2011年7月2日土曜日

健康診断と言えるのかと矛盾露呈  府立学校の定期健康診断


 山城貞治(みなさんへの通信24)

 「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その3)   定期健康診断について(その2)


労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」1997年9月に滋賀医科大学の北原先生に府立学校の定期健康診断についてご意見をいただいた。
 その切っ掛けは、二つの府立学校の教職員からの疑問だった。

「府立学校定期健康診断」
        の通知に疑問続出

 1学期末に各学校では、府教委の「府立学校定期健康診断」の通知が配られていますが、府立学校のある職場ではこの診断をめぐって多くの疑問が校長に提出されています。

 「定期健康診断といいながら、来年の1月末までのばすのはおかしい。それでは検診結果が出るのは2月、3月になって異動期に入る。」
「教職員の健康状況が無視されて強制異動された人も多い。なんのための健康診断か?」
「定時制の場合は、時間外に検診が行われる。行政指導で時間内に検診をするようになっているのに改善されていない。」

健診後の通知に
会ったこともない医師の名前とハンコがある

「労働安全衛生法66条では、医師による健康診断を行われなければならない、とされているのに検診の時はいつも医師がいない。
 検診後の通知には、会ったこともない医師の名前が書かれて、判がつかれている。おかしいではないか。」
「検診後は、個人に通知がくるだけ。
 検診結果で府教委は労働安全衛生法にもとずく労働時間の短縮や作業の変更、学校の施設設備の改善などを行ったことがあるのか。」
などなどであった。

学校でのダイオキシンなどの
 有害物質排出が放置されている

 1997年7月末の京都新聞に学校のゴミ焼却施設からダイオキシンなどの有害物質排出などの記事が載っていた。

 ところが、2学期早々私の学校では、そのことに関係する文部省の7月23日付の「学校におけるごみの処理等について(通知)」と教育長名の通知が配られた。
 私たち教職員の中で、このことでさまざまな議論が交わされている。
学校のゴミ焼却施設の問題は、「教職員の労働安全衛生入門」で細川汀先生が亀岡小学校問題ですでに指摘されている。
 そればかりか、ダイオキシンの発生等さまざまな問題があることは周知のことであったから、府教委は、原則として専門の業者なりに委託して適正な方法で処理するのが筋であろうし、そのための予算を計上すべきである。
 ところが、府教委や管理職が出してきた話は、有害物質の危険性に触れないばかりか、金も出さず、具体的対策を示さず、生徒や教職員の努力のみによってこの問題を解決しようというものである。

ダイオキシンなどの
有害物質に曝された教職員を放置

 さらに今まで有害物質を無防備で処理してきた責任に全くふれていない、また有害物質にさらされたであろう、生徒や教職員や学校周辺の人々や環境を調査もしようとしないで「ゴミの分別」だけでことをすまそうとしている。
 ここに根本的な誤りがあると言いたいし、黙ってはいられない。
 ところで今回の問題での文部省の通知の中で特に気になる部分がある。
「焼却炉の取り扱いは、ごみの適切な処理及び安全管理な観点から、児童生徒に依存することなく適切な者により行うこと。」
というのがそれである。
 適切な者とは誰のことを言っているのであろうか。府教委や管理職から何らの説明もないまま今まで通り教職員にそれをやらそうとしている。
 本意はどうあれ、この部分は

「焼却炉の取り扱いに関して、教職員の安全衛生に関してはどうでもよい」
ということだろう。
 生徒に関しては安全管理の観点から…と「危険性」を一方では書きながら、教職員にはその危険性はあてはまらないとでも言いたいようである。

 教職員の労働安全衛生意識の高まりに逆行するような話が平然と出されてきている、と思う。
 府教委も学校管理者もこのことに何も触れずにいるというのも変だと思う。みなさんはどう思われますか?

 など特に二つの意見に対して、教職員の健康診断について専門研究者の意見を聞きたい、ぜひたのんで教えて欲しいというものであった。

そこで、この府教委の実施する「平成9(1997)年度府立学校教職員健康診断実施要綱」について、滋賀医科大学の北原照代先生からご意見をいただいた。
 以下その要点を掲載する。

強調したいのは 
  大切な「自らの働きかた」を振り返り
      改善していくきっかけ


1,健康診断の意義

 成人病(最近厚生省は言い方を「生活習慣病」と変えました)をはじめとする多くの病気は、一般に年齢を重ねてくると出現率が高くなります。
 健康診断により、体に生じてくる異常を早い段階で発見すれば、病気の予防に役立てることが出来ますし、初期段階の病気が見つかれば手遅れになる前に治療できます。

 また、治らない病気の場合でも進行を遅らせたり合併症を予防することができ、あるいは、日頃全く自覚症状がでない病気が健康診断により発見されることもあります。

 もう一つ強調したいのは、健康診断は、自らの食生活、喫煙・飲酒習慣、運動習慣、そして、働いている皆さんにとって大切な「自らの働きかた」を振り返り改善していくきっかけになります。
 また、医者から結果の説明を受けるときは、「日頃気にはなっているけれど、あえて病院に行くほどのことでもない」と思うことを相談するチャンスです。検査結果の値だけに振り回されず、健康診断を上手に活用してください。

「正常範囲値」とは
 あくまでも検査結果の数値を判断する目安

2,正常範囲値についての留意点
  最近は、健康診断や人間ドックを受けると検査結果の一覧表が受診者に渡されるようになりました。
 その内容は、検診実施機関により若干の差はありますが、受診者の検査結果値と評価(異常なし、要観察、要精検、要治療など)が並んでいて、最後に総合判定が示されるといった形式のものが多いのではないでしょうか。

 自分の検査結果が正常範囲かどうか、当然気になるところですが、各項目ごとに示された「正常範囲値」とは、あくまでも検査結果の数値を判断する目安です。

 血液検査、尿検査、血圧測定などは、検査当日の食事の時間や内容、気温や時刻、またその日の体調(とくに睡眠不足、前日の深酒など)により多少変化します。ですから正常値よりほんの少しはずれただけで「病気だ」と思い悩まないでください。
 かといって、明らかな異常値があるのに放置するのはもちろんよくありません。
 検査結果で不安や疑問に思うことは、遠慮せず医師に相談しましょう。
 検診実施機関により正常範囲値は多少の差がありますが、最近は検査の精度がよくなり差も少なくなりました。

3,各検査項目の意味
(以下省略)
           
労働安全衛生法などの
 「一般健康診断」の項目は法的最低限

 
労働安全衛生法・第66条第1項によると「事業者は労働者に対し、労働省令で定めるところにより、健康診断を行わなければならない」とされており、同法に基づいて行われる「一般健康診断」の項目は別表2(略)のように定められています。

 これは法的に最低限に定められているもので、比較してみますと、「平成9年度府立学校教職員健康診断実施要項」では、以下のような問題点が挙げられるのではないでしょうか。

半年前の尿検査を定期健康診断で行ったとするなんて

1)身長及び体重測定は、どうなっているのか。
 すべての府立学校で身長及び体重測定が行われているわけではないと聞きました。労働省告示第45号では「身長計測は25歳以上は省略可」とされていますが、太りすぎややせすぎをチェックするためには必要で、一般的な健診ではたいてい行われています。

2)健康診断の項目として、胸部レントゲン検査、喀痰検査や尿検査が、記載されていない。

 
聞くところによると、府立学校では、生徒の春の検診時にこれらの検査が行われているそうです。
 要項によると、教職員の健康診断は、「10月中旬から1月下旬までに実施する」となっていますので、半年以上のズレが生じます。
 この点、総合的な健康診断としては疑問の残るところです。
 
 健康診断の結果は、通常、血液検査をはじめとする各種検査、問診そして診察所見を総合的に判断して、受診者にお返しします。
 血液検査で腎機能を示す値が正常でも、尿検査で異常を示したら、再検査が必要です。
 腎臓の病気で血液所見に異常がでるのは、かなり進行してからのことが多いのです。また、肺ガンの初期は血液検査だけでは分かりません。

胸部レントゲン検査、喀痰検査および尿検査は、
教職員の健康診断として他の検査と一緒に行うもの


 もう一つの問題点としては、健康診断の意義のところで述べたような「日頃気になることを医師に相談できる機会」という観点から見ると、医師としてはアドバイスしにくい面がでてくると思います。
 例えば「最近咳が続いているので心配」とか、「尿量が少なくて気になる」と相談された場合、胸部レントゲン検査や尿検査をしない診断結果からは、結局「近くの病院で検査を受けて下さい」と言うしかないのです。
 以上のことから、胸部レントゲン検査、喀痰検査および尿検査は、教職員の健康診断として他の検査と一緒に行うのが望ましいと考えます。
 なお、各検査の意味は以下の通りです。
  胸部レントゲン検査、喀痰検査 胸部レントゲン検査、喀痰検査は、肺ガン、結核など肺の病気を発見するために重要で、基本的な検査の一つです。
  尿検査 尿検査は、感染症、糖尿病、泌尿器系(腎臓、膀胱)疾患、肝臓病、子宮疾患などさまざまな病気の時に尿の異常が認められます。
 簡単に検査でき、かつたくさんの情報が得られるので重要な検査の一つです

問診や医師の診察が
   ない健康診断がされている

3)問診、聴打診が行われているか不明です。
 要項を見る限りは、問診や医師の診察がないということでしょうか?

 健康診断において医師による診察が行われるのは当然のことで、問診や診察は「検査」でないから書かれていないだけなんでしょうか。
 VDT健診には検査項目の中に「1)問診」という記載がされているのですが………

 ところが、この北原先生の意見を知った府教委はびっくりしたらしい。