだけでしんどくなる。何とかして。


※ 旧式のサッシで、歪んだり、外れたりするため全面的に校舎のサッシを新式に入れ替えてもった。色や防音性も充分考えて。 
だが、これは大変な大規模工事で予算も私たちの想像を超えたものであった。
まず、校舎全体に足場を組むことからはじまる作業を考えると理解できるだろう。
  これも、すぐには実現しなかったが、粘り強く事務部が府・府教委に予算要求して数年がかりで改善された。

◎△号館の階段のスイッチが夜は、暗くてスイッチが入れにくい。
特にスイッチが奥まったところにあるのでスイッチを探すだけでも危険。


※ これは簡単に解決できると考えたが、校舎の配線図を見ると新たな配線が必要となったが、学校へ配分されている修繕費で、改善された。

◎グランドの照明を切ったとたん特別教室に網戸がないため虫が殺到して非衛生的で困る。

※ これも学校へ配分されている修繕費で、改善された。

◎△号館の非常階段は、雨が降るとぬれて滑りやすくよく転ぶ。
 危険であるので改善して欲しい。

※ 非常階段は、特別に建築上の制約があるので日常的に使われること自体が問題がある、と指摘された。
 しかし、継ぎ足し継ぎ足しの校舎建築で非常階段を通らないと次の教室に行くのに間に合わないなどなどの問題があった。 
まして、非常災害時に通る階段。滑るようでは困ると言うことで次年度に改善された。

学校から予算要求⇒府教委が学校の予算要求を認めたら京都府に予算要求⇒京都府が認めたなら予算化⇒府教委に通知⇒府教委から学校に通知⇒改善

 これは、労働安全衛生対策のはじまりであったが、どれ一つ見ても簡単に解決できるようで、学校事務の担当者や事務部と話し合うと一家庭の一部を修繕するような費用でないことが解った。
 また、そのような費用を府教委が理解して、府に予算化してもらい、改善費用が出る事は非常に困難であった。
 府教委や府は、新設高校には予算をつぎ込むが、つぎ込んだ後の改善は府費の無駄使いという考えが根本的にあった。

安全対策に真剣な事務職員 意外に無関心な教師

 でも、学校事務担当者や事務部は、本当に大切なことだと解るとズーッと覚えていて、すぐには実現できない改善を時間をかけて改善するように努力してくれた。

 意外だったのは、改善して欲しい、と言った教師が、改善されたことも知らないで、無反応なことが多くあったことである。

働いていることで健康害するような学校では、いい教育もできないし、いい生徒も育たないだろう


山城貞治(みなさんへの通信41)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その21)
労働者のいのちと権利を守る最前線から労働基準監督官からみた学校現場 講演要旨


悪影響を及ぼすウソの報告の放置

 労働基準監督署にウソの報告をしてくる人もいる。
 そうなると逆に問題を重くみることになる。
 例えば、36協定がない、休憩がないと正直に書いてくれば「ああこれくらいの事業所ならばそうなるかもしれないと」考えることもある。
 ところが、それもないのにあります、しています、と書いてくると司法事件、送検を考える。
 そういうことを放っておくと他に悪い影響を及ぼす。
 労働災害かくしをしたり、死病報告をしてこなかったことが、なにかのことで発覚すると検察庁に書類送検したくなる。
 ウソの報告があることに対して労働組合として問題にすることは当然として、京都府人事委員会がどういうつもりなのか、ということが問題になるだろう。

校長は事業者ではない
 校長が事業者とするのは校長がかわいそう

 超過勤務の問題、有給休暇の取得の問題がある。
 サービス残業という実態はあるが、臨時・緊急にやむを得ないということが基本である。
 教職員調整手当てという実際に7時間、6時間分で超過勤務がごまかされている問題がある。
 そういうことをどう考えるかということが、京都府人事委員会の立ち入り調査結果に表れているのではないだろうか。
 衛生管理者や健康診断結果報告が出されていない、安全衛生委員会がつくられていないなどの問題がある。
 府立学校の労働安全衛生体制について話が進められているらしいが、校長があまりにも「立派すぎる」ということがあるのではないだろうか。
 校長が事業者とされているらしいが、校長は事業者ではない。
 例えば学校法人で、理事長が校長でその学校法人がそこしかない場合は、校長は事業者かな、となるかもしれない。 

私立以外の公立学校の労働安全衛生法の事業者は
           知事や市町村長

一般的に公共団体の責任者である知事や市長村長である。
 府立学校の場合は、校長が事業者としても校長がかわいそう。
 自ら何もできない人を、事業者にすることは、どこかが切れているような逃げのことがあるように思える。
 府立学校では、給食事業場は製造業であり衛生委員会ではなく安全衛生委員会を設置する必要がある。
 安全管理者なども必要になる。
 健康管理医も労働安全衛生上の産業医であるならば、単なる医者で済ますことはできない。
 産業になる場合は、認定産業医になるための講習などがある。産業になるためにはいろんな研修などがあるが、単なる医者では産業医にはなれない。
 府立学校労働安全衛生体制について教職員3+αという話しが出ているらしいが、善意でいえば労働者代表ということになるが、少なくとも労働組合の推薦を受けた人でないとダメだ。
 労働組合の推薦を受けた人とのそれぞれ半数で安全衛生委員会がつくられなければならない。

労働安全衛生法以前の
   医者なし健康診断 事後処理ナシ

 さらに、医者による健康診断が行われていない、事後処理が行われていない、ということがあるらしい。
  しかし、医師による健康診断が行われていないということは労働安全衛生以前の問題だ。
 医療行為をしてはいけない人がしていることになるから。
 労働安全衛生法などでは、事後措置は事業者がしなさいということになっている。
 事業者が行った時の措置に対して、産業医の意見を聞きなさいということになっている。
 事業者と労働者の関係は、使っているものと使われている側という関係になる。
 だから、産業医は労働者を使っているわけではない。
 だから、産業医が事後措置のアドバイスに留まるというのは当たり前のことになる。

何も考えていないととしか考えようがない
                 死傷病報告がなされていないこと

 京都府人事委員会に死傷病報告がされていない。

 京建労では「私傷病報告をしないことは労災隠しである」という訴えの運動をしたことがある。
 しかし、報告をしないということは、それ以前の問題がある。
 死傷病者が出た場合報告しなければいけない、ということすら知らないのではないか。
 こけた、切った、骨が折れたなどのことは、頸肩腕障害などと違って公務災害で争いになるようなことではない。
 だから、それを報告しないというのはそんなことを知らないか、何も考えていないととしか考えようがない。

人事委員会を監督する監察官制度があるのか?

 次に、京都府人事委員会はネズミゴキブリの指摘をしている。
 労働基準監督官をしていて、20年間ネズミゴキブリの問題で違反の指摘をしたことはない。
 これらは、発疹チフス、コレラなど大変な病気をまん延させることから労働安全衛生法や労働安全衛生規則で決められてきた。
 今日ではそんなことをあまり問題にしない。
 京都府人事委員会は、労働基準監督をするだけではなく他の仕事をしているので人数わからなくて大変だなあと思うぐらいである。

 府立学校を京都府人事委員会が監督している監察官制度があるのだろうか?
 労働省には、監察官制度というのがある。京都労働基準局には監察官が3人いる。
 郵政には郵政監察いうのがある。郵政監察で告訴した、ということを聞いたりしたのでは。
 司法警察権、監察権というのが郵政にある。
 労働省の中には、それと同じ監察官制度というのがある。
 それが人事委員会にあるのだろうか?

労働基準監督官と人事委員会が
   共同する協定が守られていないのでは

 京都労働基準局と京都府人事委員会は、労働基準監督権をめぐって過去何度か協定を結んでいる。
 その協定書の中に、場合によっては労働基準監督署の指導と援助を受けるたり調査を依頼することが書かれている。
 人事委員会としては、専門的なことは労働基準局に「どうしたらいいのか」「これを調査してほしい」などのことをお願いする協定になっている。
 でもそのことが実際に行われているかどうかあまり記憶がない。

 かなり昔に、ボイラーなど特定機械の検査で労働基準監督官が行っていたことがあるかもしれない。そういう検査は、人事委員会ができないので共同で労働基準監督官がいくなどのことがあったようである。

是正勧告書・使用停止等命令書が出ると
  企業は何とか是正しようと悩むが
 人事委員会は指摘だけで改善されるシステムがない

 このように考えてくると京都府人事委員会が実施している労働基準法、労働安全衛生法、船員法などの法違反指摘は、指摘だけで改善されないシステムになっているのか、と思ってしまう。
 法違反は何度も指摘されているのに改善されていない。
 指摘されている側(府立学校)が、学校独自でできるのか、それとも上のレベル(府教委)でないと改善できないのかともかく改善されるシステムがないように思われる。
 労働基準監督署が、是正勧告書・使用停止等命令書を出すと企業の場合は自分のところで何とか是正しようと悩む。

生徒数が減ると先生を
解雇するという就業規則を作る動きが私学で

 最近私学の学校に監督に行くことは少ないが、昔私学の学校に監督に行くと休憩がない、休日がない、宿直があると。
 その理由は生徒指導がある、と言うのが実状だった。
 最近、私学の現状はもっとひどい状況になっている。
 生徒数の減少ということで、当局は危機意識を持っている。そのため就業規則を変えようとする。
 生徒数が減少した場合は、先生を解雇しますという就業規則を作ろうとする動きがあると聞いている。
 生徒数が減ると解雇になる、講師が増えて2,3年の有期雇用がすすめられる、そういうことが先取りされてやられている。
 そのため私学では、労働時間問題よりも身分の確保の問題が大きい。

労働組合の組織の存亡の危機と労働法制の改悪

 大企業は、労働法制の改悪をはじめ21世紀を考えるグローバルな方向を考えそのための準備を着々としている。
 ところが日本の労働組合は、イタリアやドイツやフランスの労働組合は…というが、反対方向に行っている気がしてならない。
 例えば労働法制の改悪の問題でも、労働者の根幹にかかわることなのに何か無関心である。
 もっと大変だ、と思う人がもっともっと出てきてもよかったと思うが。
 労働組合にはいろいろの立場があるが労働法制の改悪の問題が、なぜ共通問題にならないのか。
 そういう点から考えてみても大企業がいうグローバルの方向と闘おうとしても太刀打ちできないことがあるのではないか。
 大企業は本気であるし、本気でやっている。
 今は民間の労働組合は、自分のところの最低労働条件を守るので精いっぱい。労働時間、賃金、解雇に追われていて労働組合の様子が見えてこない、そのため労働組合の組織の存亡の問題が生まれている。
 労働組合が、自分のところをどうするかというぎりぎりのところに追い込まれている様子がある。
 労働組合が自分たちの力で問題を解決するということが、非常に弱まってきている気がする。

いのちと健康に関わる安全対策部門が
   ドンドンとリストラされている

 労働安全衛生は、高度成長期に非常に注目された。
 災害もあった、公害もあった、企業はどうなっているのかというを批判があった。そのため企業は、労働安全衛生のために金をつぎ込んでいた面もあった。
 ところが高度成長期に対策が打たれた労働安全衛生は、今日のような状況の場合はまず第一にリストラの対象になる。
 リストラといえば首切りが注目されるが、まず企業で安全屋さんと呼ばれる人がいないようにされた。
 それまではの企業の労働安全衛生担当者(安全屋さん)が絶えず労働基準監督署にやってきて情報を得ていた。、そういう仕事をしていた人がまずリストラの対象になっていなくなった。
 安全衛生課という部署が、どんどん小さくなって何千人の会社でも1人いるか2人いるかという状況になっている。ヒトの面だけではなく、経費の面でも安全衛生が削られている。
 建設業では、経費は安くするために安全衛生の面が削られる。
 足場を作らない、安全対策をしない、などまず1番先に安全衛生の面が削られている。
 安全衛生は命・健康に直接つながって行く。
 それを放置していると最低労働条件や労働組合の組織の存亡に連なって行く。
 そのことを踏まえて、自分とみんなの命と健康を守る労働安全衛生を考えていかなければ、ケガをして仕事ができないばかりか働く場がなくなってしまうという結果になる。

80年前に決めたILO第1号条約すら批准しない日本

 日本の国や大企業は、国際労働基準すら守られない。
 80年前に出されたILOの労働時間すら批准できないでいる。
 日本の政府は、ILO第1号条約すら批准しないで、第1号条約を引用し変形労働時間を根拠にしている。
 しかし、ILO第1号条約の2(b)には「但し、本号に規定する如何なる場合においても1日8時間の制限を超ゆることを1時間より多きことを得ず。」と書かれ9時間しかだめですよとしている。さらに災害や機械などに緊急の処置を行う場合に労働時間の制限を超えても……と限定されている。
 ところが日本の変形労働時間制は、9時間と言っているが実際は10時間を超える労働させられている。
 80年前にILOが決めた労働時間どころではないのが日本の現状である。日本はILO、国際労働基準を最初から守らない、守れないようになっている。

最低限すら放置していれば もっと悪い状況に

 工場などの現場で働いている人は安全衛生ということがよくわかる。
 しかし事務職などの仕事に就いている人は安全衛生、どういうことがピンとこない。
 工場では、爆発するかもしれない、機械に巻き込まれるかもしれない、ということがあるが事務職などの仕事の場合はそういうことがすぐに起こらない。
 労働安全衛生が分からない、知らない、という間に労働条件とともにどんどんレベルが低下させられていっている状況がある。
 だから、教職員の場合は京都府人事委員会が指摘している法違反をどうするのか、だれが直すのか、と言っているだけではなく、現実に直していかなければならない。
 最低限と言っているのだから。その最低限すら放置していれば、もっとどんどん悪い方向に行く。
 労働安全衛生の悪いところは、だれが見てもを直していかなければならない、と思うはず。そこから取り組んでいく。
 普段働いているとなかなか労働安全衛生のことをじっくり考えにくい。

先生を見て育った生徒たち
   社会人になったとき先生を
   労働者のあるべき姿として見るだろうか

 教職員は、本当に長時間過密労働している。
 休憩も削って生徒と話をする、でも生徒たちはしばらくすると社会人になる。
 先生を見て育った生徒たちが、社会人になったとき先生を労働者のあるべき姿として見るだろうか。
 生徒がなりたい労働者の姿として先生を見ているかどうか。
 先生は一生懸命やっているのがわかるが……。やはり不安がある。
 生徒たちは、先生が一生懸命やってくれるのはいいが自分はそこまでやりたくはない、と思っているかもしれない。
 「先生休憩やし、その話はあとで」という方が普通の感覚かもしれない。

使命ばかりが先行している教職員の姿は

 教職員の状況は、私たち労働基準監督官と同じように使命ばかりが先行しているように思える。
 使命感ばかりが先行しやすい職種ではないかと思う。
 ものを作るといっても結果はよくわからない。
 どこかの大学に入ればその結果はわかるかもしれないが…も教育の結果は見えない。
 製造現場では、ひとつのものを作れば見える。ものの結果が見えない中で、使命感ばかり…そんな状況の中で働いている先生を見た生徒たちは将来どんな労働者になるのだろうか、と不安になる。
 
自分たちが働けないような、働いていることで健康害するような学校では、いい教育もできないし、いい生徒も育たないだろう。

  私たちも同じような状況の中で、労働行政に携わっているので話した。
                                                                              ( 完 )

いのちがけで労働者のいのちと権利を守る労働基準監督官


山城貞治(みなさんへの通信40)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その20)


労働者のいのちと権利を守る最前線から労働基準監督官
からみた学校現場  講演要旨

 ILO81号条約の労働監督の第12条では、労働監督官の権限が書かれている。立ち入り検査、調査、検査又は尋問、物品の収去。

労働基準監督官の権限
立ち入り検査、調査、検査又は尋問、物品の収去とは

 立ち入り検査は、労働基準監督が工場に行って、「今日は、これこれのことでしたんですが」と訪れる。
  「健康診断はやっている」「ちょっとその個人票を見せてください。」などと調査は尋問する。
 書類の提出、収去は、問題のある書類などを持って帰ること。
  ILO 81号条約の第13条には、強制措置をつかさどるとなっている。
 そして命令の権限があるとなっている。

 第16条では、「事業場に対しては、関係法規の実効的な適用の確保に必要である限りひんぱん且つ完全に監督を実施しなければならない。」となっている。

法規に違反するものは
 事前の警告なしにすみやかに司法上の手続き

 日本の労働基準監督官は、人数が少なく頻繁に事業場に行けない。
 第17条では、「労働基準監督官によって実施を確保されるべき法規に違反し、またはこれを順守することを怠る者は、事前の警告なしにすみやかに司法上の手続きにされる。」となっている。
 これが司法警察の役割。
 第27条では、「労働監督が実施を確保すべき仲裁裁定及び労働協約を含むものとする。」と書かれているが、外国の労働監督官は中央労委・地労委の役割をしている場合がある。
 単なる監督だけではなくて、労働者と使用者の間に立って話をつける。
 そういうことができる労働監督官の制度が外国にはある。
 以上のようにILO81号条約に基づいて日本の労働監督制度がある。

労働基準監督官は、事業場・寄宿舎その他の付属建設物に
臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、
又は使用者もしくは労働者に対して尋問を行う

 日本の労働基準法では、第11章で監督機関が書かれている。
その第101条では
「 労働基準監督官は、事業場・寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者もしくは労働者に対して尋問を行うことができる。」
などの労働基準監督官のの権限が明らかにされている。
 さらに、監督機関に対する申告ということが書かれている。
 第104条には報告等ということが書かれている。
 労働安全衛生法では第100条。

 京都府人事委員会に各学校現場が、健康診断の結果を報告していない、災害報告がされていない、ということがあるが労働基準法や労働安全衛生法では報告をしなさいということが明らかにされている。 
 定期監督、災害時監督、申告監督、災害調査、再監督、調査、許認可、司法、集団指導投入を主な仕事を労働基準監督として行っている。

連絡もなしに飛び込みで事業所を訪れるのが「定期監督」

 定期監督とは、労働基準監督署が一定の問題意識を持って「こういうところを監督しよう。」と考えて、12月から準備をし4月から監督を行う。
 こういう決められた計画的な監督を定期監督という。
 定期監督はありとあらゆる業種に行く。
 建設現場、大企業、何千人というを大きな会社、小さいところは場合によって監督署に呼ぶ。いろんな方法がある。
 京都には2,000人ぐらい働く人がいる事業所がある。
 そういうところは6人の労働基準監督官が行く場合があるが、ほとんどの場合1人の労働基準監督官が事業所を訪れる。
 連絡もなしに飛び込みで事業所を訪れる。
 そうすると守衛さんが「どなたですか」と聞く。
 「監督署です」「約束をされていますか」「約束はしていません」
そこから始まって、総務課に行ったりして、定期監督が行われる。
 京都府人事委員会のように1カ月前に府立校などに連絡するようなことはしない。
 突然行くのが定期監査
 「 今度1カ月後に行きますから書類を作りなさい。」そんなことは言わない。 だから、定期監督に行くと事業所の部屋の中は書類でごちゃごちゃになっている。
たまたま行くことが分かっていると事業所は大変きれいになっている場合がある。
 みんなは仕事をしているのにうかがピカピカ。
 ある企業では労働者から「掃除をするのが大変や~」という苦情があった。
 それほど監督は企業にとって大変なことなのだ。

「労働時間の違反があります。」「有給休暇がとれません。」に対する申告監督

 申告監督とは、
 監督署に
「労働時間の違反があります。」
「有給休暇がとれません。」
などの相談がある。電話で1月300件以上の申告がある。

 「電話ではとても話してよういられないので、労働基準監督署に来てほしい。」ということになるが、実際に労働基準監督署に来られるのは1月30件ぐらいになる。
 そこで調査に出ると、暴力団関係の人が出てくる場合がある。

119の連絡と
同時に災害の発生状況を見に行くのが労働基準監督官

 災害時、監督は、災害があったときにその災害の発生状況を見に行く。
 首が飛んでいたり、手足がとれていたり、血が流れていたりする。
 エレベーターに首がはさまれて死んでいた災害現場に行ったとき、首がエレベーターの上に乗っていたという場合もあった。
 救急車は人が死んでいる場合は、そのままにしてすぐ帰る。
 現場検証。 田舎にいくほど労働基準監督官が行くのが早い。
 119番があるとすぐ労働基準監督署に「只今は労災事故発生。」と連絡が入る。
 警察も消防署も早く労災事故のことを知らせてくれる。

 だから事故現場で死体を見る場合が多い。
 京都のような大都会になるとそういうことはない。
 災害時監督をしていると、労働基準監督官自身が死にそうになる場合もある。
 それは、高いところの労働災害を調査していると、もともと危険な場所ー手すりがない、安全装置がされていないーで、調査をする。
 そのため何度も落ちそうになったことがある。

 労働基準監督官の出す
  是正勧告書、使用停止等命令書、指導書

 以上のような監督を行った場合、是正勧告書、使用停止等命令書、指導書などを出す。
 是正勧告書は、こういう違反があるから改めなさい。 使用停止等命令書は、ILOの命令ができるということに基づいて使用を中止しなさい、作業中止しなさい、と指導をする。 そこまで行かない場合は、指導票で指導する。

 京都府人事委員会の書類を見ると、労働基準監督署と近いような書類を使っている。

「最低賃金が払えないから」などの 調査、許認可制度

 次に調査、許認可制度があります。
 大きな賃金不払いがあった場合、会社が支払われない場合に「賃金立て替え払い制度」という国の制度がある。そういうことを調査する。
 また教職員に大きな関係がある、
 宿日直、一斉休憩、解雇予告除外認定、最低賃金適用除外などの許認可がある。
 現業職の場合は、解雇予告除外認定も関係してくる。
 最低賃金適用除外などの場合は、養護学校の生徒たちが事業所に働きに行く段階で、職安を通じるけれども「最低賃金が払えないから」というお話しが出てくる。
 そういうことなどを労働基準監督署が調査・許認可する。
 集団指導は、企業や労働組合の幹部が集まっているところで労働基準法や労働安全衛生法の話をすること。
 労働基準監督官は、一般の人が知らない労働監督のいろいろなことを経験しているがそれを感じなくなってしまっている傾向がある。

人事委員会への調査・事業場調査台帳などのウソは犯罪

 学校現場の状況については、京都府人事委員会が府立学校に立ち入り調査をした結果「指摘事項」を府教委が明らかにしたものを見た。
 またそれをまとめた府高労働安全衛生対策委員会の資料も読んだ。

 36協定、休憩の問題、衛生管理者、健康診断を報告、安全衛生委員会の問題、傷病報告、ネズミ・昆虫の駆除の順番で京都府人事委員会からの違反指摘事項が多い。
 36協定がない、休憩がない、休憩の自由を利用ができない、これらのことは教育現場にあることは聞いていた。
 昼休みにも指導がある、いつ休憩かわからない、などのことは聞いていた。 そういう中で京都府人事委員会の調査、毎年の事業場調査台帳などにウソが書かれているらしいと聞いた。

信じられない見てもわかるようなウソを書くこと

 自主点検という仕事のやり方がある。
 まさに自分で点検するというやり方である。
 全部の事業場を回れないのであるところを選んで「あんたとこどんな状況か調べて出して」と点検するやり方である。
 その方法と京都府人事委員会がやっていることとほぼ変わらないと思う。
 労働基準監督が見てみれば、ウソを書いているか、ホントの事を書いているか分かる。
 京都府人事委員会がどう考えているか分からないが。普通は、ウソかホントかすぐわかる。
 京都法人委員会の事業場調査は、労働基準法に基づいて行っているのではないだろうか。
 そうなると、虚偽の報告をすると犯罪になる。
 労働基準または労働監督制度を維持するためにウソを言うとそれが罪になる。
 だからウソを書くこと自身が信じられない。
 だれが見てもわかるようなウソを書くことは信じられない。(つづく)

2011年7月13日水曜日

生徒の労災認定続出 労働基準監督官から学ぼう


山城貞治(みなさんへの通信39)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その19)

(8)公務災害を取り扱う、地方公務員災害補償基金京都府支部などの諸制度を基本的に改善させる。 と言う項目に労災補償・労災保険の事が書かれていなかった事は重大な問題であったと反省している。

公務災害と労災の範囲がおかしいと疑問を抱いて

 1997年前に、労働安全衛生政策を作成したのだが、非常勤・常勤的非常勤(いろいろな名称が次から次と作られる教育現場)で、学校事務担当者や校長・事務部長などに「非常勤の教職員の労災補償はどのようになるのか。」と聞いたところ、
「すべて公務災害補償の範囲」
と答えられ、週数時間しか来ない時間講師宛の府教委のマニュアルにも、「公務災害が適用されます。」と書いてあった。

 それでも、府高労働安全衛生委員は、自分の学校の管轄下にある労働基準監督署に行って
「週数時間しか来ていただいていない臨時教職員のために労災保険が適用なっているのではないですか。」
と聞いて見た。
 すると
「管轄下の私学などは届けと事業場として書かれていますが、府立学校はありませんね。」
と言われたので、府立学校の臨時教職員もすべて「公務災害適用」と思い込んだ弱さがあった。

「そんなことはないでしょう」「何を言っているの」

 しかし、地方公務員災害補償基金京都府支部などの適用範囲など調べるうちに週日数と一日の労働時間数によって、公務災害適用範囲にならないことが解ってきた。

 府立学校の臨時教職員は、一校にで働くより数校掛け持ちで働く場合が多い。その場合、「どうなるのか」と「基金」側に詰め寄った。
 しかし、彼らは「そんなことはないでしょう」と言い、「何を言っているの」「そんなことが多いから聞いているのではないか。」となってしまった。

授業で労災保険制度を教えると 続々と相談 労災認定

 そんなことがあり、すでに述べてきた府高委員長と労働安全衛生委員が京都労働局に行って、調べて、府・府教委とのあいだで「予想臨時労災保険料」・「年度末報告による労災保険料の増減で決算。」と言う不合理を知った。

 府高委員長と労働安全衛生委員も反省し、その改善に取り組んだが、府・府教委とのあいだで「予想臨時労災保険料」・「年度末報告による労災保険料の増減で決算。」と言うなら、労災認定請求の窓口になる労働基準監督署がそのことを知らないというのもおかしなことになる。
 でも、府高としては、府高の職場には公務災害補償・労災補償の対象となる人が居る事を視野に置かなければならないということになった。
 そのため府高委員長は特に退任後労災保険制度を学習し、労働安全衛生委員は生徒のバイト、パートの労災適用に取り組んだ。
 
ほんまや 先生の言うとうりや 労災認定された

 ある高校では、授業で労災保険制度を教え、生徒に申請の仕方、認定・不認定の問題。認定後の問題を具体的に個別に取り組んだ。
 するとコンビニ等で働いている生徒の十数人が労災を認定されるなどことがあった。

 「先生、ほんまやな。通勤災害認められたわ。」
 「交通事件保険と通勤災害補償とどちらか選べ、と言われたけど、どう違うの。」
 「衛生のため手袋はめて、と言われてはめたら、手がこんなぶつぶつ変な色になった。なんでや。
  これも労災になるの。」
 「食材を切る機械で、腕切れたけどこれも労災?」
 「バイト先のおばちゃんが、ベルトコンベアーに挟まれてレスキュー隊来て やめさせられたけど、
  これ労災になるのでは。
  でも、労災になったらやめさせられるの。」
   「ほんまや。先生の言うとうりや。労災認定された。友達にも教えるわ。」

 次から次へと相談があり、労働安全衛生委員は、その都度労災保険制度を学習したり、労働基準監督署に生徒と一緒に労災申請に行くことが増えた。
  府高委員長から、公務災害ばかりだったので、労働基準監督官に来てもらい「学習会」をしようと言うことになった。

 その時、京都のある労働基準官が講演してくれた。それを再録させていただく。

労働者のいのちと権利を守る最前線から労働基準監督官からみた学校現場 講演要旨

  労働基準監督署は、全国に345(注:当時)ある。

 京都には、上・下・南・福知山・舞鶴・丹後・園部労働基準監督署の7署がある。
 世界的には「労働基準監督」とは言ないで、「労働監督」といわれている。

人として値するを生活が保障されるようにしなければ

 労働基準は、憲法に基づいている。労働基準法第1条では、「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」となっている。
 最低基準であるとされている。
 最近の労働法制の大改悪でこのことが悪くされている。
 基本的に大事なことが労働基準法第1条には書いてある。
 過労死とか職業病が生まれるような労働ではなく、人として値するを生活が保障されるようにしなければならないと書かれている。
 労働安全とか労働安全衛生を考える場合は、どうしても職業病の問題を考えたり労働災害の問題を考える。
 しかし、その問題だけに根本的なことを目を向けているいては最低限の適用でない。

当局が認める場合は  メンツがあるから

 労働災害や公務災害を当局が認める場合は、労働安全衛生に問題があったというよりも、メンツがあるから認めないということが多い。

 しかし、そのことに目が奪われて労働安全の問題を抜きにして、労働災害や公務災害の認定を追及していると、個人の責任やメンツの問題にすり替えられてしまう。
 職業病の認定や労働災害の闘いは重要であるけれども、本来の労働安全衛生は人間らしくを働ける、そういうことだと思う。

 ところが最近は人間らしく働けるということがどんどんどんどんレベル低下させられている。
 なにが人間らしいか分からない、なんとか生きているをそういう状況に甘んじている傾向がある。
 そういう傾向にさせられている。
 その点から考えて、人間らしく生きる労働とは何かを労働安全衛生の立場から考えてみる必要があるだろうと思う。

私たち労働基準監督官は  労働警察である

 私たち労働基準監督官は、司法警察の役割がある。
 すなわち、労働警察である。
 司法警察は、消防、営林署のある人は、司法警察の役割を持っている。
 海上保安官・郵政の関係は、特殊な司法権を持っている。
 それは、一般の警察では専門性がありすぎるので難しいだろうということで出来ている制度である。
 特別司法警察にたいして、警察官は一般司法警察という言い方をしている。
 
罰則がある、というその圧力によって違反行為を防止する

 通常労働基準監督官は監督という仕事をしている。行政的監督として、ILO81号条約で決められている。
 ところがそれを守らなかったがどうなるんだ、ということがある。
 労働基準法の中ではお互いが納得さえすればいい。
 どんな悪辣な労働条件でもお互いが納得すればいい。
 そのようになっている。
 そんな労働条件でも履行しない使用者がいたとすると、労働基準法では、司法的な救済をするようになっている。
 罰則がある、というその圧力によって違反行為を防止するして、やめさせる、それが行政的監督。
 私たち労働基準監督官は、なぜこれが違反なのか、直しなさい、根本的な話を事業主に対して話をする。
 事業主から「(法違反)を直さないとどうなるか」と聞かれることもある。なかなか直してもらえないこともある。
 司法と行政的監督が、私たち労働基準監督官の仕事です。

ILOの監督官数配置すら 反している日本政府

 ILOの各条約は、日本はほとんど批准していないが、81条約(工業及び商業における労働監督に関する条約)は、批准している。

 このILO81号条約の第3条には、労働監督の制度の機能は、次のとおりとする、として、a,労働条件……b、法規を遵守する最も実効的な方法に関し……と労働監督はこういう機能をすることが労働監督である、ということを書いている。

 第10条では、労働監督官の数は……と書かれている。
 日本では、労働基準監督官の数が大変少ないということがありるが、ILOでは監督官の数は「任務の実効的な追考を確保するために充分なものでなければならず」と明確。 ( つづく )