2011年6月20日月曜日

教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために第1次討議資料1997年8月」から「すぐにでもできる労働安全衛生九つの緊急提案」(1997年10月18日)へ




山城貞治(みなさんへの通信14)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料 1997年8月」への意見の一部を引続き再録するが、労働安全衛生対策委員会では、いくら論じていてはダメダ、至急みんなに提起しなければならないことがあると言うことに至った。
 そこで労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」に「すぐにでもできる労働安全衛生九つの緊急提案」を掲載することになる。

府高本部の役員と一緒にMさん宅にお見舞いに
                            R障害児学校 Kさん

病気で休んでいる教職員へのあたたかい支援と闘いを!
☆のんびり、気を楽にして、あわてず休養してね。 
☆腰痛持ちだから、貴方の痛みがよくわかるよ。 
☆今より働きやすい職場にして待ってるよ。
 これは、5月に腰痛で長期の病休に入ったMさんへの私たち寄せ書きの一部です。
 小学部のMさんは、昨年、MK養護学校から転勤し重複児グループの教育を担当。
 その年の秋から腰痛に悩まされ、今年の5月連休明けに
「毎晩痛み止めを飲まないと眠れない。夜中に痛みでうなされる。もう限界!!」
とやむなく長期の病休に入られました。
 7月、府高本部と連絡を取り府高本部の役員さんと一緒にMさん宅にお見舞いに行きました。
 Mさんは、

「やっぱり早めに病休とっといたらよかった。無理してこじらせた。」
「がまんしてた…転勤して1年目やったし…」
「フリーの教員がいないので、みんなに迷惑かけるし……」
と私たちに訴えられました。
 Mさんだけがしんどかったのではありません。

「あなたは、元気に働いている?」
 「そういう自分は元気に働いているか?」


 小学部では、昨年13名中11人が、また今年もすでに12名中5名がなんらかの病気による休みをとっています。
 教職員の健康破壊がすすんでいました。それだからよけいMさんは、無理をして病状を悪化せざるを得なかったのです。
 そのため私たち分会は府高本部と連絡を取り、7月に校長へさらに9月に府教委へと緊急要求書を提出。
 小学部の教職員の健康破壊は、授業の持ち時間数の増加、子どもの障害への配慮からくる緊張と介助的作業の増加、ここ3、4年連続の不当で無配慮な異動などが病気で休む教職員続出の要因として、緊急改善とフリー教員の早急配置を要求していました。
 夏休みの終わりの8月末、私たちは、学校の教職員の健康対策の話し合いをすすめ ています。
 学校では、小学部だけでなくすべての教職員に労働安全衛生が必要になっています。
 私は、一日も早く職場復帰をしたいとねがっているMさんをはじめ、多くの病休者に支援するだけではなく「ともに闘おう」という決意をしています。
 「あなたは、元気に働いている?」
 「そういう自分は元気に働いているか?」
 まづ、みんなで声をかけ合ってみよう!

  生活破壊、健康破壊に歯止めをかけるのはだれ? ー いのちと健康の問題は、闘わないと守れないことを明らかに ー
                                                             ひとりの養護教諭から

 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生対策委員会討議資料や「教職員のための いのちと健康と労働」を充分読んでいます。
 特に「教職員のためのいのちと健康と労働」NO8,NO9は、教育のはたす役割や教職員の任務について的(まと)をえた意見が出ていると思いました。
 私たちの毎日は、目の前にいる生徒のことを考えるといろいろな課題があることに気づき、自分の「意志」で仕事をしているように感じ、自分の生活時間に学校の仕事をどんどん入れてしまい、それにブレーキがかかりません。
 教育の仕事は魅力ある仕事だから、よけいにそうなるのかもしれません。
 でも、それでは、生活や人生を大切にし、教育という労働を通して生徒たちに、生きて教えることにはなりません。

長続きしない 自己犠牲

 日々に追われ、いわば「なりゆきまかせ……」になっているとも思います。
 もっとよく考えると、不十分な教育予算と労働条件を放置して、私たちがすすんで働くかのように仕向けてくる教育政策は、ひどいなあと思います。
 このまま教職員の正当な権利が保障されない状況がもっとすすむなら、「民主的人格を生徒に育成する」ことや「いのちを大切にする教育」は、とてもとても困難です。
 教師の「善意に名を借りた自己犠牲」の持ち出しだけでは、教師の生活破壊や健康破壊はもっと進んで行くと思います。
 自己犠牲は決して長続きしません。
 それに対して、だれが歯止めをかけてくれるのでしょうか?
 教育委員会や文部省が?
 個人で?
 家族が?
 それとも働く状況をよく知っている職場の仲間や組合の闘いでしょうか?
 やっぱりなにより組合の取り組みに期待したいし、組合本部まかせにしないでみんなで考えることが、今もっとも大切であるように感じていますが、いかがでしょう。
 この夏、先輩の養護教諭の先生からこんな話を聞きました。

学んだことから教えることへ
そして教えたことが自分のなかまへの取り組みに


「ずっと以前、性教育をはじめた頃、生徒に性教育を教えるために母性保護も学習した。
 そのころ中学校卒業後すぐに働く生徒も少なくなかったから、性教育の中で生理休暇のことも、なぜ必要か、もふくめて教育した。
 そして、自分が授業をさぼるのに生理だとウソの理由にしてはいけないことも教えた。そして教師自身も生理休暇の必要性がわかり、生理休暇を取れるよう組合で取り組んだ。」

 学んだことから教えることへ、そして、教えたことが自分のなかまへの取り組みに生かすことであった、との話でした。
 今、学ぶことと、それを生かすことの「乖離(かいり)」がさまざまに言われますが、いのちと健康の取り組みに、結びつけて考えてゆきたいと思っています。
 組合では、労働者の基本的権利の問題なんかも取りあげて、いのちと健康の問題は闘わないと守れない、ことにふれていってほしいと思います。
 
緊急提案を出さなければ

そして緊急提案として労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」1997年10月20日 NO15に以下のことを提案した。

教職員のいのちと健康を守り、真の労働安全衛生をすべての教職員のものとするための闘いを進めよう!
 ー抵抗なくして安全なし、闘いなくして労働なしー


病気や災害は個人の体質や不注意によって起こるものではない。
 仲間を見殺しにする学校現場があるとするなら、それは人間を育て人間を大切にする社会を作る教育の場とは言えない。
 教職員は、どんなことがあっても自分の責任のように思うのが常である(そのことを責めているのではない)が、教職員自身の責任にすることは誤っている。本当の原因は別にあり、その責任を明らかにしないかぎり、事故や災害は再びくりかえされるであろう。
 多くの事実がそのことを示しているではないか。
細川汀・垰田和史共著「教職員のための労働安全衛生入門」より









すぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案 
                   1997年10月18日
 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生対策委員会 


「教職員のためのいのちと健康と労働」NO11、で副委員長の緊急の訴えが出されました。
 この訴えは、府立校の在職死亡が今年に入って現在分かる範囲でも5名を越えたこと、退職後すぐ死亡している府立校の教職員が少なくないことなどから、緊急対策の提案がだされたものです。
 さらに、京都府立高等学校教職員組合がこの間明らかにしてきた教職員のいのちと健康をまもるための要求に対し、府教委は労働条件の抜本的改善や具体的な手だてを打とうとしていないことに対して再び「厳しい指弾の声明」を出したものです。
 教職員の労働条件改善や労働の上でのいのちと健康を守る責任は、労働基準法や労働安全衛生法上も使用者である京都府教育委員会や事業者である京都府・京都府教育委員会にあることは明白です。
 しかし、彼らがなんら手を打たないからといって、これ以上の死亡者や病休者などを出すことは、どうしても防がなければなりません。
 そのため副委員長は、5点の教職員に対し、緊急の取り組みを提起しました。それをより具体的に提案したのが以下の文章です。
 なおこの提案は、教職員のいのちと健康を守るための提案ですが、京都府・京都府教育委員会の責任を明らかにし、「健康は自己責任」という政府や行政や教育委員会の攻撃を許さない闘いはいささかも手をゆるめることなくすすめて行くことを前提としたものです。


1,からだの調子が悪い、病院にいかんならんなあ、と思っている人、思いながらも病院に行けてない人は、無条件で自分の信頼できる医者・病院に行こう。そして、自分の健康の様子をチエックしよう。また医者から「休むよう」に言われたら必ず休もう。

 寝ていて「途中で目が覚める」「眠れない」「食欲がなくなる」などは、「休め」の合図。内科も精神科も気軽に受診しよう。
 この間府立校の現職死亡や重症の病気、慢性の病気になっている教職員の状況を調べてみると、早く病院に行っていれば、いのちや健康状況の悪化が防げたということが多くあります。
 教職員の健康状況を調べた労働安全衛生研究者から早い時期からこのことが指摘されていました。
 しかし教職員は、府教委などにより長時間過密労働などさまざまなことが「自主的という名を借りた強制」によって、病院に行くひまもないまま自己の健康状況に手が打たれず、自分でどうしようもないぐらいになって病院に行った段階で、手遅れだった、もっと早く治療を受けていればここまで悪化しなかったのに、ということが少なくありません。
 同僚から病院に行くようにすすめられても、「まだ大丈夫や」「休めへん」「時間がない」「自分がいないと教育はどうなるのや、クラスをどうするのや」などのことで病院に行かず死亡した教職員もあり、アドバイスした教職員からは、「無理矢理でも病院につれて行けば良かった」と痛恨の思いの反省の声も聞きます。

 「病院に行こうとすると『見えない垣根』が多くあって、ずるずるとなり、病院に行けなかった。治療を受てから、やっぱり早く病院に行っていれば良かったと思った。早くそのことをみんなに知らせて欲しい。」
 「身体の調子が悪そうだから今日は帰り、あとは心配せんと」
 「調子が悪かったら休み」と話しかけられた仲間の声がうれしかった。」
などの意見も寄せられています。
 仲間として教職員の健康を心配して養護教員部からもこれらの指摘は数多くあります。
 時間が出来たとき、ひまが出来たときと思わず、からだや精神状況が悪いときは、無条件で病院に行きましょう。
 また、病院に通院していても、どうも良くならない、自分の自覚症状と医師の治療があっていない、などと思うことがあれば、病院を変わることもこの間の教職員のいのちと健康問題を考えたとき大変重要であることが分かってきました。
 でも、どこの病院へ行けばよいのか迷ったときは、養護教諭に相談してみましょう。
 迷ったときは、養護教員部が、同じ働く仲間としての立場から健康情報を把握し、相談にのってくれるそうです。
 府高労働安全衛生対策委員会のアドバイザーには、労働安全衛生研究者や医科大学の先生もおられます。その先生からもアドバイスがいただけます。

 2,病気や病気がちの教職員、病気で休んでおられる教職員に対しては、 休んでいる間の職場の保障を府教委や管理職に要求しよう。

 また、病気が 良くなった、と医者からいわれた先生や病気治療で一定期間休んでいた教職員の
職場復帰に対しては、府教委や管理職にリハビリ勤務を要求しよう。
 まわりの教職員は、病気や病気がちや休んでいる教職員へ仲間としての援助を惜しまず、協力しよう。
 病気で休んだり通院するための時間や人員配置は、あきらめることなく仲間の連帯と統一で府教委・管理職に要求しつつ、教職員として助け合い、励まし合いましょう。病気によっては、デリケートな対応が必要な場合もあります。
 その場合は、相談して気配りのある配慮をしましょう。
 そして、「あの人が休むと迷惑する」「自分もしんどいけどがんばっているのに休むなんて」などなどのことは、みんなで話し合い、教職員自身の問題解決にさせられている状況を明らかにし、個人と個人の問題として考えないで、そう考えざるを得なくさせている府教委・管理職の責任として考えましょう。
 その場合は、以下7、の「健康上のプライバシー」を必ず守らせましょう。

3,生理休暇を学習するだけでなく、生理休暇を権利としてとろう。

 女性教職員の異常出産、流産、死産が増えています。
 生理休暇を取っている教職員は、異常出産などが少ないことは明らかです。
 異常出産、流産、死産の予防のためにも女性の健康のためにも生理休暇があります。
 しかし、その権利がほとんど行使されていません。
 すこやかに子どもを生み育てるためにも、元気に更年期を迎えるためにも生理休暇を取ろう。さらに、更年期をむかえた人も生理休暇をとりましょう。

4,食事を規則正しくとろう。「立ち食い」「チョイ食い」をやめて、せめて休んでゆったりした食事と休憩を確保しよう。このことが出来るように府教委・管理職に要求しよう。トイレに行きたいときは、がまんせず行こう。

 また、トイレに行く時間と教職員がいつでも行けるトイレの設置を府教委・管理職に人権問題としても要求しよう。
 養護学校では、教職員の使用するトイレのプライバシーを守る施設にするのは、当然の人権要求。設備の緊急改善を要求しよう。

5,府高労働安全衛生対策委員会のストレッチを労働時間中にこまめにやろう。

 みんなが集まるところやコンピューターの置かれているところや休養室に、労働安全衛生対策委員会作成のストレッチを張り合わせ、意識的に筋肉の緊張をとり身体をほぐそう。
 緊張の連続と身体を使ったときには、ストレッチで、「ホット」一息しましょう。

6,もしも教職員が、病気や災害で倒れたり、死亡したりすることがあったら、直ちに事実を調査し府高本部に連絡しよう。

 府高執行部を呼び原因調査・追求を行い、府教委と管理職の責任を明らかにしよう。
 また病気や災害の原因が府教委と管理職にある場合は、緊急集会や抗議集会を直ちに開こう。そして、多くの教職員や他労組の参加を呼びかけよう。
 教職員の交通事故、病気、自殺などのことも、府高と連絡をとり、府教委などが、事故や災害や病気を個人責任にしたり、責任転嫁したり、労働安全衛生上の問題などがないかなどを検討・調査しよう。
 これは、二度と同じことを繰り返さず、教職員のいのちと健康を守るためにもきわめて重要な取り組みです。

 しかし、労働の上で、災害や病気や死亡などを生み出さないようにする「予防」こそが、労働安全衛生です。私たちは、仲間が災害をうけたり、病気や死亡する事がないよう「予防」を最優先させましょう。

7,府教委や管理職が、教職員の健康状況を悪用したり、他の人に漏らしたり、健康状況を利用して教職員を「おどかしたり」「懐柔したり」「嫌がらせをする」などがあれば、事実と証拠をつかみ、府教委や管理職に直ちに抗議し、闘いをすすめよう。

 教職員の健康状況は、労働安全衛生法上でもプライバシーの保護として制約があり、先進諸国では、本人の了解なしにはたとえ管理職であっても知らせないということは常識の事項。
 使用者側が、労働者の健康状況を利用して管理統制をする事を国際的にも禁じる方向が打ち出されます。

 8,すべての分会に労働安全衛生担当者を置き、府高労働安全衛生の取り組みを成功させよう。

 京都府立高等学校教職員組合労働安全衛生対策委員会「教職員の労働安全衛生衛生問題の政策とその要求実現のために(第1次討議資料)」の分会討議をさらにすすめ、意見や質問や提案を分会労働安全衛生担当者・府高労働安全衛生対策委員会に結集させよう。
 また各種労働安全衛生学習会や他労組の労働安全衛生の取り組みから学びましょう。

9,「教職員の労働安全衛生入門」「安全で健康に働く」をみんなで学習し、意見交流を進め、教職員の労働安全衛生の深い理解を進めよう。

 府高労働安全衛生対策委員会労働安全衛生政策討議資料、京教組養護教員部「教職員のいのちと健康を守る労働安全衛生活動をめざして・討議資料」で討論し、話し合おう。
  「教職員の労働安全衛生入門」「安全で健康に働く」は、今日の教職員の労働安全衛生問題を考える上で欠かせない重要な本です。
  あらゆる角度から学習しましょう。