2011年6月27日月曜日
労働災害が起こることは予測できる 予防する法・行政の改善に変革することこそ絶対条件
山城貞治(みなさんへの通信19)
HOSOKAWA ADVICE
現場に対応できない法体系
細川汀 京都市立衛生研究所(当時)
(1971年6月8日制定から10年が経過した光と影が語るもの)
労働安全衛生法10周年特集
1982年10月 労働安全衛生広報1号 より転載
くり返し同じ 死者の発生
重症患者をだしてはいけない
従来の職業病問題の多くは、
死者の発生、重症患者の(くり返し転医後の)偶然の発見、または、職場での多発
⇒ 患者・家族の労災申請または「守る会」、患者会、労働組合の抗議
⇒ 労基署の対応
⇒ 発病原因(直接)の推定と管理基準以下への改善、特殊健診の実施
⇒ 作業、経験年数、症状、部位を限定した認定、行政指導通達
⇒ 患者の軽快・分散と問題の「消失」、追跡の中断
というパターンを採ってきた。
例えば、70年から筆者が一貫して提起している保育所保母のけい腕・腰痛の防止対策について、労働省は75年認定基準通達において
「業務内容にそれ程の特異性もないので」
一般的には業務上とみとめない態度を態度をとってきた。
しかし、81年の労働保険審査会は、
保母の作業内容・作業姿勢が上下肢腰部に及ぼす負荷が大きく、業務の特殊性から休憩がとり難く、厚生省令設置基準の保母定数では相当に負担が大きいこと
などを認めた。
これに対し、労働省は直ちに事務連絡(第35号)を発し、それによって労働省の方針は変わらない。
「原因因子としての医学的知見がえられない」
という態度を表明し、実態の把握、原因の究明を含めて予防対策を何らとろうとしない。
予防を中心としたパターンに 変革 してこそ
このような状況を、
労働及び健康実態の継続的把握と改善努力、有害作業導入前安全衛生チエックと追跡
⇒ 患者の早期認定・治療、要注意者に対する作業管理
⇒ 学習教育の徹底、すべての訴えと症状(全身的)と迅速な原因調査(すべての要因特に背景)と防止措置、専門家集団の協力
⇒地域における相談・診断・治療・リハビリテーションでの体制
⇒ 労基署・局の対応と追跡
⇒ 予防を中心とする法・行政の改善
と言ったパターンに改める必要がある。
対策の不備が
いろいろな形で現れてくるであろう
70年代にそれ以前に発生したじん肺、振動病、職業がんなどの対策が積み残ったように、80年代も70年代の対策の不備がいろいろな形で現れてくるであろう。
過労死やメカトロニクス障害の問題はその一つと言えるかもしれない。
専門研究者に聞こうともしない行政では
労働災害が ひろがる
じん肺法改正(78年)、有機則改正(79年)に際しても専門研究者(日本産業衛生学会など)の意見の理念的な部分が取り入れられなかったことからも、このような事態が起こることは予測できる。
もちろん、現在予測し難い新しい技術革新や作業態様の変化によって起こるであろう労働衛生の課題については(その体制を整備することなしには)論外であろことは言うまでもない。
(注:メカトロニクスは、機械工学「メカニクス、mechanics」と電子工学「エレクトロニクス、electronics」を合わせた和製英語であるが、今日この技術で多くの問題が生じている。)
( 了 )