次の文章は、1999年2月1日 に医科大学の労働安全衛生研究者が、チューリッヒ工科大学留学したときに「教職員のための いのちと健康と労働」紙に掲載された文章である。「安心する空間」と通じるものがあると思われる。
19人のクラスで
考えさせるゆとりの授業
チューリッヒ州主催の外国人女性のための教養講座「フラウ・イン・チューリッヒ」では、これまでに、スイスの環境問題や教育システムについて、日本語でわかりやすく教えてもらいました。
ほんの一部ですがご紹介し、話題提供といたします。
<公立小学校の見学>学校名;Letten小学校(チューリッヒ駅からバスで約15分)学年;3年生 部屋;1階の19号室見学者;日本人女性4名
1999年1月15日、「フラウ・イン・チューリッヒ」の特別プログラムとして、公立小学校を見学する機会を得ました。以下、見たまま、感じたままを書き連ねてみます。
校門もない学校で握手
まず、訪問した学校には、「○○小学校」という表示もなければ、重々しい鉄扉の校門もありませんでした。
1m足らずの石壁と、同じ高さの小さい扉で、かろうじて校内外の区別ができる感じでした。
教室の入り口では、クラスの児童が、次々に「Guten Morgen!(おはようございます)」と言いながら握手をして私たちを出迎えてくれました。
私たちがゲストだからという訳ではなさそうで、児童達は教師とも握手をし、教師は握手しながら一人一人に声をかけていました。
ヨーロッパでは、握手をして挨拶するのはごく一般的なことですが、担任とも毎日こうして握手をするのだなあと、妙なところで感心してしまいました。
コの字型
にならべられた椅子と
机が20組の教室
机は、コの字型に並べられており、教室内には、いたるところに、児童が作成した作品や各種行事の写真などが飾られてありました。
教室の一番後ろに(一番前ではなく)教員用の机と椅子が置いてあり、特に椅子は、バックレストの大きい、いい椅子が使われていました。
私たちが見学した日は、たまたま教育実習生の実習日だったので、実習生の授業風景を見学する事になりました。
19人のクラスが
2グループに分かれて学習
一クラスの児童は19人。
特に、国語や算数といった「教えるのに手がかかる」授業は、2グループに分けて授業を行うとのことで、この日私たちが見学したグループは9人。
1時間目は国語(ドイツ語)、2時間目は算数でした。
1グループが国語と算数を学んでいる間、もう1つのグループは別の授業を受け、3時間目と4時間目は、グループを入れ替えて、1,2時間目と同じ内容の授業が行われます。
45分授業で、休憩は10分、2時限目と3時限目の間だけ15分休憩。
昼休みは1時間50分あり、児童は自宅に帰って昼食をとり、再び登校します。
給食はありません(すべての公立学校で)。
自分で考えさせ
答えを引き出す授業
1時間目の国語では、3枚の動物の絵カード(牛、馬、雄鶏)とそれに対応する色々な国の言葉(ドイツ語以外に、英語、フランス語、イタリア語、アラビア語、ロシア語、日本語などなど)が書かれたカードを床に並べて、外国語を比較するというものでした。
9名の児童のうち、半数以上が外国人ということで、イタリア人やフランス人の児童は、それぞれの母国語の言葉について得意そうに答えていました。
授業の後半は、2~3人のグループごとに、絵カードと言葉のカードをはさみで切って机の上に並べ、グループ学習をしていました。
私たちの近くにいたグループは一生懸命「うま、うし、おんどり!」と覚えてくれていて、私たちが思わずにっこりすると、とても嬉しそうな笑顔で応えてくれました。
「国語」の授業として「外国語の単語と比較する」というような授業内容は、外国人の児童が多いからかもしれませんが、珍しく感じました。
1、2時間目の授業ともに共通して言えることですが、児童に自分で考えさせ答えを引き出そうとする授業の進め方がなされていました。
授業内容はマンツーマン
2時間目の算数は、時計のアナログの読み方と、デジタルの読み方の変換について。
ドイツ語のアナログ時計の読み方は、デジタル表示の場合とかなり異なっており、私も先日ETHのドイツ語講座で学習したばかりで、慣れないと難しいです(同時に小学校3年レベルの内容だったのかと認識・・・)。
最初の15分間、前日の授業で特に覚えられなかった3人に対して、教員がつきっきりで教え、その間、他の児童は自習でした。
自習内容は、3桁の足し算、引き算。
教材を見ると、単純な計算ドリルではなく、パズル形式になっていたり、回答に相当する点を線でつないでいくと恐竜の絵になったりと、楽しみながら自習できるような内容でした。
自習が終わり全員で時計の読み方を練習。
教師は全員に目配りし、全授業時間を通してほぼマンツーマンに近い形で授業が進められていました。
これがあったら
ホッとするもの
教室の一番前に、低いテーブルが置かれてあり、その上には、缶ジュースの空缶、お人形、おもちゃなどが並べられ、休み時間になると、その場所で遊んだり、中にはパンを食べている児童もいることに、私たちは驚きました。
「なぜこうしたものが教室においてあるのですか?」
と私たちが質問すると、
担任は、
「先日、抽象的概念を理解する授業の中で『心が休まる』『ほっとする』ということを勉強した時に、『これがあったらほっとするもの』を各自持参させ、教室に一週間だけ置く事にしました」
と説明されました。
窓際に置いてあった子供用のパソコン2台は、「『パソコンが大好きで、これがあるとほっとする』という児童が持ってきた物ですよ」とのことでした。
横のつながりの
人間関係はストレス
また、スイスでは、小学校1年から3年まで、4年から6年まで、それぞれ一人の担任が同じクラスの児童を担任します。
1年時からの児童の絵や、教室行事の写真などがファイルされ、また個人別のファイルも作成されており、各児童の成長がそれらのファイルから伺うことができました。
2時間目終了後、担任に
「教員という仕事は、スイスでも忙しくてストレスフルですか?日本では過労死も起きていますが信じられますか?」
というような内容の質問をしてみました。
「信じられるかどうか」という質問に対しての回答はありませんでしたが、
「確かにストレスフルできつい仕事です。以前は、自分がやりたいように授業ができたのですが、最近は、責任者を軸に系統的な授業をするようになってきて、横のつながりを密にとることが必要になりました。そのような人間関係が、ストレスの一因になっています」
とのことでした。
今日、見学した限りでは、日本の教員よりずっと自由裁量を持って仕事をされているように見えましたが・・・。彼女が言われた「ストレスフル」の質が、日本の場合と若干異なるような気がします。
なぜ
日本では
こうした小人数の授業が
なされないのだろう
最後にお断りしますが、私は、スイスと日本の教育について、どちらがいいとか悪いとかを評価するつもりはまったくありません。
ただ、 なぜ、日本ではこうした小人数の授業がなされないのだろう。
どうして授業内容にここまで差があるのだろう?
単なる人口の違い?
文化の違い?
それだけでは説明できないのではないか…
というのが、今回の学校見学で一番強く感じた事です。
なお、スイスの教育システムについて(小学校から成人まで)、「フラウ・イン・チューリッヒ」の中で詳しく教えてもらいましたが、紙面の都合上、帰国してから機会があればご報告したいと思います。
ドイツ留学の豊富な窪島氏の主張と大きな隔たりのあるスイスのドイツ語圏の小学校の教育。高校生と「読み」。窪島氏の主張や近年行われていることは、教育なのだろうか。
彼が、1970年代から否定してきた心理主義と教育の混同を自ら体現しているのではないか。
おねがい 教育と労働安全衛生と福祉の事実は、このブログの不具合から以下のブログでも展開しておいます。
ご覧ください。
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http://blogs.yahoo.co.jp/rouanken/MYBLOG/yblog.html
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