2011年6月10日金曜日

「 先生たちが見殺しにしている」という提起を受た   府高委員長





           山城貞治( みなさんへの通信 4 )

 「 先生たちが見殺しにしている」という提起を受けて、1998年7月に京都府高委員長は、次のような文章を公表した。

公務災害認定を励まされたが

  文理閣出版のご好意で「教職員のいのちと健康を守るために」という本を龍谷大学法学部の脇田教授らのご指導とご援助で出版させていただいたが、私には痛恨の思い出がある。
 府立の学校で現職の先生が病気でなくなったとき、分会は、親身になってその先生の死亡の原因を探り、先生の死亡は、公務災害ともいうべきものだと、当局に要求をしたことがある。


二度と学校職場からこうした死亡を出さないため

 これは、提訴して争うということにはならなかったが、そのときに、助言をいただいた滋賀医大の垰田先生が、私たちのたたかいをはげまされると同時、
「二度と職場からこうした死亡を出さないため」
にもという立場から、次のような指摘をされた。


 「今度のことは、確かに現場の忙しさや、管理体制強化の中で殺されたといえると同時に、そういう状態を常日頃見ているのは仲間の皆さんがたでしょう。 いい方を変えれば、皆さんがたが見殺しにしたともいえるということじゃないですか!!」と。

大変なショックを受けた私たちは

 大変ショックを受けた私たちは、二度と府立学校の職場から過労死を出してはならないと、組合運動としてもこの問題を重視して考えてきた。


 しかし、思いとは裏腹に、労働安全衛生闘争は、さして大きな成果も生まれないまま、時だけが経過してきた。
 京都府教委当局も私たちの追及に
「労働安全衛生委員会の設置の検討を労使で進めたい」
とは交渉の度に表明しながらも、あれこれの理由をつけ、具体的な検討は、大幅に遅れてきた。

もっと積極的な取り組みを、と

 こうしたときに、
「もっと積極的に、自分たちのいのちと健康について考え、取り組むことが大切だ」
という意見を府高拡大闘争委員会や府高評議委員会で、また、個人的にも多くの組合員から大切で切実な、ご意見やご指摘、激励をいただいた。

労働安全衛生対策委員会をつくる

 こうした力に支えられてできあがったのが、京都府立高等学校教職員組合労働安全対策委員会(略称府高労安対策委員会)である。


 府高労安対策委員会は、精力的に討論を進めるとともに、いくつかの積極的な提案も行っていただき、府高労安対策委員会ニュ-ス「教職員のための いのちと健康と労働」を発行して、職場内で、職種や立場の違いをこえて「いのちと健康と労働」について考える討論をすすめ、労働安全衛生学習資料を提供してきていただいた。

 1997年の7月8日に、「教職員のための いのちと健康と労働」NO1が出されて早いものでもう1年がたとうとしている。
 1年間で、77号の発行を続けたこのニュ-スは、教職員のいのちと健康を守るうで、大変威力があり、不当人事を食い止める力にもなったし、働きやすい職場にするためにも大いに役立った。


自らと教職員の仲間の健康について
   真剣に考える示唆

 何よりも府高労安対策委員会の取り組みは、私たちが自らの健康について、真剣に考える機会とともに、教職員の仲間の健康についても科学的に考えることの大切さを示唆してくれた。

引き続き
各職場で共同の取り組みを進めよう

  最後に、校務も大変な上に、何事もないかのように、献身的なご努力をいただいた府高労安対策委員会のメンバ-の方々、日本の労働安全衛生の先駆的研究と実践をすすめておられる細川汀先生、辻村一郎先生、垰田和史先生、近藤雄二先生、北原照代先生、佐藤克昭弁護士のみなさんから心のこもったヒューマニズム溢れるご指導・ご助言をいただきました。


 京都府立高等学校教職員組合を代表して、感謝の気持ちと心からお礼申し上げます。

 この11ヶ月前に京都府高は、
1997年8月 教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために(第1次討議資料)を発表していた。
(以下 教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 は長文なものなので、小見出しを付けて分割して掲載させていただく。なお、この政策は、その後実現したり、新たに付け加えられたりする。)

教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために
(第1次討議資料) ( その1 )

 私たちのいのちと健康に関わる労働安全衛生は、教職員の諸権利と切り離して考えることはできません。
 その意味から労働安全衛生はまさに私たちの諸権利の一環ですが、今まで労働安全衛生の点での取り組みに弱い面を残してきました。

教職員の労働安全衛生の
 取り組みの弱点とその原因

 その原因としては、教職員の場合は、
 
まず
 第一に政府・反動勢力によって公務員として労働者の基本的諸権利がうばわれ、条例、規則などに拘束されてきたことがあげられます。
 第二には、労働省・自治省・文部省、府教委などによって学校保健の実施が、あたかも教職員の健康を守るための手だてであるかのようにされてきたことがあげられます。
 さらに労働基準法や労働安全衛生法の指導監督責任のある労働省が、自治省・文部省のやり方に迎合し、容認してきたため私たち教職員には、労働基準法や労働安全衛生法の適用さえも踏みにじり、権利面でさらに制限が加えられ、生存権としてのいのちと健康が労働面で無視されてきました。
 そのため私たち教職員の中には労働によるいのちと健康の危機が一層増大してきました。
 それにもかかわらず最近政府・文部省は教職員に対するいのちや健康に関わる問題で労働面からも攻撃を強化してきたため、私たちは、従来からの府高の要求に特に教職員のいのちと健康を守る問題を重点的に付記し、教職員のための労働安全衛生問題の基本政策を確立し、教職員組合としての取り組みを強めて行くことが緊急課題として求められています。

教職員労働安全衛生の取り組みは
 生徒のいのちと健康を守ることに直結

 私たち教職員が、自らのいのちと健康を守る労働安全衛生問題の取り組みを強めることは、生徒のいのちと健康を守ることに直結し、学校におけるいのちと健康の教育をより充実させ、内実のあるものとさせることができます。
 さらに、教職員の学校における労働条件や労働環境に対する点検や改善の取り組みと知識が豊かになればなるほど、学校災害を防止することにもなります。