2011年8月20日土曜日

全日本教職員組合(全教)書記長へ 「給特法」に関する当局のねじ曲げを認めてしまうと、たたかいの方向が歪み 教職員のいのちと健康を守ることはますます困難になる、と元府高委員長


 山城貞治(みなさんへの通信65)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その45)

長時間過密労働を強いられている教員の
   「給特法」を打ち破ってこそ
 いのちと健康が守れると満身の提言


  労働基準法を守らない政府に対して、その矛盾を告発し、教職員の労働実態を解明する取り組み。また、全国の教職員は、一方では、裁判を通じて超過勤務の実態を告発し、最高裁を含む各級裁判で勝利した。そして、「給特法」(国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)がつくられた歴史的経過を踏まえないと、再び長時間勤務が「容認されると」と本年、以下の全日本教職員組合(全教)書記長談話に対して元府高委員長は、提言をした。

京都市教職員組合の組合員超勤訴訟
    に対して全教書記長談話は


 全日本教職員組合(全教)書記長談話は以下のとおりである。

2011年7 月12 日「教職員の長時間過密労働の是正に背を向ける最高裁判決に断固抗議する」(談話)全日本教職員組合(全教)書記長

 最高裁判所第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は、本日、京都市教職員組合の組合員9 名が2004 年に京都市を相手取り、提訴していた超勤訴訟に対して、まったく不当な判決をおこないました。全国の教職員が切実に求めてきた、長時間過密労働の是正に背を向け、学校現場の実態を無視した今回の判決に断固抗議します。また、7 年半もの間、裁判闘争を支えてきた原告団および京都教職員組合をはじめ支援にあたった全国の教職員組合の仲間のみなさんに心から感謝とお礼を申し上げます。この裁判は、教職員の過重な超過勤務の是正を求めていたものです。2009 年10 月1 日には、大阪高等裁判所が、すでに京都地方裁判所判決において勝利した原告1 名に加え、さらに2 名の原告に対して、55 万円の慰謝料を支払うことを命じる判決を言い渡していました。大阪高裁判決が、「(管理職は)時間外勤務の時間からすると、配慮を欠くと評価せざるを得ないような常態化した時間外勤務が存在したことは推認でき」たこと、また「(管理職は)時間外勤務が極めて長時間に及んでいたことを認識、予見できたことが窺われるが、それに対して、改善等の措置を特に講じていない点において、適切さを欠いた」ことを断罪し、管理職の安全配慮義務違反を明確にした点は全国の教職員を大きく励ますものでした。しかし、本日の最高裁判決は、教職員の長時間過密労働の是正に向けた到達点とすすみはじめた全国のとりくみにまったく逆行するものです。それは、教職員の長時間過密労働について、「勤務校の各校長が被上告人らに対して明示的に時間外勤務を命じていないことは明らかであるし、また、黙示的に時間外勤務を命じたと認めることもできず、他にこれを認めるに足りる事情もうかがわれない」とし、教職員の時間外勤務の実態に目を向けようともしない判断に終始していることです。
 「命じていない」かぎり時間外勤務は存在しないという給特法の建前を理由に、教職員の無定量の長時間過密労働を容認する立場は、増え続ける病気休職者に見られるような教職員の実態からも認められないものです。
 同時に、給特法をめぐって繰り返される司法の判断が、給特法そのものの限界と問題点を露呈しているといわざるを得ません。
 第二に、管理職の安全配慮義務違反についても、「強度のストレスによる精神的苦痛を被ったことが推認されるというけれども、本件期間中又はその後において、外部から認識し得る具体的な健康被害又はその兆候が被上告人らに生じていたとの事実は認定されておらず、記録上もうかがうことができない」ことを理由に、否定しました。これは、教職員が長時間過密労働で斃(たお)れない限り、管理職の安全配慮義務が問われないというべき暴論であり、絶対に容認できるものではありません。裁判闘争をすすめることをとおして、全国の教育委員会と学校職場で教職員の長時間過密労働問題が正面から問題にされ、勤務時間管理をはじめ、労働安全衛生のとりくみが大きくすすんできたことは、私たちの確信にすべき到達点です。しかし、不当判決は、あらためて今日の学校現場の実態にそぐわなくなっている給特法の問題を提起しています。全教は、今後とも、子どもたちのすこやかな成長と豊かな教育の実現をめざして、教職員の長時間勤務の解消とともに、教育条件の改善と給特法改正にむけた運動を強化する決意を表明するものです。         以上

踏まえられているか 各県教組と各教育委員会との教職員の無定量な超過勤務をなくすための協定
                                     

これに対して元府高委員長は、次のように全日本教職員組合(全教)書記長に意見を述べ、提言をしている。

 ご苦労さまです。先日の、京都市教組の超勤訴訟での最高裁の不当判決に対するあなたの談話をインターネットで見させてもらいました。全教のご支援に心から感謝を申しあげます。

 ただ、談話の中で少し気にかかるところがありました。退職してから8年が経ち、ぼけも進んでいますので的外れかもしれませんが、参考にしていただければ幸いです。

 私が引っかかった談話の部分 
「『命じていない限り』時間外勤務は存在しないという給特法の建前を理由に、教職員の無定量の長時間過密労働を容認する立場は」

という箇所です。
「その理由」
1.給特法制定まで  ( 略:すでに記載 )
2.「給特法」の制定  ( 略:すでに記載 )
3.私が言いたいこと 以上、簡単に私なりの経過を述べました。


  私が一番言いたかったのは、給特法の持つ矛盾はありながらも、たたかいによって政府(文部省)や各県当局との間で、協定を結ぶことによって無定量の超過勤務、言い換えれば、「限定4項目以外は超過勤務を命じることができない」とさせたことを踏まえておられるのかどうかということです。(注:すでに掲載した、「給特法」の実施に当たって、各県教組と各教育委員会とかわした協定では、教職員の無定量な超過勤務をなくすため、限定4項目「県によっては5項目」の協定を結ぶなどの歯止めをかけた。)
 政府や当局は、教職員が超過勤務をしなくても良いように、定数増などのそのための手立てを義務付けられていたのです。
 ところが、政府や当局は、これをごまかすために、たえず、4%(注:この4%には根拠はない。ましてや時間外労働の平均値でもない。)を支払っているから、クラブ指導などの「自主的な指導」はこれに含まれているなどの詭弁を弄しています。
 しかし、こんなごまかしは許されません。

  給特法の原則は 
教職員には限定4項目以外の超過勤務は
  させることができない


 給特法の原則は「教職員には、限定4項目以外の超過勤務はさせることができない」ということです。
 それなのに、現実は当局が何の手立てもしないから、子どもの発達を保障する立場からやむをえない超過勤務が発生しています。
 これこそが、給特法やそれに関する協定違反であり、労働基準法・労働安全衛生法に違反しているのです。
  それを「命じていない限り、……」と、「給特法」に関する当局のねじ曲げを認めてしまうと(:「命じていない」かぎり時間外勤務は存在しないという給特法の建前を理由の部分)、たたかいの方向が歪むのではないでしょうか?

 実は今度の裁判でも、私は弁護団の追及がこの点では弱かったのではと、思っています。
 「給特法」のたたかいの原点にもどって追及することができていなかったと思っています。
  えらそうなことを書いてしまいましたが。

 すでに結ばれてきた限定4項目以外の超過勤務はさせることができないという協定を破っていることへの闘いや政府、行政、教育委員会の言い分を「鵜呑み」にする傾向を打ち破らない限り、決意をしてもそれは気持ちだけになってしまう。
 元府高委員長は、幾多の過労死、労災、公務災害、国家公務員災害補償の認定に心底から取り組んできたことから、非常に「配慮に配慮を重ねた」全教書記長への提言として書いている。
 
 
この真意は伝わっているのだろうか。

 最高裁判決を乗り越える方途はある、と示唆した提言なのだが。