2011年7月29日金曜日

アスベストの危険性と安全対策より マスコミ対策を優先し 生徒・教職員・府民の健康安全を考えない教育委員の責任はどこへ


山城貞治(みなさんへの通信52)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その32)


 1986(昭和61)年6月京都府議会で、「子供たちが義務教育の9年間、さらに高校、大学までの16年間にわたって、現に多くのアスベストが使用されている学校でこれを吸い続けているとしたら、10年後、20年後、肺がんの大量発生が予想されるわけで、空恐ろしい限りではありませんか。多くの学校現場で、廊下のPタイルや壁が破れているのを見かけますが、これらの改善は即刻急がなければならないと考えますが、教育長の御所見を伺います。」という質問に対して、教育長は、「教育委員会の関係でありますが、アスベストにつきまして、府の教育委員会におきましては、現在学校とか廊下ではこのような材料は使用いたしておりません」と答えていた。

20年前に府議会でアスベストは使用していないと答弁したのに
アスベストが見つかった時のあまりにも短い教育委員会会議


 ところが、2005年8月24日京都府教委は府立学校3校でアスベストが吹きつけられているのを確認したと発表。
 翌日の25日開かれた会議録では、わずか1時間9分の第1回京都府教育委員会会議で、アスベスト問題が報告されている。
 各教育委員の指導を受けることなく、教育行政スペースで会議が進められていることが良くわかる。
 近年、その内容が明らかにされたので掲載する。
   
イ 府立学校等の吹き付けアスベスト調査(第一次調査)の結果について
【報告】
管理部長(注:府教委管理部長)から府立学校その他教育委員会所管施設におけるアスベスト使用状況調査を実施した結果概要について報告された。
 府立学校については3校で吹き付けアスベストが確認され、17校でアスベスト含有の疑いが強い建材が確認されたこと、アスベストが確認された府立学校については夏休み中を目途に飛散防止工事が完了予定であること、アスベスト含有の疑いが強い府立学校についてはサンプル採取による成分分析調査の結果を待ち必要な安全対策を行う予定であること。また、府立学校以外の所管施設においては吹き付けアスベストは確認されておらず、府立学校と同様に成分分析調査の結果を待ち、必要な安全対策を行うこととしたい旨の報告があった。
【意見等】
 マスコミでも大きく取り上げられているが、生徒が不安にならないよう安全対策についてはしっかりと調査等を行っていることを伝える必要がある。
 アスベストは飛散すると危険ではあるが固定されていれば危険なものではないところから飛散防止処置を適切に行えば安全であり不安を持つ必要がないので、十分調査の上、必要な処置を早急に行うこととの意見集約がなされた。

たったこれだけで終わっている。

生徒・教職員・学校周辺・府民のアスベストの危険性
と安全問題がほとんど論じられることもなく終了

 アスベストの深刻さや生徒・教職員・学校周辺・府民への安全問題がほとんど論じられることもなく、「生徒が不安にならないよう安全対策についてはしっかりと調査等を行っていることを伝える」だけで終わっているのが京都府教育委員会の最高会議なのである。
 ここには、1986(昭和61)年6月京都府議会での教育長の答弁誤りや反省やなどはみじんもない。

府立学校でアスベストは絶対飛散しない
 と考えていた教育委員

 「アスベストは飛散すると危険ではあるが固定されていれば危険なものではない」という考えの誤りは、すでに1986(昭和61)年6月京都府議会で指摘されている。
 学校の建物・機器で、損傷やひび割れや故障などは日常的にあるもので、その修繕・改善がほとんどの府立学校から提出されていることすら無視して会議は極めて短時間で終わっている。

府立学校で、吹きつけアスベストが続々と見つかる

 しかし、その後、「アスベスト(石綿)使用状況調査をするのか。設計図書の点検と職員の目視による調査」だけでも続々とアスベスト使用が見つかり報告され府教委は追加報告を続々とすることになる。
 A高校では、2回目として府教委は、アスベスト吹きつけで最もアスベストが多く見つかった学校としてマスコミに報告した。そのためマスコミ各社が押し寄せる大騒ぎになり、新聞・テレビに報道される事になる。

アスベストが飛散しないための緊急措置とその後の措置
















 その直前、校長(衛生委員会議長)から衛生委員会を開きたいとの要請があった。
 衛生委員会では、衛生管理者(事務部長)から本校で一番古い棟(校舎)のあまり使用されない教室(旧特別教室・旧商業科タイプ室)の黒板上部の一部で吹きつけアスベストが見つかった。(青でラインを引いた部分)他の教室では見つかっていない。府教委から報道各社に発表される予定である、との報告があった。


アスベストの有無という 大変責任が重く
    困難な調査を事務部にやらせる府教委

 そのため衛生委員から
「どのような方法で見つかったのか」
と言う質問に対して、衛生管理者(事務部長)から

「府教委から設計図の点検と職員の目視による調査の指導があり、多くの設計図書の点検と全校舎や天井裏などあらゆるところを見て回って調べた。その結果、それらしいところがあると報告」「その後、業者が来てサンプル(赤い←)を採って調べたところアスベストが見つかったとの報告を府教委から受けた。」

と言う報告だった。そこで矢継ぎ早に質問が出た。そして次のことが判明した。

・調査はその学校の事務部が「設計図書の点検と職員の目視による調査」をするように指導があったこと。
・設計図の点検といっても改修・修理などくり返しているので膨大な設計図を調べなければならなかったこと。
 設計図には、どのような建材が使われているか書かれておらず、目視による調査に頼らざるを得ず大変苦労した。今回発見された教室の一部分は、壁が一度も改修されておらず上部のみ埃がくっついて見た目では区別がつかず、念には念をと思い報告したところアスベストが見つかった。
 なぜ、あの、面積の少ない部分のみに吹き付けアスベストがあったのか、あまりにも過去のことで調べる事が出来なかった。
・府教委からは今のところ何の指導がないが、教室を閉め、使用しないようにしてある。教室の配分はこの会議後教務に変更してもらう。

と言うようなことであった。

ともかく教室すべてを覆い アスベストが飛散しないように

 そこで衛生委員から
「教室のあらゆる隙間を目張りなどして完全に締め切って、教室外に漏れないようにすること。」
「教室の前を通らないようにすること」
「報道各社が来ても、閉鎖を解き、前回発表されたときと同じように教室に入れるなどすると閉鎖した意味がなくなるから閉鎖された教室を見せるだけにすること。それは、報道を断るのではなく、危険なアスベストが見つかり飛散を防ぐためである趣旨を説明すること」
「生徒・教職員・保護者に事実を知らせ、立入禁止を徹底すること」
「明日、再度時間をつくつて衛生委員会を開くこと」
ということで、会議は終わり、教室外側から空気の流通がないようにした。

 しかし、府教委は、吹きつけアスベストが府立校で濃度が一番高かったのがA高校と発表したためマスコミ各社が、A高校のみに押し寄せることとなってしまった。