山城貞治(みなさんへの通信 5)
教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために(第1次討議資料)は、1997年8月に出されたもので、約14年の月日が経過していますが、「政策」が出されて、約10年間に実現したことは、具体的に順次お知らせしますが、今回は当時出された「政策」を引き続き掲載させていただきます。
教職員のいのちと健康を守るための労働条件を発展させる基本政策として以下のことが必要です。
(この政策は、、府高の基本要求を前提としながら教職員のいのちと健康を守る部分に直接関連する政策とします。)
当面 京都府・京都府教育委員会に
対して次の基本要求を要求します。
事業者として京都府・京都府教育委員会は、最低基準を上回る労働条件を確立すること
① 京都府・京都府教育委員会は、すべての府立学校で労働基準法の最低基準を上回る労働条件を確立すること。そのため当面府立学校における労働基準法違反を直ちに改めること。
また京都府・京都府教育委員会は、
労働安全衛生法の第1条「この法律は労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講じる等その防止に関する総合的計画的な対策を促進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」
同第3条「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。」
という事業者の責務を厳守し、その目的達成のため府立学校にあらゆる措置を講じるとともにその目的達成のための必要な予算措置を講じること。
② 以下の原則から考えて、従来の労働時間問題を見直して、京都府・京都府教育委員会に要求します。
労働時間は「最低条件」ではなく、
第一に労働時間の基本単位を一日としてとらえ労働時間の原則とする。
第二に労働時間に関わるすべての条件を「限界の条件」(これ以上働かしてはならないし、働いてはいけないという条件)を
原則としてとらえる。
第三に労働時間を労働者が人たるに値する生活を保障しうるものではなければならず、人たるに値する生活を営むことを権利として行使する基本的人権の原則としてとらえる。
休みのまとめどりをさせない
(1)週休2日の完全実施を要求する。
従来の「指定日」(週休日)の夏休み、冬休み、春休みなどのまとめ取りは、労働基準法違反なのでやめさせる。
拘束時間は労働時間
(2)労働時間としては、授業の準備、採点、教材づくりや各種会議などの労働拘束時間として位置づけるよう要求する。
労働時間の中間に休憩時間を
(3)休憩、休息は、労働基準法どおりに労働時間の中間にとれるよう調査検討するよう要求する。だだし、今すぐとれる条件があるところは、すぐに実行に移す。
代休は翌日に
(4)休日出勤の代休は、翌日を原則とし、代休がとれない場合でも1週間以内にとれるように限定を要求する。
宿泊労働は宿泊日数に応じた回復措置を
(5)宿泊をともなう労働の場合は、当面泊数に応じた回復日を保障するよう要求する。
深夜にわたる家庭訪問の回復措置
(6)深夜にわたる家庭訪問などには、翌日回復休暇を与えるよう要求する。しかしこのことは極力さけるよう府教委としての指導を要求する。
年休届けの簡略化
(7)労働基準法違反の「年休届」を明らかにさせ、年休届の様式を変更させる。同時に府教委や管理職に年休権を守るよう教育する。
年休取得状況報告を
(8)過去25年間の年休消化状況・指定日消化状況、生理休暇取得状況を、府立学校全体及び各学校ごとの取得状況を報告させ、年休権や生理休暇の行使が出来るよう要求する。
超過勤務状況報告を
(9)過去25年間の、教職員の超過勤務状況を府立学校全体及び各校ごとの状況を報告するよう要求する。
特に限定4項目(生徒の実習、学校行事、教職員会議、非常災害等やむ得ない場合)で勤務を命じた時間外勤務時間数とその件数及び教員数を府立学校及び各学校ごとの報告をさせる。
また限定4項目を無視して勤務を命じ、「教職員の健康と福祉を害した」勤務時間数及び教員数を府立学校及び各学校ごとに報告するよう要求する。
通勤時間は1時間以内に
(10)現行の通勤時間1時間半をこえることなどをやめさせ、1時間以内とするよう要求する。
その場合、公共交通手段による通勤時間であって、自家用車による通勤時間とさせない。
夜間労働時間の短縮を
(11)府立学校での夜間時間(日没以降などの労働時間)の労働に対しては、その拘束時間をさらに短縮するとともに回復時間を多くとれるような手だてを講じさせる。
勤務時間内に給料が受け取れるように
(12)賃金を受けとる(金融機関等への給料の口座振り込み)時間を労働時間として認めさせる。
労働安全衛生管理体制について
府立学校全体を「一事業場」として
(1)まず、府立学校全体を「一事業場」とみなし、安全委員会と衛生委員会を個別に作るのではなく、「安全衛生委員会」を設置することを要求する。この場合、教職員の労働実態を無視して、衛生抜き、安全抜きの「委員会」にしないことを要求する。
安全衛生委員会は、使用者側は5名、府高推薦5名、産業医(使用者側推薦1名、府高推薦1名)計2名、・産業保健婦(使用者側推薦1名、府高推薦1名)計2名で構成すること。
安全衛生委員会は、事務所を置き、適切な行動がとれるようにすること。
この場合、使用者側の部屋、労働者側の部屋、産業医・産業保健婦(注 当時の名称 )の部屋、合議の部屋を確保し、労働者側も安全衛生委員会の事業が適切に行えるよう専従とする。
そのことを保障するため労働者側の安全衛生委員の出身学校に教職員を加配する。
また衛生管理者としての産業保健婦を必ず専任で配置し他の仕事の兼務をさせないようにすること。
衛生管理者、安全管理者、安全衛生委員は、それぞれの仕事を遂行するために十分な保障をすること。
日常点検活動、事故災害発生時に緊急に現場に行ける自由の確保、労働安全衛生教育のための講座・講習・研究会・学会への参加と物的保障、参考図書の購入、災害原因調査の権利、教職員の労働安全衛生相談の時間の確保、安全衛生委員会への参加の保障などすべての面で保障すること。
「安全衛生委員会」が真に教職員のいのちと健康を守る実績ができた段階で、
各校で「安全衛生委員会」を作り、さらにきめの細かい教職員のいのちと健康を守る体制を確立すること。
この場合、各学校の保健部等の生徒の健康を維持し発展させる機関に「安全衛生委員会」の肩代わりをさせないことを要求する。
なお「安全衛生委員会」には、労働組合代表を公正に認め、教育委員会(使用者)の指示に従う人を労働者代表としないことを要求する。
また安易に保健体育教師や養護教諭が「衛生管理者」(労働安全衛生法では、学校に限ってのみ)の資格があることを理由に、本人の合意や職場の労働条件等の改善抜きに指名しないこと、衛生管理者はあくまで「教職員のいのちと健康」を守る仕事に徹することができるようにし、教育委員会からの干渉圧迫をしないことを要求する。
健康管理医は 労働安全衛生法違反
(2)産業医は、労働組合と協議し、双方の理解のもとに選定することを要求する。また教職員からの産業医に対する拒否権、罷免権を認めることができるよう要求する。(このことが実現しない場合は、1年間一回全教職員の参加の下に信任投票を行う。不信任が過半数を超えたとき産業医の変更を行うようにする。)
また現在の「健康管理医」は、労働安全衛生法違反なので直ちに改めること。
事業者の講ずべき措置としての計画を毎年4月に公表
(3)府教委は、労働安全衛生法にもとずき安全衛生委員会で「事業者の講ずべき措置」を検討し、事業者の講ずべき措置としての計画を毎年4月に公表し、その取り組み状況を学期ごとに中間報告し、年度末にはすべての教職員にその取り組みと総括と次年度の方向を明らかにするよう要求する。
労働安全衛生対策について
(1)安全衛生委員会で、毎年定期的に教職員が一番忙しい時期に疲労やストレスを含めた教職員の健康調査を行い、その結果を公表させる(個人のプライバシーなどは除く)とともに教職員のいのちと健康を守るための総合対策を明らかにさせる。
(2)退職教職員の健康追跡調査を行わせる。
(3)教職員の健康診断等については、その目的趣旨を教職員に徹底させるよう要求する。
現行の「医師なし健康診断」は、労働安全衛生法違反なので直ちに改めさせる。同時に違反になった経過と原因を明らかにさせる。
定期健康診断が、生徒の健康診断の間に行われることや、1年間にわたることを改めさせる。少なくとも年度末にまでにわたって定期健康診断を行うことは、教職員の異動等など多くの弊害があるのでやめさせる。
さらに現行健康診断に、腰痛健康診断、けいわん健康診断や乳ガン健康診断、子宮ガン健康診断、肺ガン健康診断、前立腺健康診断などのガン検診を導入させ、ガンの早期発見早期治療などができるように要求する。
また教職員の健康診断のための「休暇制度」を確立し、教職員の専門医療機関で受診できるようにするよう要求する。健康診断結果は、個人のプライバシーを堅く守り、原則として1ヶ月以内に受診者全員に通知する。しかし、健康診断結果が個人にのみ返されて終わるのではなく、教職員全体の健康診断結果の概要を明らかにし、安全衛生委員会で協議し、「事業者の講ずべき措置」に反映することを要求する。
また、健康診断を受けられなかった教職員が、他校で受診するときは出張扱いとする。
健康診断を他の医療機関で実施した(拒否権を行使した)教職員には、その医療機関に府教委が実費を支給するよう要求する。時間外健康診断は不当なものであるので改めさせる。
以上の点に立って健康診断が受けられない教職員をなくす。
(4)採用時の健康診断についてはその基準を明らかにさせるとともに、過去不採用になった理由を公表させ、その扱いが不当なものであった場合は、採用取り消しなどを改めさせるなどのことを要求する。
(5)健康診断後の健康指導は、府教委が責任を持つ。教職員の健康状況については、プライバシーを厳守しながら、きめの細かい健康指導を実施するよう要求する。
2次健診は、府教委が責任を持ち教職員に援助するとともにその費用を負担する。
なお教職員の健康状況についてのプライバシーを守らなかった管理職は、処分させる。
また病気等の教職員や健康診断で病気がわかった教職員には、絶対強制異動をさせないことはもちろん、安心して治療に専念できる保障を作り、学校の教職員の「自助努力」にゆだねないこと。
また現行病気休暇制度を3年間という縛りだけで終始するのではなく、教職員が安心して快適に仕事ができるように根本的に改善するよう要求する。また病休講師は7日以上1ヶ月未満についても導入するものとする。
(6)安全衛生教育は、憲法と労働基準法・労働安全衛生法にもとづき「その最低基準」を教えるのではなく、その最低基準を上回る方向を教えること。
また講師などは、組合との合意にもとづき選定し、使用者側の一方的な教育にならないように要求する。労働安全衛生に対する理解や意見の違いがある場合は、両方の講師を迎え安全衛生教育をすすめるよう要求する。
(7)京都府公立学校教職員疾病審査会の全容(構成メンバーも含む)を明らかにし、今日までの取り組み状況を報告するよう要求する。
同時に審査会そのものを根本的に改めるよう要求する。
当面、組合代表の審査会への参加や組合の推薦する複数の医師を入れさせる。
休職から職場復帰した教職員には、リハビリ勤務をはじめきめの細かい対策をおこうなう。
なお、職場復帰やリハビリ勤務については、教職員の主治医の意見を尊重し、本人、主治医、産業医、府教委・学校、組合の合意を前提とする。
(8)公務災害を取り扱う、地方公務員災害補償基金京都府支部などの諸制度を基本的に改善させる。
また地方公務員災害補償基金京都府支部(審査会を含む)には、公正な判断をさせるために教育委員会関係者を加えないなどをはじめ、不当な制度を改めさせる。
(9)公務災害は、本人申請を妨害することなく、管理職が責任と役割を持って公正に対処させる。また公務災害の手続きを簡素化し、認定時期をいたずらにのばすことなく早急に手だてを打つこと、実態に応じて現行法制度にない災害でも救済措置をとることを要求する。
民間の労働災害がすでに適用されているケースは、無条件で公務災害を適用すること。
また公務災害適用後も本人救済、健康管理、リハビリなどの援助措置を行い、府教委としての責任を果たさせる。
(10)職場の労働環境については根本的見直しをはかり、教職員の要求を受け入れ、生き生きと希望のもて、自由に話せる職場環境(快適で安全な職場)にすることを要求する。
特に教職員の労働が、長時間立ち仕事であることが基本的に改善がなされていないことを改めさせる。
妊娠中や腰痛、頸肩腕障害や病気などの教職員が常時座ることができるようイスなどの配置を教室や教育現場に整備する。
職員室などの机イスなど既存の事務机などを快適なものとするため基本的に入れ替えるとともに職員室や事務室などを大幅に広げる。
この場合、職場の労働環境は、大多数の教職員が満足しても不快に感じる教職員があれば、個人差を配慮する。
(11)学校における喫煙は、その有害性を周知するとともに分煙室は最低条件として設置すること。
(12)学校における有害性のあるものや物理的性質(引火性、爆発性、揮発性など)、発ガン性(変異原性)、アレルギー、遺伝性毒性などの予防策(設備、装置、予防具など)と緊急対策を行わせる。
有害物の基準は、日本産業衛生学会の許容濃度基準を尊重すること。
(13)各校の教室や廊下、体育館など学校全体を労働現場として位置づけさせ、採光、換気、温度などはもちろん、チョークをはじめ様々な粉じん対策や黒板(軽量移動式)、教壇などの改善を図り、教職員の安全と健康を守る対策を行わせる。
(14)人権無視の生理休暇届を改め、女性教職員が自由に生理休暇が取れるようにさせる。
また生理休暇の必要性と女性教職員の健康との関係を明らかにし、生理休暇制度の充実を図らせる。
(15)妊娠した教職員には、妊娠が判明したときから代替え教職員を配置させる。
また、管理職は、妊娠した教職員が安心して労働できる条件をつくるとともに生徒への協力・理解を率先して求めるようにする。
妊娠障害、流産、死産が特に多い学校を公表させ、その原因と対策、今後の方向を明らかにさせる。
(16)各校に学校騒音から遮断された男女別でゆったり横たわれ、真に安息できる休養室を正式に設置させる。
(17)3ヶ月に1回日常的に学校の安全衛生点検(生徒のみならず教職員の立場にたった)をすすめ、その結果を関係者全員に公表させ、学校の安全を確保する。また障壁(バリアー)をなくす。
教職員が指摘する各学校の安全衛生上問題がある危険個所などを明らかにさせ、それを直ちに改善させ、安全上の対策を講じさせる。
指摘された危険個所を放置したり、無視した管理職の名前を公表させ、それなりの処置を行わせる。
(18)各校で各種機械などを導入する時は、事前にその機械などの安全を点検するとともに教職員への安全教育を徹底させる。
(19)府立学校では、理科などにおいて化学劇物を扱うことが多くあるため、劇物等の取り扱いなどの安全教育を徹底させること。
また薬品保管庫の整備、管理、点検などを教職員任せにするのではなく、府教委が責任を持ち対策を講じるよう要求する。
さらに理科実験室などの安全衛生面での総点検をおこない、強制吸排装置や十分な備品及び安全で衛生的な実験室を整備させる。
また恒常的にある化学実験でのけが、事故などをなくし、その予防対策を進めさせるとともに、けが、事故などについては、そのつど教師、実習職員などに公務災害適用を行い、公務災害かくしをしないよう要求する。
(20)実験、実習、実技指導などの災害をなくし、その予防策をすすめさせる。災害については、公務災害適用を行い、公務災害かくしをしないように要求する。
(21)工業課程を置く学校では、特に工業用の安全衛生基準と安全衛生マニュアルをつくり十分な安全対策を講じさせる。
(22)水産課程を置く学校では、安全衛生基準と安全衛生マニュアルをつくり十分な安全対策を講じさせる。
その場合、航海、潜水などの安全衛生対策を強化させる。
(23)農業課程を置く学校では、特に農薬などの安全衛生対策や機械使用の安全対策を講じさせる。
(24)各学校のコンピューター使用については、教職員にVDT使用時の労働安全衛生基礎知識を教えるとともに、作業環境、使用時間などの労働省基準を上回ることはもちろん、日本産業衛生学会の「VDT作業に関する委員会報告」を尊重させる。
現在実施されているVDT健康診断を希望者だけに限定せず使用者全員が受診できるようにすること。
またVDT健康診断の内容を大幅に完全すること。また健康診断結果について集団対策を講じること。
各校に設置されている各種コンピューター教室は、VDT作業の手本となる環境を作ること。
(25)管理職などの、威圧的態度、要求無視、高圧的態度、人権無視、学校の民主的運営の破壊などは、教職員のストレスを増加させ、精神衛生上もっとも悪いものになっているのでやめさせる。
(26)教職員の精神衛生上の対策として、各種休暇制度を、授業や仕事の補充を無くし、自由に気兼ねなく休めるようにする。
また生徒の諸問題を教職員個人の能力や資質や責任に返すことを取りやめ、学校として集団的に対応するとともに、学校教育の果たす役割と社会の果たす役割を区別し対処すること。
また、管理職は、上意下達のやり方を直ちに改めること。
(27)障害児学校での腰痛健康診断、けいわん健康診断で、労働軽減が必要とされた教職員に対し、労働軽減のための教職員を配置すること。
(28)障害児学校に、安全で衛生的で働きやすい環境をつくること。
机・椅子・ベッド・便器などを教職員の作業姿勢を考えて調節可能なものにするとともに、あらゆる設備の安全・衛生点検を行いその改善を進めること。
また、リフターやリフト付きスクールバスをはじめ先進諸国で導入されているオーダーメイドの人間工学にもとづく機器の導入をはかり、教職員の健康を守るなどの予防策を講じること。
(29)教職員に対する「感染症対策」を行い、必要に応じて特殊健診などを行うこと。
第1次討議資料を読まれたあなたの意見を、分会や府高労働安全衛生対策委員会までお寄せ下さい。
府高労働安全衛生対策委員会では、寄せられた意見をもとに「府高労働安全衛生対策委員会基本政策」を検討し、改善したり、修正したり、付加したりして、府高執行委員会へ提言したいと考えています。
あなたの意見と考えをぜひお寄せ下さい。