2011年8月23日火曜日

実習船の24時間命がけの労働に 8時間勤務とは しかも 生徒も教職員のいのちを守る安全対策は


 山城貞治( みなさんへの通信 66)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その46)


(22)水産課程を置く学校では、安全衛生基準と安全衛生マニュアルをつくり十分な安全対策を講じさせる。
 その場合、航海、潜水などの安全衛生対策を強化させる。
(23)農業課程を置く学校では、特に農薬などの安全衛生対策や機械使用の安全対策を講じさせる。

  などは、1998年2月から府高本部がまず労働安全衛生パトロールをはじめた。
 府高労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」に載せられた記事の一部を紹介する。

府高本部・水産高校分会を訪れ
実習船「みずなぎ」などの労働安全衛生パトロール
 あまりにひどい長時間労働と勤務実態に疑問と不満

府高本部は、海洋高校分会を訪問し、職場の労働条件や労働安全衛生について話し合い。
 特に、実習船「みずなぎ」の稼働問題、実習中は24時間拘束なのに8時間勤務にさせられていることなど多くの問題が明らかになった。
  学職部長は、実習船「みずなき」の過酷な勤務実態、水産省の下請け業務などの問題を述べつつ

「船員の方達の声は、どれも緊急の内容を持つものばかりだった。それぞれ専門のライセンスを持った教諭と一緒に実習教育を大袈裟ではなく命がけで支えておられる。
 技術職員の位置づけで手当等にもさまざまな差別がある。地方公務員法・条例に加え船員法など複雑な適用が未整理のまま。」


と明らかにした。

 労働基準法・労働安全衛生法・船員法の多くの違反を事業者である京都府・府教委に改めさせることはもちろん、事業者である京都府・府教委に、いのちそのものに関わる労働安全衛生対策を実習船「みずなき」の教職員に講じさせるようしなければなりません。
 府高本部は、この問題をすぐ府教委に改善を申し入れた。
 ところが、2001年3月の「教職員のいのちと健康」には、次の重大な問題が明るみにした。

痛ましい事故は
府教委がどのように言おうと
   学校現場の安全対策を訴えている

 2001年2月9日午後1時45分、ハワイ・オアフ島沖で宇和島水産高校実習船「えひめ丸」が、アメリカ原子力潜水艦「グリーンビル」によって追突され沈没した事故で9名が行方不明となりました。
 この事件はマスコミによって大きく報道されましたが、京都新聞はその関連で府立海洋高校の校長に取材をしています。
 以下京都新聞の記事を転載します。

米原潜、なぜ気付かぬ
事故に衝撃府立海洋高                                                      2001年2月11日 京都新聞

  京都府内で唯一、外国での航海実習を行っている宮津市上司の府立海洋高では、潜水艦との衝突という今回の事故にショックをうけている。
 海洋高(1990年開校)は全国に47校ある水産系高校の一つ。
 航海実習は前身の府立水産高校時代の84年から始め、現在は学校が所有する実習船「みずなぎ」(185トン)を使って、毎年6月ごろに約3週間、実施している。
 学校関係者の一人は「浮上した潜水艦との衝突は一般の船では避けようがなく、不運としかいいようがない」と衝撃を隠しきれない様子。
 昨年の実習は女生徒を含む海洋生産科漁業生産コースの3年生18人がサイパン島方面を訪れ、航海技術の習得や海洋気象の観測、現地の高校生との国際交流などを行っている。
 衝突事故のあった宇和島水産高校のように、遠洋での漁業実習は実施していない。
 小林憲彦校長は「実習の内容は違うが、今回の事故は同じ航海実習を行っている学校として本当に残念。生徒の安全をさらに考えていきたい」という。
 同高では今年も6月5日から3週間、サイパン島方面での航海実習を計画している。

  新聞記事でも校長は、「生徒の安全」を言っても「教職員の安全」を言わないことが明らかだろう。
 船上では、生徒も教職員も一体。乗組員全員の安全を表明しないところに、京都府・府教委の安全性に対する「無関心」「無策」が反映している。

船員法では
労働基準法なども労働安全衛生法も適用が
明らかにされていると資料の一部を教職員に知らせる

資料  船員法  (要旨)
第一条(船員)
 この法律で船員とは、日本船舶又は日本船舶以外の命令の定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう。
第六条(労働基準法の適用)
船員労働安全衛生規則  (要旨)
第一章 総則
第一条(趣旨)
 船内作業による危害の防止及び船内衛生の保持に関し、船舶所有者のとるべき措置及びその基準並びに船員の遵守するべき事項は、他の法令に定めるもののほか、この省令の定めるところによる。
第一条の二(船長による統括管理)
 船舶所有者は、船内における安全及び衛生に関する事項に関し船長に統括管理させ、かつ、安全担当者、消火作業指揮者、衛生担当者その他の関係者の間の調整を行わせなければならない。
第二条(安全担当者の選任)
 船舶所有者は、船内においてこの省令に定める事項を行なうために、船長の意見をきいて、甲板部、機関部、無線部、事務部その他の各部について当該部の海員の中からそれぞれ安全担当者を選任しなければならない。
第五条(安全担当者の業務)
 船舶所有者は、次に掲げる事項を、安全担当者に行わせなければならない。
一 作業設備及び作業用具の点検及び整備に関すること。
二 安全装置、検知器具、消火器具、保護具その他危害防止のための設備及び用具の点検及び整備に関すること。
三 作業を行う際に危険な又は有害な状態が発生した場合又は発生するおそれのある場合の適当な応急措置又は防止措置に関すること。
四 発生した災害の原因の調査に関すること。
五 作業の安全に関する教育及び訓練に関すること。
六 安全管理に関する記録の作成及び管理に関すること。
第六条(改善意見の申出等)
 安全担当者は、船長を経由し、船舶所有者に対して、作業設備、作業方法等について安全管理に関する改善意見を申し出ることができる。この場合において、船長は、必要と認めるときは、当該改善意見に自らの意見を付すことができる。
2 船舶所有者は、前項の申出があつた場合は、その意見を尊重しなければならない。
第十一条(安全衛生に関する教育及び訓練)
 船舶所有者は、次に掲げる事項について、船員に教育を施さなければならない。
一 船内の安全及び衛生に関する基礎的事項
二 船内の危険な又は有害な作業についての作業方法
三 保護具、命綱、安全ベルト及び作業用救命衣の使用方法
四 船内の安全及び衛生に関する規定を定めた場合は、当該規定の内容
五 乗り組む船舶の設備及び作業に関する具体的事項
第十二条(船員の意見を聴くための措置)
 船舶所有者は、船内における安全及び衛生に関する事項について、船員の意見を聴くため、船内において、適当な措置を講じなければならない。
2 船舶所有者は、船内において安全又は衛生に関する委員会を設けた場合は、船長をその委員長とし、かつ、船員の選んだ委員を参加させなければならない。

大事故・大災害があると「予算がない」と言って拒否した改善要求が通るがそれは安全無視の現れ

  水産課程、農業課程での労働安全衛生は各該当高校で詳しく取り組み、要求が出された。
 しかし、京都府・府教委はいつも大事故が起きてから改善をするのが常であった。

 それでも継続的に海洋高校の場合も、工業高校の場合も、農業科の場合もすべて詳しく調べて労働安全衛生上の改善要求が出された。
 しかし、いつも予算がないと断る。だが、他校で大事故が起きると改善する傾向だけは、なぜか、「固持」し続けた。