2011年8月7日日曜日

えっ X線室がなぜ府立高校に 無資格で教師が操作できるなんて 府人事委員会から話し合いたいとの申し入れ


山城貞治(みなさんへの通信57)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その37)


こわいのは「不可知論」とあきらめと無知である
   との細川汀先生の指摘を受けて

  細川汀先生の

「わが国では依然として労働災害、職業病、産業公害、過労死(自殺)が多発している。これらの一つ一つの実態と原因・責任を現場で調査すれば必ずそれをなくする方策が見つかるはずである。こわいのは「不可知論」とあきらめと無知である。現場で調査することさえ困難で、この壁を打ち破るためにも労働者の協力が必要だった。」

という指摘は、府高労働安全衛生委員の胸に刻み込まれていた。
  JOC(ジェー・シー・オー)の「臨界事故」についてもその深刻な状況が理解されはじめた。

府立学校にX線装置が多くあった 
 
ところが、その年の1999年府立学校G高校のX線室の防御対策の不備とX線装置の取り扱いについて、府人事委員会が労働安全衛生法上から改善を指摘している事が判明した。。
 私たちはびっくりしてG高校の様子を調べようとしたが、すべて門前払いであり、スパーエリート高校をつくるとして府高組合員は全員異動させられていて様子を把握することも出来なかった。
  単なる改善指摘でいいのか、もっとキチンと指摘すべきではないか、と府人事委員会に申し入れたが、X装置はX線は微量なもので、これ以上指摘できない。
 空港の荷物検査のX線装置と同じでX線を照射は微量なものだから資格も不必要との返事であった。
 しかし、府立学校でのX線装置の取り扱いや防御対策の不備を指摘しているのだから、危険性があるはずだ、と府人事委員会とのやりとりがあった。
 さらによく調べて見ると少なくない府立学校理科教室などにX線装置があり、放置されていること。理科の教師でもそのようなものがある事すら知らなかったこと。古くなったので廃棄処分をしようにもその処理費用がないため学校で困っている事などが判明した。

岩手県の県立高校のX線被ばく事故から
  府教委に申し入れたが

 府人事委員会は、それ以上の対応が出来ない、としていたX線装置問題は、20001年に岩手県の県立高校でX線被ばく事故が起きた。
 以下その時の新聞記事の一部を紹介する。

<被ばく>指にX線 生徒重傷 岩手の県立高校で実験中に 2002年4月18 日
 岩手県北上市の県立K高校で、昨年11月、物理の授業中に担当の男性教諭が3年生の生徒計26人の指にX線を照射し、うち男子生徒1人の指3本が「急性放射線皮膚炎」にかかり、約1カ月のけがを負っていたことが、18日分かった。ほかの25人に異常はなかった。
 同校によると、昨年11月29日、「物理2」の授業で、封筒に入った硬貨をX線で透視する実験を行った。これで実験を終えるはずだったが、教諭の判断で希望する生徒の指にX線を数秒間照射し、骨格を見た。その際、教諭が映像モニターを調整したため、男子生徒だけ普通より長い約30秒間、X線を受けた。男子生徒は12月18日になって、指3本が黒ずんではれたと訴え、盛岡市の岩手医大で診察を受けた。

 府高労働安全衛生対策委員会では、微量であるとか、云々する前にX線装置が何のために府立学校におかれているのか、またその取り扱いや安全教育や安全対策が行われていないことを府教委に申し入れたが、府教委から明確な回答はなく課題を残したままになっている。
 理科教師の中では、撤去や改善などを要求し一定の対策がとられたが、この問題はひとつの学校だけで解決できないことは明らかであった。

府人事委員会から
 労働基準法・労働安全衛生法・船員法
       のことで話し合いたいと申し入れ

 このX線装置だけではなく、府高労働安全衛生対策委員会が出来て、さかんに府人事委員会への問い合わせが管理職から集中している事もあり、京都府人事委員会の要請があり、1999年10月府高本部・府高労働安全衛生対策委員会と京都府人事委員会との話し合いが行われた。
 以下、当時の記録の一部を再掲載する。

教師の時間外の労働時間などは
把握しにくい状況にあると府人事委委員会

1,労働時間、休憩・休息問題

 今春の労働基準法「改正」にともなう条例・規則改正で、休憩時間の分割付与を「許可制」から「届け出制」にしても良いことになったが、条例では、「いっせい付与」の原則を明記した。分割する場合も休憩時間の「自由利用」が前提となる。
 全国では、「届け出制」すら課していないところがある。労使の自主的協議に任せず行政が関与すべきだと内部で相当な論議をした。
 授業などの関係もあるが、学校現場を意識して規則制定した。常にチエックを心がけている。
 個別の問題も聞く。
 府立学校の教職員、特に教師の時間外の労働時間、週休二日制のまとめ取りなどは把握しにくい状況にある。
 実態把握にむけて府教委関係の調査事項については一番時間を割いてやっている。
 回復措置、教員の時間外労働、法的整備、土日の特勤の問題がある。
 回復措置問題で、現場の方が相談にこられたケースもあるが、部活の勤務上の位置づけについては、どういう点に問題があり、改善して行くのか……。

労働基準監督機関としての
第三者機関の立場から「事業場調査」をすすめている

2,立入調査としての「事業場調査」について
 人事委員会としては、交渉などで局長が回答している立場から、府立学校の勤務実態の把握を問題意識を持って行ってきた。
 労働基準監督機関としての第三者機関の立場から「事業場調査」をすすめているが、200ぐらいの事業場をすべて廻るわけにいかない。
 そのため毎年20の事業場から、実情調査を行っている。
 従来の立入調査の「書面調査」の様式は、今年度までとし、来年度は、様式を改める予定。
 「臨検」の仕組みについても考えて行きたい。
 「事業場調査」に分会が立ち会うことや労働組合の意見も聞けという要望があるが、この調査は、「事業者・使用者」に対して行うものと認識している。
 従来「事業場調査」の結果は、教職員課がある府教委管理部に知らせていたが、今年度から保健体育課のある府教委指導部にも知らせるようにしている。

書面を見てもウソが分かるのに なぜ放置するのか

  これらに対して、府高からは、

 府立学校への「事業場調査」や府立学校が毎年出す京都府人事委員会への「年次報告」には、書面を見ても明らかに同一府立校間で差異があることが分かり、「ウソ」の報告は分かるはずではないか。
 単に書面を受け取るだけでは、労働基準監督したことにはならない。
 各府立校は、京都府人事委員会の労働基準法・労働安全衛生法・船員法(注:水産科などで船舶を所有・使用しているため)の法違反がないかどうかの労働基準監督権行使を軽んじている傾向がある。
 またそれを許す結果になっているのではないか。
 「事業場調査」が行われた府立学校が二巡目でも同じ「指導・指摘」が行われている。
 これでは、自己満足的な調査でしか過ぎず、「指導・指摘」が改善されることになっていない。
 この際「改善命令」を出して指導するぐらいのことをやってもいいのではないか。
 他府県の人事委員会では、「予算措置を含めた改善指導」まで出しているではないか。

人事委員会は 積極的に「事業場調査」を公開すべき

 府教委や府立学校の管理職は、「指導・指摘」が労働基準法・労働安全衛生法・船員法の「法違反」であるということが分かっていない。
 現に、「事業場調査」の「指導・指摘」を各学校の管理職は、すべての教職員に知らせていないし、たとえ知らせても都合の悪いところは省略した一部分を「紹介」するだけだ。
 京都府人事委員会は、積極的に「事業場調査」を公開すべきだ。
 そういうことをしないから、教職員の中に自分たちの労働条件が正確に京都府人事委員会に報告されているかどうかの危惧が生まれているのだ。
「事業場調査」すら隠す傾向が、府教委や府立学校の管理職にはある。
などの点を京都府人事委員会に述べた。

情報公開の対象になるもの 
  府教委や管理職は「指摘事項」を教職員に知らすもの

 これに対して京都府人事委員会担当者としては、「事業場調査の指摘事項」などは京都府人事委員会の文章を読めば「法違反である」のは分かるはず。
 「指摘事項」は、情報公開の対象になるもので、手続きをすれば「指摘事項」はだれでも入手できる性質のものであるが、そんな手続きをしなくても府教委や管理職は「指摘事項」を教職員に知らすものだろう。
 「指摘」だけでなく「予算措置」を含めた「改善命令」を出せという要望は、要望として受け止める。
 事業場調査の「指導・指摘事項」は、1997(平成9)年度の調査の途中から「学校レベルで対応できるもの」と「府教委が全体として解決すべきもの」とに整理するなどしている。
 近畿各県の人事委員会の中でも学校に対する調査は比較すれば劣っていないし、京都は一番きめ細かいと思う等を述べました。

1970年代に府人事委員会は
府教委が安全衛生委員会を設置していないことを
   「指摘・指導」してきているが

 これに対して府高は、以下の意見を述べた。
 労働安全衛生体制の問題は、最近になって問題になったのではなく、1970年代に労働安全衛生法が成立して以降、京都府人事委員会が「立入調査」などで府教委が安全衛生委員会を設置していないことを「指摘・指導」してきた経過と事実を踏まえる必要があること。
 府教委との労働安全衛生問題の協議は2年の経過があるけれどたった3回の協議でしかなく、京都府人事委員会の言う「府教委と話している」ということにはとうてい当てはまらない。

最低条件をクリアーすればいいということは
   府人事委員会としても言えないはず

 府教委は、京都府人事委員会が「衛生委員会設置を言っているので……」ということを理由にしているが、労働安全衛生法・労働基準法の精神から言っても最低条件だけをクリアーしたらいい、ということにはならないだろう。
 またそのような最低条件をクリアーすればいいということは、労働基準監督の立場にある京都府人事委員会としても言えないはずだ。
 問題は、府教委が衛生委員会設置で事足りると言う姿勢に終始していること。
 肝心の教職員の労働安全衛生をすすめないことにある。
 衛生委員会などは、あくまでもひとつの手段でしかすぎないはずだ。
 学校単位の衛生委員会問題についても、先ほどの「事業場調査」に見られるように教職員に知らせるべきものすら知らせない、労働組合の要求を聞かない、分会や組合員を排除するという前近代的な学校運営がされているところに問題がある。
 労働組合の意見も取り入れて教職員の労働安全衛生を協議するというより労働組合の存在を否定する管理職が多すぎる。
 だから学校で、ということには問題が多い。
 労働安全衛生体制は責任体制の明確化が一番の基本である。
 事業者である京都府や府教委の責任が明らかにされないことが問題。

府教委は すべての責任を校長としているが

 府教委は、事業者は校長ということで自らの責任を校長だけにしようとしている。
 学校長が、教職員のいのちと健康のすべての責任をとれるのか。
 府教委は、学校現場のことまで「めんどう見切れない」かのような姿勢であるから労働安全衛生協議がまとまらない。
 その一方で、3月末まで衛生管理者が置かれていなかった府立校で、4月になったとたん衛生管理者が置かれていると届けられる現実がある。
 事務部長の気持ちひとつで、衛生管理者として届けるか、届けないかが判断されているのが現実。
 しかも、衛生管理者をおいているという届けを京都府人事委員会に出したことすら教職員に知らせていない。
 ある学校では、

「衛生管理者として、教職員に職務命令を出すから、衛生委員になれ」

と衛生管理者が教職員の上に立ち労働安全衛生を職務命令で自分の都合のよいようにすすめようとする動きがある。
 衛生管理者の資格を取っても、その責任を果たすことすら分かっていない管理職がある。
 労働安全衛生をめぐって話し合いや協議をすることは、府教委に幾度となく言っているが応じていないのが府教委である。
 私たちは、労働安全衛生協議で一致できる点からすすめようと主張している。

衛生委員会を設置さえすれば
労働安全衛生問題はこれでいいととはならない
と府人事委員会は明言

 これに対して京都府人事委員会担当者は、衛生委員会を設置さえすれば、労働安全衛生問題はこれでいいということにはならない。
 衛生管理者の選任については、選任報告が出されたことに対しては、指導することはしていない。
 学校ごとにばらつきがあり、衛生管理者の資格を持っていても業務でないということで、選任届をしていない人もいることも承知している。府教委全体でも、整理されていないことは承知している。と述べました。

労働基準監督機関の区別をきちんとし 役割を果たすべき
 
 これに対して府高としては、京都府人事委員会の労働基準監督と労働基準監督機関の区別をきちんとし、府教委などに指導してもらいたい。
 T養護学校の給食調理員さんの職業病で研究・検討もしてきた。労働基準監督官が丹波養護学校の給食調理現場に立入調査をして「改善指導」が出されたのに、府教委は調理人さんがかえって手間のかかるような「改善?」がなされている等と述べた。
 京都府人事委員会は、労働基準監督の区分の問題は承知している。
 T養護学校の問題は京都府人事委員会として状況を理解しそれなりの対応をした。労働基準監督官の改善指導なども知っていると述べました。

定期健康診断が不定期健康診断になっている

4、教職員の健康診断について

 話し合いの終わりに府高から、府教委や管理職は定期健康診断が適正に行われていると京都府人事委員会に報告しているが、本年1月に府教委の実施する定期健康診断で医療ミスがあった。
 これは、適正な定期健康診断が行われているということになるのか、という問題を提起した。
 これに対して、京都府人事委員会担当者は、定期健康診断の医療ミスについては、知らなかった、と答えた。
 府高は、適切な定期健康診断が行われていないことを放置しているのは問題。

 府教委は、学校保健法に基づいて教職員の定期健康診断を実施していると言い、京都府人事委員会には労働安全衛生法に基づく定期健康診断の実施を報告している。
 それぞれ法の目的や健康診断の目的が違うのだからそのことをきちんと理解をしなければならないのに、それが出来ていない。
 しかも定期健康診断が定期になっていない。
 府教委は、「都合により」というだけで毎年、定期に健康診断が行われていない。
 労働安全衛生法上の医師による健康診断、健康診断後の事後措置、特殊健康診断である頸肩腕障害・腰痛健康診断の実効のある事後措置など、教職員には法に基づく健康診断が「常識的」に行われていない。など具体的事実をあげて述べました。

教職員の健康診断は
知事部局の健康診断と比べても問題があると府人事委員会

 これに対して京都府人事委員会担当者からは、学校保健法による教職員の健康診断は、(医師の件、事後措置の件、産業医の件など)知事部局の健康診断と比べても問題がある。
労働安全衛生法上の関係は府教委にも話をしている、との話があった。

  府人事委員会の話は事実の部分と「隠している」ことが、その後、さらに明らかになる。
 それは、府人事委員会が府人事委員会の労働基準法・労働安全衛生法・船員法の労働基準監督機関としての対応などの文章は、情報公開の対象になるもので、手続きをすればはだれでも入手できる性質のものである事を府高本部・府高労働安全衛生対策委員会が知ったからである。