2011年7月20日水曜日
難しい課題 個人差を十分配慮する区別と統一性 快適職場環境は描くものではない
山城貞治(みなさんへの通信44)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その24)
情緒的・精神的なゆとりとうるおいを
だいじにする個人差の配慮
学校がよみがえる労働安全衛生( 辻村一郎・川上雅詮 編 文理閣 )は、1998年11月に作成され、府高全組合委員に配布された。
その本の中で辻村一郎先生(当時 同志社大学教授)は、「生きいき働き続けられる学校にするための労働安全衛生活動」の項で、快適職場環境を形成するためには、
「継続的・計画的に職場を改善することや労働者の意見をよく聞き、さらに個人差を十分配慮すること(例えば、部屋全体に暖房が入っていても個人によって寒いという訴えがあれば、その人の側にスポット暖房を置くなど)、情緒的・精神的なゆとりとうるおいをだいじにする」
事を強調されている。
快適職場環境は、オフィスなどを想定して考えられているようで、学校のように夏や冬に使わない建築構造によって、快適さは、大きく異なる。
ところが、近年、教育委員会などは教職員の勤務には夏休みも冬休みもない、と言い、ヨーロッパの労働と真逆な方向を打ち出してきた。
冷暖暖房など必要なかった時代に
建てられた学校建築上の苦悩
そのため、学校にクラーや暖房が入れられたたが、全館冷暖房でないため、教室と廊下の温度差は極端な違いとなり、労働安全衛生上の外気温の差が15度は絶えず生じ、それによる健康を害する生徒や教職員も少なくなかった。
例えば、夏。冷房27,8度の教室からから34,5度以上の廊下や通路を通ってまた冷房27,8度の教室の教室へという移動のくり返しは、生徒以上に慢性病の教職員はもちろん自律神経の失調を産みだした。
逆に冬は、暖房26,7度の教室からから0度もしくはマイナス1,2度以上の廊下や通路を通ってまた暖房26,7度の教室の教室の教室へという移動のくり返し。
管理職が口うるさく言う学校では、その温度差はもっとひどくなっていた。
労働安全衛生上の「外気温」と「室内温」の差
A校では、労働安全衛生上「外気温」と「室内温」の差がなぜ強調されているのか、を教職員に知らせ体感温度と湿度との関係を知らせた。
各教室には、温度湿度計、職員室には温度湿度計と最高温度最低温度計がおかれ、教職員が絶えずその変化を解るようにした。
そして、職員室の冬場の暖房を大幅に改善するように要求した。
それまでむき出しのガスストーブで、少なくない教職員が服を焦がしたり、ガスストーブの上においていた大きなやかんを置く習慣は危険であること。
そのため、せめて職員室をガスファンヒーターにして換気扇を増設し、こまめに調整するように改善をと文章で校長に申し入れた。
これも事務部の人々の努力で年次改善が図られたが、「足が冷える」という声も出てきた。
そこで、職員室の気流を調べたり、床面から順次天井までの温度を調べると、床面になぜか冷風が北南に流れていて職員室の空気がうまく循環していないことが解った。
そのため苦肉の策として、各机の間に仕切りを作るなどしたが、冷房も同様のことが起きた。
業者が驚いた
外気を取り入れる換気口などの設備がない部屋
換気扇を取り替えに来た業者は、
「先生、この学校の部屋おかしいです。普通なら必ず空気の取り入れ口が各部屋に作られているが、それがまったくない。」
「だから、部屋を閉め切ると換気扇のモーターに負担がかかり、寿命が短くなるんです。」
と言われて、夏冬とも空気の取り入れのため部分的に窓を少し開けて空気を取り入れるよう、教職員に説明したが、それでもともかく窓を閉める教師、窓を大きく開けたまま帰宅する教師などさまざまで、 個人差を十分配慮すること、ではなく、個人の意思尊重になってしまったりした。
教職員の間では、個人差を十分配慮する区別と統一性が難しく、それは教育でも同じではないかという意見が出た。