2011年8月9日火曜日

立ちっぱなしの教師の労働 妊娠した先生は休めない


山城貞治(みなさんへの通信58)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その38)


ホルモアルデヒドの除去問題など
数え切れない有害なものが存在する学校

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の
(12)学校における有害性のあるものや物理的性質(引火性、爆発性、揮発性など)、発ガン性(変異原性)、アレルギー、遺伝性毒性などの予防策(設備、装置、予防具など)と緊急対策を行わせる。有害物の基準は、日本産業衛生学会の許容濃度基準を尊重すること。
については、調査すればするほどあまりにも多くの問題があり、府立学校ではの課題はまだまだ不充分なものとなっている。
 ホルモアルデヒドの除去、アレルギー源の除去、生徒のトイレ掃除などを含めた薬物の問題、農業科、工業科などなどの有害物質問題やその保管。
 数え切れない問題がありながら少しずつ取り組まれたが、くり返すがこれらのほとんどすべては京都府・府教委がなしたことで、学校の責が問われることはなかったが、問題が起きるとすべて学校、学校長、関係教師の責任にされることがあまりにも多すぎた。

問題が生じれば府教委が責任をとらず
 学校・学校長・担任教師に責任をとらせる体質

 例えば、実験用の薬品庫があまりにも貧弱で厳重管理が出来ないため改善を要求していた。
せめて南京錠は改善して欲しい、と言う要求があったが、府教委は改善しなかった。
 ところが他府県で、学校の薬品庫から劇物が盗まれたと報道されたとたん府教委が府立学校を調査し、「南京錠だけで薬品を管理していた。」と教師の責任を問うなどの問題があり、その教師は異動させられたという問題があった。
 現場の安全上の問題には優先的に対応するという姿勢が府教委にはまったく見られなかったため多くの問題と多くの行動が必要であった。
 (12)の課題は、なかなか改善されなかったし、その前提には学習が必要とされた。

次の項目の取り組みを掲載したい。
  (14)人権無視の生理休暇届を改め、女性教職員が自由に生理休暇が取れるようにさせる。
 また生理休暇の必要性と女性教職員の健康との関係を明らかにし、生理休暇制度の充実を図らせる。
(15)妊娠した教職員には、妊娠が判明したときから代替え教職員を配置させる。
 また、管理職は、妊娠した教職員が安心して労働できる条件をつくるとともに生徒への協力・理解を率先して求めるようにする。
 妊娠障害、流産、死産が特に多い学校を公表させ、その原因と対策、今後の方向を明らかにさせる。


妊娠中の女子職員の業務軽減は 本当に軽減なの

(14)、(15)について変わった形で労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」に投稿があった。

:おたずねしますが、この学校には職員の「休養室」はあるのですか?
:ええ、形としては「ある」ことになっているようです。でも私も見たことはありません。
:どういうことですか?
:なにやらどっかにあるようなことを聞いています。ですが、そんなものでは使えないので実際には「無い」と思って下さい。
:わかりました。でも何か変な話ですね!
:その通りです。この問題は毎年の要求交渉でも分会から提起しています。昨年は管理職も「セコムが入るので、宿直の廃止に伴って宿直室が空くのでその辺が使えないかは検討してみる価値がある」と言っていたんです。ですが今は他の目的に使われています。
:それじゃやはり根本的に確保してもらわないといけないですね。
:その通りだと思います。
:それから、話は変わりますが、「服務規程」が変わったと聞いたのですが本当ですか?
:ええ、その通りです。一部がこの4月1日から変わりました。うちの管理職はまだ何も言っていませんが・・・
:かくすことでも無いでしょうに!
:うん・・・・・
:ところで、どこが変わったのですか?
:えーと、複写したものがあります。どうぞ!ようするに母性保護規定のところです。
:具体的には?
:例えば、妊娠中の女子職員の業務軽減などです。勤務時間中に専免扱いで休息がとれるようになりました。
:なるほど!それは良いことですね!
:良いことだとは思います。要求運動の一定の成果でもあります。ですがどうも手放しでは喜べないようです。
:どういうことですか?
:実際に女性の方に聞いてみたら、次のような返事というか、とまどいが返ってきました。
①「持ち時間等」の軽減が無い中で、いつそのような休息時間がとれるのだろう?
②ほとんどの職場に男女別の休養室がない中、どこで休息すればよいのだろう?
 ということです。
:なるほど言われる通りですね!これでは本当の業務軽減とは言えない!
:そうなんです。私もこれを聞いて全くその通りだと思いました。ようするに包括的な母性保護の観点が抜けて、「安上がり」に改良だけをしようとするようなものです。
:使えない制度を作っておきながら、「府としては十分な施策を講じて……」などと言われるのはいやですね。使えるものにして行く取り組みが大切ですね。
:その通りです。「使いたいのに使えない、形だけはある」というのが一番危険です。何か事故でもあったときに、使用者は責任逃れできますし、結局労働者の自己責任にされてしまうことにもなります。
:それはひどい話ですね。でもそうすると前の話にもどりますが、うちの休養室の問題も同じような話ですね!
:その通りです。今、京都府人事委員会立入調査について分会で質問し、管理職に回答を求めています。この学校が、どのような回答をしているのかも調べています。でも、いまだに回答すらないんです。使えない「休養室」を「休養室がある」と報告しているとしたら問題です。
:そうですね!まずはこれを見て下さい。

              1  2  3  4  5  6
 月曜日   通        ○     ○     ○
火曜日 通    ○   ○  ○             ○
水曜日   通       ○    ○      △           職員会議
木曜日  ○     ○    ○                   部会
金曜日 通  教科 ○      ○            ○      (注:教科は教科議のこと)
土曜日 ○            ○      通  ※    ※

:週の時間割ですね。ところで、「通」というのは何ですか?それから△の意味も教えて下さい。
:ええ、「通」というのは妊婦の通勤緩和です。通勤に1時間以上かかりますし、座れないことが多いんです。それで、少しでもしんどさが緩和されればと思って利用しています。それから△は土曜日の回復措置で入る授業です。
:なるほど。先生は持ち時間が17時間なのに△が入るので18時間授業をすることになるのですね。
:そうです。回復措置のおかげで窮屈になっています。18時間持ってHRもあればもっと窮屈です。
:しかしこうして見ると本当に、自由に休息がとれるという感じではありませんね!
:そうですね、毎日空き時間は1時間から2時間です。授業の準備が精一杯で、とても授業の課題を点検整理する暇がありません。自転車操業のような毎日です。
 こういうのもあります。これはある火曜日の行動記録です。

6:30 起床 7:40出勤  8:55到着 9:40 2限授業開始 12:30 4限授業終了
 13:25 生徒清掃時間指導  14:40 6限授業開始 15:30 6限授業終了
 15:40生徒指導会議  16:50 退出  18:00 保育園到着  19:00 帰宅

:うーん。空き時間を探すと。2限開始前、清掃前の昼休み、それと清掃から6限開始までの時間だけですね。
:見かけ上はそうですが、2限開始前はその日の午前中3連続授業の準備をしています。
:それはそうですね。でも1時間で3連続授業の準備をしなくてはいけない。:また、生徒部という関係で、昼休みは生徒に応対しながらの昼食です。
:そんなに生徒がたくさん来るのですか?
:クラブ活動の延長願い、紛失物のこと、自転車登録のことなどなど。
:なるほど。
:それと6限開始前も当然授業の準備は必要です。ですから、まともにゆっくりはできていません。
 この日はこれでも通勤緩和を30分しか取っていませんし、とりあえず昼食も昼休みに食べられました。ひどいときには昼食の暇がなくて、4限や5限の空き時間に摂るしかない日もあります。
:ますます、空き時間が無くなりますね。
:そうです。ですから、あのときに、「持ち時間軽減の無い中で、いつ休息を取れるのだろう?」と思ったのです。
:しかしそれにしても過酷な労働条件ですね。それで最近体調はいかがですか?
:お陰様で、いろいろお気遣い頂いています。でもさすがに、休息どころか一服する暇がないので、腰痛で困っています。特に通勤のしんどさと、連続した立ち仕事がつらいです。
:ひどいのですか?
:ええ今回は少し……。先日も、脚に痛みがきて、階段昇降に不都合をきたすようになり、我慢できずに通院しました。その日は学校も休ませてもらいました。
:それはそれは。
:担当の医師は、「とにかく空いている時間は「横」になること。休養室での安静が肝要」とのことでした。しかし、「休養室が無いし、その時間も取れない」と反論する私に、その医師も困惑した表情をしていました。
:担当の医師も、まさか職場に休養室が無いなんていうことはありえないという認識なのでしょうね!
:ええ、そんな感じでした。その病院は労災などでの理学療法もやっているところなのですが、そのような顔をされたのは余程常識外だったからでしょう。
 最後には「保健室でもいいですから・・・」とまで言われてしまいました。
:うーん……。
:せめて毎日の授業が2時間程度で、男女別で横臥できる休養室があればいいなあ。とつくづく思います。
:本当ですね。
:ええ。ただし今回の措置がまったくダメだと言っているのではありません。運動の成果という点もあります。ただ、これで終わりにせずに、ひとつの到達点として、真の業務軽減となるような、持ち時間減や休養室整備などのレベルにまで労働運動としての要求活動を高めて欲しいです。