山城貞治(みなさんへの通信8)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」は、他の教職員労組にも送ったが、以下の労働安全衛生体制に対して、全教や他府県教組ばかりか、京教組からも異議が出されて非常に驚くべき事態が進行していくこととなった。
先に異論の要旨を述べておくと、あれこれ言われたが
「労働安全衛生体制は、学校単位で衛生委員会としてつくるものである」
「労働安全衛生法の事業者は、教育委員会でもあるが、学校単位では校長が事業者である」
とするのが前提であり、労働安全衛生法の解釈だとするものであった。
このことは法的問題とその解釈や「それをどのように教職員のいのちと健康を守るため利用するのか」という問題に関わるので少し解説したい。
また14年も経過した最近、近畿のある府県の教師からも質問が寄せられているというので説明も付け加えたい。
当時、労働安全衛生法研究者や労働安全衛生研究者や弁護士などから、
「教職員は、労働安全衛生体制が出来れば、教職員のいのちと健康が守れると考えているようだ。それは、仏作って魂入れず、なのだ。」
とさかんに言われた。
府高の提起した他の教組にない
労働安全衛生管理体制
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」では、
(1)まず、府立学校全体を「一事業場」とみなし、安全委員会と衛生委員会を個別に作るのではなく,、「安全衛生委員会」を設置することを要求する。
この場合、教職員の労働実態を無視して、衛生抜き、安全抜きの「委員会」にしないことを要求する。
安全衛生委員会は、使用者側は5名、府高推薦5名、産業医(使用者側推薦1名、府高推薦1名)計2名、・産業保健婦(使用者側推薦1名、府高推薦1名)計2名で構成すること。
安全衛生委員会は、事務所を置き、適切な行動がとれるようにすること。
この場合、使用者側の部屋、労働者側の部屋、産業医・産業保健婦の部屋、合議の部屋を確保し、労働者側も安全衛生委員会の事業が適切に行えるよう専従とする。
そのことを保障するため労働者側の安全衛生委員の出身学校に教職員を加配する。また衛生管理者としての産業保健婦を必ず専任で配置し他の仕事の兼務をさせないようにすること。
衛生管理者、安全管理者、安全衛生委員は、それぞれの仕事を遂行するために十分な保障をすること。日常点検活動、事故災害発生時に緊急に現場に行ける自由の確保、労働安全衛生教育のための講座・講習・研究会・学会への参加と物的保障、参考図書の購入、災害原因調査の権利、教職員の労働安全衛生相談の時間の確保、安全衛生委員会への参加の保障などすべての面で保障すること。
「安全衛生委員会」が真に教職員のいのちと健康を守る実績ができた段階で、各校で「安全衛生委員会」を作り、さらにきめの細かい教職員のいのちと健康を守る体制を確立すること。
この場合、各学校の保健部等の生徒の健康を維持し発展させる機関に「安全衛生委員会」の肩代わりをさせないことを要求する。
なお「安全衛生委員会」には、労働組合代表を公正に認め、教育委員会(使用者)の指示に従う人を労働者代表としないことを要求する。
また安易に保健体育教師や養護教諭が「衛生管理者」(労働安全衛生法では、学校に限ってのみ)の資格があることを理由に、本人の合意や職場の労働条件等の改善抜きに指名しないこと、衛生管理者はあくまで「教職員のいのちと健康」を守る仕事に徹することができるようにし、教育委員会からの干渉圧迫をしないことを要求する。
(2)産業医は、労働組合と協議し、双方の理解のもとに選定することを要求する。また教職員からの産業医に対する拒否権、罷免権を認めることができるよう要求する。(このことが実現しない場合は、1年間一回全教職員の参加の下に信任投票を行う。不信任が過半数を超えたとき産業医の変更を行うようにする。)
また現在の「健康管理医」は、労働安全衛生法違反なので直ちに改めること。
(3)府教委は、労働安全衛生法にもとずき安全衛生委員会で「事業者の講ずべき措置」を検討し、事業者の講ずべき措置としての計画を毎年4月に公表し、その取り組み状況を学期ごとに中間報告し、年度末にはすべての教職員にその取り組みと総括と次年度の方向を明らかにするよう要求する。
というものであった。
(3)は地方公務員は除外ということも承知していたが、学校が4月にはじまり、3月にはじまることも含めて考えられたものであった。
使用者と事業者は 違う
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」作成にあたって、私たちは、多くの学習をしなければならなくなった。
そこで、まず労働安全衛生法成立時における国会の議録を調べ、「使用者」と「事業者」の違いを調べ、教育分野や学校における「事業者」を明確にしなければならないと考えた。
そのため、「1972年衆議院社会労働委員会議事録」を調べてた。
最高の責任を明確にしたのが事業者
政府
(労働)基準法の第十条で「使用者とは事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為するすべての者をいう。」
ということで、最高の経営者、責任者だけでなしに、その下におります労働関係に関係する、いわゆる使用者側の立場にある従業員も使用者の中に入っておるわけでございます。
最高責任者の明確化のための事業者
そこで従来ややもいたしますと、最高責任が事業の経営者にあたるということがぼける、使用者の範囲が非常に広くて、実際の衝に当たる行為者までふくみますために、最高の責任が経営者にあるのだということがややぼけるきらいもございましたので、今度の労働安全衛生法におきましては、義務を課します対象を事業者といたしまして、これは「事業を行う者で、労働者を使用する者をいう。」ということで、経営者そのもの義務を課しまして、経営者が労働安全衛生につきましては最高の責任を持っておるということを明確にいたしておるところでございます。
事業者・事業主・使用者・行為者
と名称の区別がつきにくい
国会議員
われわれは労働基準法を読むと事業主といことばになれておる。
ところが新法では事業者ということばが出てきたので、これは何か意味があるのかということと、それではついでだから、事業者、事業主、使用者、あえて言うならば行為者、四つ、労働省が使う法律用語が出てきたのですが、はっきり区別しているおるとすれば、聞かしていただきたい。
労働基準法上は
使用者という範囲は広い
政府
基準法では、これは使用者ということばを使っておるわけでございます。
基準法十条では「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」どういうことで、基準法上、使用者と申しますと、最高責任者である事業主だけでなしに、そういうような従業員の中、使用者のために行為をする人までも含まれる、非常に広い範囲になりますので、ややもいたしますと、そういう問題について事業主御本人の責任ということがぼやけるきらいがあるわけでございます。
最高責任者が
労働者の安全衛生の確保に取り組む
しかしながら、特に労働者の安全衛生等につきましては、これは何といっても、その労働者を使用しておられる事業主が最高の責任を持ってあたるべき事項でございますので、そういう使用者の最高責任を明確にし、使用者が責任を持って労働者の安全衛生の確保に取り組むべきだというを趣旨を明確にするには、やはりいろいろな義務の対象者を事業主にすることが、事業主の責任明確化のために効果的である。
かように考えまして、労働安全衛生法では基本法の使用者という概念を使わずに、事業主ということばでとらえておったわけでございます。
労働安全衛生法上では
使用者ではなく
法人と最高責任者が罰せられる
しかしながら、実際に事業主に使われまして、労働者の安全衛生を補完する人たちも、もちろん安全衛生については責任を負っていただく必要があるわけでございますので、この安全衛生法の百二十二条におきまして、罰則を科する場合には「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人、または人の業務に関して」違法行為をしたときは、行為者を罰するということにいたしまして、事業主の責任を明確にしたために、その下におる安全衛生管理担当者が責任感が薄らぐことのないように、その意味では実際の安全衛生担当者についても、事業主とともに、違反行為に対する責任を問うことに新法ではいたしておる。
そういうことによりまして、事業主の責任を明確にしつつ、しかも担当者の責任も決して免れるものではないということによって、労働者の安全衛生確保の確実な履行をはかっておるところでございます。
国会議員
それは理由はどうだっていいと思います。使いようですから。各会社の労務課長はこれは迷う。
事業者、事業主、使用者、行為者といったものは、これはその解釈を労働省できめればいいのだから、だからそこをやはり端的に説明してもらいたかった。
という審議で、国(当時労働省)は、
「事業者」とは、法人企業であれば当該法人(法人の代表者ではない。)、個人企業であれば事業経営主を指している。
これは、従来の労働基準法上の義務主体であった「使用者」と異なり、事業経営の利益の帰属主体そのものを義務主体としてとらえ、その安全衛生上の責任を明確にしたものである。
なお、法違反があった場合の罰則の適用は、法第122条に基づいて、当該違反の実行行為者たる自然人に対しなされるほか、事業者たる法人または人に対しても各本条の罰金刑が課せられることとなる(47・9・18発基91)。
と通知したのである。
学校長は、事業者にならない
「事業経営の利益の帰属主体」、理解しがたい話であるが、学校長は、事業者と解釈できるのかという問題に対して、府高労働安全衛生対策委員会は他の事例などを調べて「そうではない。」という他教組と違う結論に達したため労働安全衛生体制も他の教組と違う体制を主張したのである。