労働安全衛生を考える上で、次のことはもつとも基本であり、最も大事なことである。
しかし、日本の学校教育や労働現場・労働安全衛生教育はもちろん、日本のすべてで「ミスするのが人間」ということが否定され、真逆のことが徹底されているように思える。
不注意で起きるのか ケガや災害など
ケガや災害が起こったとき、会社側は「労働者が不注意だったから起こったのだ、もっとき気をつけてほしい」とよく言う。
たしかに自分の手足を同時に動かしたのだから不注意な動作と言えるだろう。 しかし、よく調べてみると、仕事が忙しく、製品の納期や生産計画の期限に迫られて無理をしていたことに思い当たることが多い。
そのうえ、労働者が非常に疲れていたり、何らかの原因でいらいらしていた場合もある。
あやまち・ミス・エラーを起こすから人間
人間は、あやまち(ミス・エラー)を絶対起こさないどころか、むしろ起こしやすい動物である。
みなさんも、試験問題で簡単な計算間違いをしたことがあるだろう。
あわてたり、あげっているときは誰でもよくあることだ。
工作をして誤って指にケガしたり、キャッチボールをしてつき指をしたことがあるだろう。
大人も同じだ。
充分な安全対策が行われているか
だだそれを「単純ミス」「人為ミス」として、会社が労働者のせいにしていたら、いつまでも同じような災害が起きるだろう。
たとえ労働者が不注意をしていても、ケガや病気が起こらない充分な安全対策を行うことが大切である。
( 細川汀編著健康で安全に働くための基礎 ディーセント・ワークの実現のために )
高校生はなぜ関心を持ったのか
この本を教科書として10年以上授業をしたある県の高校教師の「労働安全衛生教育実践報告書」を読むと、この
「人間は、あやまち(ミス・エラー)を絶対起こさないどころか、むしろ起こしやすい動物である。」
の項が一番生徒の関心が高く、かつ最も教えにくい項であったと書かれている。
細川汀編著「健康で安全に働くための基礎」(改訂前 「健康で安全に働く」)を教科書にして、授業を行ったある県の夜間定時制の高校教師の「労働安全衛生教育実践報告書」を読むと次のようなことが書かれている。
公立学校の教師は
労働安全衛生が教えにくい
1年間を通して労働安全衛生を教えることは、非常に困難でした。
その第一は、私自身が、地方公務員法の制約の下で労働協約はもちろん労働者の基本権が多くの部分で制約されていて、労働基準法などに定められた権利を具体的に行使した経験を持ち合わせていないと問題でした。
働いている、働いていない生徒のクラスでの授業で、働いている生徒は、80%でしたが、仕事もバラバラでバイトばかり。
バイトの掛け持ちや未成年なのに深夜労働をしている。
そのような生徒には、抽象的な言葉の説明では、通用しません。
そのため、まずあらゆる労働安全衛生関係の本や労災事故の報告や専門家に出会い話を聞く、
理解できたら他人事ではなく自分のこととして
職場である学校の労働安全衛生環境の改善に取り組みました。
第二には、絶えず移り変わる労働安全衛生の国際・国内状況を把握することでした。(略)
一番の驚き感心したのは
あやまち・ミス・エラーを起こすから人間
労働災害・職業病・母性保護・労災補償・人間の身体の仕組みなど労働安全衛生に関わる事項をすべて教えた最後の授業の3コマでは、約15万字を超えた補助教材と共に各項目について生徒からのアンケートと意見集約をとり、もう一度、集約結果を生徒に返して、次年度の生徒にどのようなことをどのように教えたらいいかを書かしたり、聴とりました。
ところが、毎年一番生徒が必要であり、驚き考えさせられたし、感動して、次年度にもっと詳しく教えて欲しい、と書く項目は、
「あやまち・ミス・エラーを起こすから人間」
「たとえ労働者が不注意をしていても、ケガや病気が起こらない充分な安全対策を行うことが大切である。」
でした。
ところが、このことを教えるのは最も困難で、難しいことでした。
なぜなら、具体的事例があまりにも少なすぎるからです。
レジの仕事を座ってするなんて
例えば、EUの多くの国では、スパーのレジ担当は座っている、と説明すると
「そんなんありえへん。」
「考えられんわ。」
「仕事にならん。」
とレジのバイトをしている生徒たちから、次々と教師がウソを言っている、と真顔で抗議されました。
そこで、生徒に手紙を書いてもらい、ヨーロッパのある国に留学している労働安全衛生研究者に送り、返事をもらいました。
返事の手紙には、「座ってレジの仕事をする写真」も添付されていました。
早速それを見せると生徒は喜んだものの
「ウソやー」
「信じられない」
と言い続けるばかりでした。
そこで、フランスの大型スパーが日本に進出していたので、そこのレジ風景を写真に撮らせてもらおうと大型スパーに行きました。
でも、レジの仕事をする人はフランス流ではなく、日本風の立ち作業でした。
なさすぎる
「不注意であっても安全な具体例」
「たとえ労働者が不注意をしていても、ケガや病気が起こらない充分な安全対策」の具体例を探しましたが、日本ではそれはあまりにも少なく、学校は最も悪い見本でした。
よく調べたら学校の施設・設備に安全対策が行われていないためケガや災害に遭った生徒や教職員が無数にいました。
「注意しないからだ」
「ミスは、生徒が悪い」
「ミスした教師が悪い」。
「注意すればすべて問題が起こらない。」
「安全対策、そんなのは不要だ。」
「安全にお金を使っても、何もおこらなかったら無駄で、無意味ではないか」
などなどの考えは、学校教育の中で徹底的に浸透していました。
注意すればすべて万能
ミスは生徒教師の責任
ですすめられる学校教育に抗して
そのため授業は、それらをひとつ、ひとつ、それを解きほぐして行くようなものでした。
そうしていると、
「そんなんありえへん。」
「考えられんわ。」
「仕事にならん。」
とレジのバイトをしている生徒たちから、
腰痛やむくみ、肩こり、腕のしびれなどの訴え
が、続出してきました。
日本の教育では、安全で健康に生きることをすべての分野で自己責任として貫徹されていることが、ある県の教師の「教育実践報告書」から読みとれた。
おねがい 教育と労働安全衛生と福祉の事実は、このブログの不具合から以下のブログでも展開しておいます。
ご覧ください。
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