2011年6月16日木曜日

百の論議よりもいのちと健康を守る取り組みを具体的に




  山城貞治(みなさんへの通信9)

 労働安全衛生法が、ややこしくされているのは労働者の保護の精神がないためで、京都過労死弁護団の弁護士から

「労働安全衛生法と関連規則、通達など読み切れないほど膨大なものだ。」
と言われ、
「安易に労働安全衛生法云々を言うより、まずみんなのいのちと健康をねがう要求。そこから出発しないとダメダ。教組はそこが弱い。」
と京都を中心に取り組んだ過労死事案の経験からの教訓をズバリ言われ、
「ようは、みんなのいのちと健康を守る取り組みを具体的にしているのか。」
と突きつけられた。
百の論議よりもたしかな一歩であった
 教職員のいのちと健康問題を最優先するため労働安全衛生体制もその視点から考えることとなった。

学んだ 自治体労働者の先駆的な取り組み

 その点で、自治体労働者の先駆的な取り組みから学ぶことになった。

 「いのちと健康を守る」自治体労働者の労働安全衛生読本(自治労連労働安全衛生・職業病対策委員会編 学習の友社)には、次のようなことが書かれていた。

曖昧な「 事業場」の概念・定義

第2編安全衛生を考える視点

 ③「事業場」とは何をさすのか?
「事業場」という言葉をいままで使用してきましたが、「事業場」とは何をさすのでしょうか。

 「事業場」単位で総括安全管理者をはじめ、安全管理者、衛生管理者、各種委員会等の設置・選任が行なわれるのですから、「事業場」の概念、定義は極めて重要です。 
 ところが、労働安全衛生法には「事業場」の定義がありません。
 この「事業場」の概念、定義が暖昧をために、自治体の安全管理体制や、安全衛生委員会の設置や運営等にもさまざまな問題をもたらしています。

事業場とは相関連する組織
のもとに継続的に行われる作業
の一体、と労働省

 労働省は、この「事業場」の定義に関して、
「この法律は、事業場を単位として、その業種、規模等に応じて、安全衛生管理体制、工事計画の届出等の規定を適用することにしており、この法律による事業場の適用単位の考え方は、労働基準法における考え方と同一である。」
とした上で、
「ここで、事業場とは、工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいう。
 したがって、一の事業場であるか否かは主として場所的観念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として一の事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とするものである。」
 (「労働安全衛生法の施行について」昭47.9.18発基第91号)という考えを一応は示しています。

教育委員会の管轄下の給食場を
 一括してひとつの事業場と労働省

 しかし、同時に、

「同一場所にあっても、著しく労働態様を異にする部門が存する場合に、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場ととらえることによってこの法律がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場ととらえるものとする。」
として、具体例として
「工場内の診療所、自動車販売会社に付属する自動車整備工場、学校に附置された給食場等」
を列記しています。
 ここで学校給食の例が出てきましたので、ついでに述べますと、昭48.3.2基発100号
「公立学校の学校給食事業に対する労働基準法の適用について」で、

「今後は、一の教育委員会の管轄下の給食場を一括して一の事業場」とするとともに、労働基準法8条の適用に関しては1号の「製造業」として取り扱う

との見解を示しています。

労働監督機関は
自治体によって異なる等
  複雑怪奇な状況

 ここまでのべてきますと、民間も自治体も事情は同じであると思われるかもしれませんが、実はもう少し複雑な問題が介在するのです。
 民間の場合は、監督機関がすべて労働基準監督署ですから、「事業場」をどのように扱うのかについて暖味な点があっても、労働基準監督署の方で判断、指導を行なうことができます。
 しかし、自治体の場合は、指導監督機関が労働基準監督署、人事委員会(人事委員)、首長の3つにわかれています。
 しかも、このわかれ方が、労働基準法8条による「業種」(1~17号)、現業・非現業等の相違、自治体の性格(都道府県、政令都市等の人事委員会のある自治体、人事委員会のない自治体)、さらには、労働基準局と人事委員会の「協議」によって「業種別」の監督機関の振り分けが自治体によって異なる等の複雑怪奇な状況になっています
 
安全衛生委員会設置は
 自治体では
民間に比べてよく言えば「柔軟」
悪く言えば「いい加減」

 多少わかリにくかったかもしれませんが、以上のことから導かれることは、自治体の場合、安全衛生委員会を設置する「事業場」をどのように設定するのかについて、民間に比べてよく言えば「柔軟」に、悪く言えば「いい加減」に扱うことができるということです。
 「事業場」の問題が、安全衛生委員会のつくり方に大きな関係を持つ.ていることがおわかりいただけたと思います。

以上のことなどなどを学んで、府高の学校に安全衛生委員会を設置する場合は、いくつかの経験を積んで実施することから、「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」では、

「安全衛生委員会」が真に教職員のいのちと健康を守る実績ができた段階で、各校で「安全衛生委員会」を作り、さらにきめの細かい教職員のいのちと健康を守る体制を確立すること。

という政策を打ち出した。

とんでもないことが発覚

 だが、学校の教職員から1997年以前にもうすでに学校に「衛生委員会」がつくられていると学校長が報告しているようだ。調べてくれ、という意見がいくつか舞い込んだ。
 そこで調べて見るととんでもないことが発覚した。