2011年8月13日土曜日

女性教職員が教育に責任を持ち、かつ、健康を保ち、母性を保護しながら働くことができるように


山城貞治(みなさんへの通信61)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その40)


動きが速かった女性部の母性保護の取り組み

「母性保護を生後から死ぬまでの間で捉えていかなければならない。」
「更年期障害は、生理休暇を取っていたかどうかと大きく関わる。調査では、生理休暇を取れなかった女性ほど更年期障害がひどい、という結果が出ている。」
「母性保護という言い方ではなく、女性保護ではないのか。」

などの討論を経て府高女性部は、次のような要求を府教委に突きつけていく。
                   府高女性部要求書 2006年2月
京都府教育委員会
委員長 藤田 晢也 様
教育長 田原 博明 様

 女性教職員が教育に責任を持ち、かつ、健康を保ち、母性を保護しながら働くことができるように、以下の点を強く要求します。(注:以下要点を掲載。この要求は労働安全衛生政策作成時に付加されて、2006年以前からも続けられている。)

 事業者責任において、年次休暇・生理休暇をはじめとする諸権利を安心して行使できるような教職員定数にしていただきたい。 本来正規採用すべき「定数内」(臨時的任用)については、ただちに正規職員を任用していただきたい。

2.事業者責任において、各職場における教職員の健康状態・勤務状態の実態を把握すると同時に、健診結果にもとづく適切な事後措置を指導区分提出後遅くとも1ヶ月以内に講じていただきたい。 「労働軽減」などの措置区分が実行可能となるよう、講師配置などの措置を講じていただきたい。
 また健康上の理由でプールに入れない教員がいる学校に水泳指導補助教員を配置していただきたい。

3.病気休暇後に無理なく勤務に復帰できるよう、リハビリ勤務の制度を拡充していただきたい。 3ヶ月以上の病休復帰1名から軽減講師を配置するとともに、すべての職種を対象にしていただきたい。

4.介護休暇制度を拡充していただきたい。 短期間でも講師を配置していただきたい。
 どの時期からも連続して一年間とれるように期間を延長していただきたい。
 年間10日の家族看護のための特別休暇を新設していただきたい。また、管理職が介護休暇制度について熟知し、手続きが速やかに行われるよう指導していただきたい。

5.更年期障害休暇を特別休暇として制度化していただきたい。 実態に応じて、労働時間の軽減、軽減講師の配置等の措置を講じていただきたい。

6.事業者責任でメンタルヘルス対策を講じていただきたい。メ ンタルヘルスの悪化を引き起こす過重労働の解消、管理・監督者への教育、早期発見・治療や再発防止への対策など、実効あるメンタルヘルス対策を講じていただきたい。

7.事業者責任ですべての女性教職員を対象にしたX線による乳ガン検診・子宮体ガン頸ガン検診・骨粗しょう症検診を実施していただきたい。 当面、現行の共済組合の実施している「乳がん・子宮頸がん検診事業」対象の健診機関を大幅に拡大するとともに、指定の健診機関以外でも婦人科健診を受ける場合、専免を適用していただきたい。

8.すべての職種の女性教職員に対して、妊娠判明時から産休までの全期間、労働軽減のための軽減講師を配置していただきたい。 当面、時に危険な作業をともなう現業職員及び化学薬品を扱う教科の教諭及び「実習助手」に軽減講師を配置するとともに、障害児学校でのいわゆる「中抜き」をやめ、全期間軽減講師を配置していただきたい。

9.育児休業中の有給保障を国の責任で行うよう働きかけるとともに、育児時間についても、1日2時間とし、生後3年まで延長していただきたい。 同時に労働軽減措置を講じ、軽減講師を配置していただきたい。
「子育て休暇」が真に「子育て支援」になるよう、従前の授業参観特休などの権利を網羅して、内容の充実(取得日数延長・対象を高校まで引き上げ)をはかられたい。

10.臨時教職員の労働条件を改善していただきたい。 教員採用にあたって、講師経験が生かされるよう優遇措置をはかられたい。
 特休・介護休暇・介護欠勤・育児休業を臨時教職員にも適用していただきたい。
 臨時教職員の公務上・公務外を問わず、病気休暇に代替講師を配置していただきたい。
 妊娠軽減講師にも「解雇予告」を適用していただきたい。
 障害児学校に配置されている看護師にも妊娠判明時から軽減講師を配置していただきたい。
 産前休暇期間の延長、無給を有給にするなどの改善をしていただきたい。

11.「人事異動方針」の「通勤時間片道1時間半」を「往復1時間以内」に短縮していただきたい。 特に育児・介護を行う教職員については、事業主の配慮を義務づけた「育児介護休業法」第26条を遵守していただきたい。また、希望人事の実現をはかっていただきたい。

12.すべての職場(定時制・通信制はそれぞれ独自に)に、男女別休養室、男女別更衣室、洋式トイレ、教職員や児童生徒の実態に応じてエレベーターや手すりを設置していただきたい。 休養室については、クーラーを設置し、全ての職種の教職員が利用しやすい条件を整えていただきたい。
 また、すべての職場で徹底した分煙のための施設・設備を整備していただきたい。

13.セクシュアル・ハラスメントのない職場づくりは管理職の責務であるという基本に立って、管理職を指導していただきたい。 セクハラが起こった時に、生徒も含めて安心して相談できる被害者救済の立場にたった相談窓口を設置し、被害者の人権を守る立場で対応していただきたい。

養護教諭が健康で生き生きと働き続けられるため
また、様々な悩みや、健康発達上の課題を抱えて
養護教諭のところにくる子どもたちの要求に答え
その生命と健康を守り育てることができるよう
  と府高養護教員部も要求

府高養護教員部要求書も府教委に要求書を提出している。
その一部を掲載する。(注:労働安全衛生政策時から要求している。項目も多い。母性保護の項だけ掲載する)

 養護教諭が健康で生き生きと働き続けられるため、また、様々な悩みや、健康発達上の課題を抱えて養護教諭のところにくる子どもたちの要求に答え、その生命と健康を守り育てることができるよう、下記要求事項に誠意をもって応え、早急な解決がはかられるよう、強く要望します。

II.母性保護について
1. 養護教諭の妊娠にあたって、流産、早産をはじめとする妊娠・出産異常の多発の状況を改善するため、真の母性保護の観点に立ち、妊娠時の指導軽減措置(養護教諭の免許を有する人) については、妊娠初期より、生徒数、時期の制限をなくし、全ての養護教諭(複数配置校を含む)に保障されたい。
2. 病休(1カ月未満も含む)、産休、育休の代用にも備えて、有免者を常に確保されたい。
3. VDT機器の電磁波防御の設備をはじめ、母性保護の視点での施設・設備対策をはかられたい。
4. 生理休暇が気兼ねなく取得できるよう条件整備をはかられたい。
5. 更年期における体調不良に際し、更年期障害休暇の確立をはかられたい。

衛生管理者については、資格があることを理由に保健体育教師や養護教諭に任務を強要することなく、の要求の背景

多くの項目は、省略したが、府高養護教員部要求書の要求書には、
必ず
V.その他
1. 衛生管理者については、資格があることを理由に保健体育教師や養護教諭に任務を強要することなく、現場の総意とされたい。
2. 健康管理医による健康相談においては、相談場所、医師との連絡調整等の面で、児童・生徒にかかわる養護教論の日常業務に支障のないよう配慮されたい。
3. B型肝炎の抗体検査及び予防接種を、希望する全ての教職員に実施されたい。実施にあたっては行政の責任において対応し、会場校の現場、教職員に負担とならないよう改善されたい。また希望する教職員が受けやすいよう条件整備をされたい。
4. インフルエンザの予防接種を、希望するすべての教職員に予算化されたい。
5. 危機対策(感染症・地震・原発事故・その他の災害)のための費用を予算化されたい。また事故や問題が生じた場合については手厚い対策を講じられたい。
6. 養護教諭の研究の自由を保障し、研修の押しつけがないようにされたい.研修については自主・民主・公開を原則とし、研修内容の自由な批判、検討ができるようにされたい。
7. 京都教育大学をはじめ京都の各大学に、養護教諭養成課程の設置が実現するよう、各大学と話し合い、具体的に働きかけられたい。
8. 教育免許法による賃金格差や認定講習の押しつけがないようにされたい。
9. 任命主任制に反対。保健部長の民主的選出を尊重し、中間管理職的業務を指導しないようにされたい。
10. 目的も不明確なまま、統計や資料の提出を強要する保健教育行政は改められたい。
11. 高等学校設置基準第9条の養護教諭の配置を「おかなければならない」に戻すように国に働きかけるとともに、この条項を理由に未配置校を作らないようにされたい。また、分校や通信制課程にも養護教諭の配置基準を設けるように国に働きかけられたい。
が書き加えられていた。
 特に、
「1. 衛生管理者については、資格があることを理由に保健体育教師や養護教諭に任務を強要することなく、現場の総意とされたい。」
については、労働安全衛生法上は、特例として学校現場に限って養護教諭や保健体育教師が衛生管理者になることが出来るという項目があった。
 そのことは、すでに述べた「教職員の労働安全衛生入門」作成以前から養護教諭が教職員の健康診断の責任を負わされているのは、学校教育法の「養護教諭は、児童の養護をつかさどる。」とされていることへの逸脱である。 故野尻與市が労働安全衛生法成立以前の1960年代から養護教諭に「衛生管理者」などの役割を与える国の動きの無責任さと危険性を「健康教育概論」で厳しく批判しているをとを充分学習していたこと。
 養護教諭の労働の負担が非常に増えているときに、本来の労働でない責任が問われる「衛生管理者」の仕事をさせられるべきではない。
と言う考えに立っていた。

他教組からも府教委からも
「養護教諭が衛生管理者に」
という考えに養護教員部はキッパリ・スッキリ

 ところが全教の労働安全衛生法「適用」を主張する担当者や少なくない府県で教職員組合が「養護教諭が衛生管理者になろう。」という取り組みをしていた。
 府高養護教員部も京教組養護教員部もそれらに対して反対したが、
「管理職に教職員の健康を委ねるより、養護教諭がしたほうがいい。」
などの強力な意見が出されてきた。
 府立学校では、以上の事を1997年以前から承知していて保健体育教師や養護教諭を衛生管理者にすることは、おかしい、と反対していた。
 府教委は、府人事委員会の指導もあり、事務部長に衛生管理者の資格を取らせるようにしていた。しかし、衛生管理者の資格は国家試験。事務部長は、しばしば試験に不合格になりあきらめたいという声も出ていた。
 そのため養護教諭に衛生管理者を、という意見は府教委からも出されていた。
 全教と府教委からの「養護教諭が衛生管理者」という考えの「板挟み」状況に京教組・府高養護教員部が置かれることになった。
 そこで、全教職員に養護教員部としての考えを知らそうと言うことになった。