山城貞治( みなさんへの通信 25)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その4) 定期健康診断について(その3)
北原先生の教職員の定期健診を学習した教職員から次のような報告が寄せられた。
なぜ 定期健康診断が「不定期」になっている
1999年1月、私は定期健康診断が「定期」になっていないことについて、管理職に質問してみた。
ところが、管理職は「定期健康診断は、現行通りでいい。ただし、諸般の都合によるが。」と言い出した。
そこで、「都合とは何かと」としつこく質問したところ、見せられたのが昨年7月13日付で教育長名による各学校長に送られた平成10年度府立学校教職員定期健康診断及びVDT健康診断の実施について(通知)である。
この通知には、検診時期について以下のようなことが書かれている。
「1 検診時期について 学校保健法施行規則第9条の規定により、6月30日までに検診を行うこととなっているが、都合により、当検診は10月中旬から1月下旬までに実施する予定である。」
どうなっている
府教委の通知は6月30日まで健康診断を
実施日程は教職員は12月2日にはじまって1月29日まで
2学期になって府教委から各学校長に送られてきた検診実施日程には、たしかに府立校の定期健康診断(市内、乙訓、山城地区)には、12月2日にはじまって1月29日の府立学校までの日程が書かれている。
健康診断実施時間をみると定時制併設校では、健康診断実施時間が勤務時間外であり、学校によって9時~11時のところと9時~12時のところがある。この違いについて管理職に問いかけてみたが、管理職も頭をひねるだけだった。
学校保健法の教職員の健康診断と言うなら
それも守られていないことが明るみに
教職員の定期健康診断は、労働安全衛生法上で行われていないとはよく言われることであるが、実際は学校保健法上でも行われていない。
学校保健法も守られてのである。
それが証拠に府教委は、学校保健法では、6月中までに実施しなければならない教職員の健康診断を「都合により」出来ないでいると告白しているのである。
人事委員会には労働安全衛生法通り
実際は学校保健法と言いながら…
府教委は、教職員の定期健康診断は労働基準法・労働安全衛生法どうり実施していると京都府人事委員会などに「報告」しておきながら、実際は学校保健法にもとづくものであり、学校保健法上も守っていないためこれまでどれだけ教職員のいのちと健康が破壊されてきたことか、と思わざるを得ないがそれは私の思いすぎなのだろうか。
裁判にまで出ている
京都府立学校の公務災害認定裁判の争点の
健康診断の「要治療の指示」とする主張の根拠はなくなる
定期健康診断及びその結果は、京都府立校の公務災害をめぐる裁判でも府教委側の医師の「医学的意見書」でその「証拠」として使われている。
すなわち
「被災職員の定期健康診断・腰痛検診では、肩凝り腰痛程度のもので、一度も要治療の指示はされていない軽度の自覚症状であり、取り立てていうほどのものとは認めがたい。
これらを総合的に判断したとき、被災職員の業務は決して加重又は過激な業務とはいえないし、劣悪な環境であったともいえない。」
と断定されているのである。
法的に行われていない
健康診断を「証拠」にするなんて
定期健康診断が法的にもやられず、しかも問題だらけなのにそのことを棚に上げて裁判で使われている。
府教委は裁判で定期健康診断を根拠として述べるならば、法を守り定期健康診断としての内容を厳守すべきではないか。
それを抜きに裁判に出すのは、教職員を「愚弄」しているといわざるを得ないだろう。
キチンとやっていない
府教委の定期健康診断後の「指示」
府教委の定期健康診断後の「指示」
そのため「要治療の指示」がどうなっているかを述べてみたい。
私が「定期健康診断」を受けた「検診結果票」には、会ったことも誰かも知らない医師名で「今回の検診の結果」の項目に「要精検」とかかれ、
「・今回の検査項目のうちの検査の結果、疾病の疑いがありますので精密検査を受け医師の指示を受けて下さい。
・今回の検査項目のうちの検査の結果が基準範囲より少しはずれていますので、次回の検査で経過をみます。必ず受検してください。
・上記以外の検査については今回は異常がありませんが、何らかの自覚症状があれば最寄りの医師と相談してください。
・自覚症状が続けば、医師の診察・指導をうけてください。」
と書かれ、(精密検査受診者用)の文章が同封されていた。
精密検査受診者用の文章には、
「精密検査については、第一次検査実施機関において受診することが原則であるが、検診機関への距離等を配慮して……それぞれ次の機関において受診することができる。」
として、7カ所の「医療機関」と各医療機関への「精密検査の実施依頼について」の文章と「精密検査結果票(今後の指導)」も同封されていた。
そして、7カ所の医療機関が「精密検査の結果と今後の指導」を一括して府教委の保健体育課保健係に送付するようになっていた。
だが、これも重大な問題をはらんでいる。
府教委がしないで医療機関などが
健康診断結果による「今後の指導」
さらに、定期健康診断後の「再検査(精密検査)が必要な教職員」への事後処置として府教委は、教職員の労働軽減や健康上の配慮や「指導」を産業医はもちろん「健康管理医」にすら委ねるのではなく、検査機関や特定の医療機関に委ね、そこからの一定の判定を府教委に報告させているが、その報告に基づく、具体的処置が府立校の教職員にどのようになされているかが明らかでない。
検査機関の担当者が データー処理
健康診断を受けて、再検査が必要とされた教職員が特定の医療機関で精密検査を受けてもそれは「本人治療」ということに終始してしまい、多くの場合は、教育という仕事を進めるために「配慮」や「考慮」などされていない。
精密検査の報告(結果)を受けた府教委は、教職員に対してどんな配慮や考慮がされているのだろうか。
精密検査を受けた私の場合は、何らの「指示」も「労働軽減」もなかった。
さらに私は、定期健康診断を受けたときの「問診票」に「現在治療中の病名」などの欄があったのできっちり記入しておいたが、「検診結果」になんら反映されていなかった。
そのため検査機関の担当者に質問してみたところ、「現在治療中の病名などの入力は、別に行うのです。」という返事だった。
現在治療中の病気があってもそれが健康診断には反映されない。
データーが「別の処」で処理されているようなのである。
プライバシー保護などが
一切ない府教委の定期健康診断
このように、教職員の定期健康診断及び精密検査などの一切のデーターは、「何のために、ダレのために」使われているのか教職員に知らされていないのが現状だろう。
健康診断で国際的に一番問題とされるプライバシー保護など府教委の定期健康診断などには一切ないとも言い切れるのではないだろうか。
そうでないと府教委が言うならば、個人のデーターは別にして、府立校全体の教職員の健康診断の結果の概要と教職員のいのちと健康を守る対策を明らかにすべきであろう。
府教委の一部や管理職が、教職員個人の健康データーを極めて乱雑に扱っているし、健康診断のデーターを目的外に「悪用」しないとも言えない。
いや、現にそのことで嫌がらせを受けたという報告も聞いている。
ただただ 驚くことが 書かれている
定期健康診断を受けた検査機関の機関紙
最近機関誌「創健」に私が定期健康診断を受けた検査機関である「京都工場保健会」の医師の記事を読んだ。
すなわち「在職死亡をなくする運動の考え方・進め方」というテーマでの古木勝也医長(工場保健会産業保健部・健康増進部)の講演内容が書かれていのだが、この中で古木医長は健康診断の事について以下のように述べている。
「前述の労働安全衛生法改正の中に『健康診断結果についての意見聴取』の条項があります。
これによると事業者は、一般健康診断、特殊健康診断の結果、所見があると診断された労働者は、その労働者の健康を保持するために必要な措置について、3ヶ月以内に産業医はその労働者が仕事が出来る状態になるのか、さらに検査をすすめる必要があるのかなどを、意見を述べなければいけないことになっています。
また意見欄が設けてありますが、現実問題として健康診断の結果だけで意見が書けるものではありません。
この場合の医師としての意見とは、
その労働者が実際に就業可能かどうか。
就業時間の制限や就業の区分についてはどうか。
作業環境について測定をしていないのなら直ち実施するようにとか、
また施設や設備の改善の必要はないのか、
ストレスの負担を取り除くようにするにはどうすればいいのかなど、
作業の方法や環境の改善意見を書いてくださいということで、この欄には精密検査を受けましょうといった健康意見を記載するものではありません。
そのためには事業場の内容、現場、働いている方のことを詳しく知る必要があります。」
健康診断の結果の欄には「精密検査を受けましょう」
といった「健康意見を記載するものではではない」
と書いている検査機関が、「精密検査を受けましょう」とは
ここに書かれている健康診断後の処置、「意見欄」について述べられていることは、私たち府立校の教職員の健康診断結果とまったく異なっている。
工場保健会の医師が述べている健康診断結果の処置が当然のことならば、府教委の委託を受けて教職員の健康診断を実施している「工場保健会」は、府教委と共に従来の教職員の健康診断方法や結果を根本的に改めるべきだろう。
もしも工場保健会側が、府教委に改善を要求しているのならそのことを明らかにするのは、検査機関としての良識だろう。
ともかく、府教委か工場保健会か、どちらに責任と原因があるのか分からないが、古木医長の述べている健康診断後の「三ヶ月以内の産業医の意見」「意見欄への就業制限や区分、作業環境、施設設備の改善意見、ストレス負担の除去」 はもちろん、産業医が「事業場の内容、現場、働いている方のことを詳しく知る」ことすら、私たち教職員にはなされていないのである。
健康診断は、いのちと健康に関わるだけに重大であると私は考えている。
この他にも、「たばこは吸っていません。の欄に○をした」のに「意見欄にたばこの吸いすぎややめましょうと書いてある。」「アルコールは一切受け付けない身体なので、アルコール類 は呑まない。の欄に○をした」のに「アルコール類は控えましょう。」ということが書いてあった。などの教職員から不満が続々寄せられていた。
このことが書かれた報告の定期健康診断、で重大な問題が生じ、検査機関と府教委は密かに事の処理を行おうとしていた。
そのことが、あとで「発覚」し、教職員の怒りは頂点に達する。
そればかりか、府教委と検査機関の癒着、公費の無駄使い、定期健康診断の根本的問題が表面化する。