2011年7月15日金曜日

いのちがけで労働者のいのちと権利を守る労働基準監督官


山城貞治(みなさんへの通信40)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その20)


労働者のいのちと権利を守る最前線から労働基準監督官
からみた学校現場  講演要旨

 ILO81号条約の労働監督の第12条では、労働監督官の権限が書かれている。立ち入り検査、調査、検査又は尋問、物品の収去。

労働基準監督官の権限
立ち入り検査、調査、検査又は尋問、物品の収去とは

 立ち入り検査は、労働基準監督が工場に行って、「今日は、これこれのことでしたんですが」と訪れる。
  「健康診断はやっている」「ちょっとその個人票を見せてください。」などと調査は尋問する。
 書類の提出、収去は、問題のある書類などを持って帰ること。
  ILO 81号条約の第13条には、強制措置をつかさどるとなっている。
 そして命令の権限があるとなっている。

 第16条では、「事業場に対しては、関係法規の実効的な適用の確保に必要である限りひんぱん且つ完全に監督を実施しなければならない。」となっている。

法規に違反するものは
 事前の警告なしにすみやかに司法上の手続き

 日本の労働基準監督官は、人数が少なく頻繁に事業場に行けない。
 第17条では、「労働基準監督官によって実施を確保されるべき法規に違反し、またはこれを順守することを怠る者は、事前の警告なしにすみやかに司法上の手続きにされる。」となっている。
 これが司法警察の役割。
 第27条では、「労働監督が実施を確保すべき仲裁裁定及び労働協約を含むものとする。」と書かれているが、外国の労働監督官は中央労委・地労委の役割をしている場合がある。
 単なる監督だけではなくて、労働者と使用者の間に立って話をつける。
 そういうことができる労働監督官の制度が外国にはある。
 以上のようにILO81号条約に基づいて日本の労働監督制度がある。

労働基準監督官は、事業場・寄宿舎その他の付属建設物に
臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、
又は使用者もしくは労働者に対して尋問を行う

 日本の労働基準法では、第11章で監督機関が書かれている。
その第101条では
「 労働基準監督官は、事業場・寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者もしくは労働者に対して尋問を行うことができる。」
などの労働基準監督官のの権限が明らかにされている。
 さらに、監督機関に対する申告ということが書かれている。
 第104条には報告等ということが書かれている。
 労働安全衛生法では第100条。

 京都府人事委員会に各学校現場が、健康診断の結果を報告していない、災害報告がされていない、ということがあるが労働基準法や労働安全衛生法では報告をしなさいということが明らかにされている。 
 定期監督、災害時監督、申告監督、災害調査、再監督、調査、許認可、司法、集団指導投入を主な仕事を労働基準監督として行っている。

連絡もなしに飛び込みで事業所を訪れるのが「定期監督」

 定期監督とは、労働基準監督署が一定の問題意識を持って「こういうところを監督しよう。」と考えて、12月から準備をし4月から監督を行う。
 こういう決められた計画的な監督を定期監督という。
 定期監督はありとあらゆる業種に行く。
 建設現場、大企業、何千人というを大きな会社、小さいところは場合によって監督署に呼ぶ。いろんな方法がある。
 京都には2,000人ぐらい働く人がいる事業所がある。
 そういうところは6人の労働基準監督官が行く場合があるが、ほとんどの場合1人の労働基準監督官が事業所を訪れる。
 連絡もなしに飛び込みで事業所を訪れる。
 そうすると守衛さんが「どなたですか」と聞く。
 「監督署です」「約束をされていますか」「約束はしていません」
そこから始まって、総務課に行ったりして、定期監督が行われる。
 京都府人事委員会のように1カ月前に府立校などに連絡するようなことはしない。
 突然行くのが定期監査
 「 今度1カ月後に行きますから書類を作りなさい。」そんなことは言わない。 だから、定期監督に行くと事業所の部屋の中は書類でごちゃごちゃになっている。
たまたま行くことが分かっていると事業所は大変きれいになっている場合がある。
 みんなは仕事をしているのにうかがピカピカ。
 ある企業では労働者から「掃除をするのが大変や~」という苦情があった。
 それほど監督は企業にとって大変なことなのだ。

「労働時間の違反があります。」「有給休暇がとれません。」に対する申告監督

 申告監督とは、
 監督署に
「労働時間の違反があります。」
「有給休暇がとれません。」
などの相談がある。電話で1月300件以上の申告がある。

 「電話ではとても話してよういられないので、労働基準監督署に来てほしい。」ということになるが、実際に労働基準監督署に来られるのは1月30件ぐらいになる。
 そこで調査に出ると、暴力団関係の人が出てくる場合がある。

119の連絡と
同時に災害の発生状況を見に行くのが労働基準監督官

 災害時、監督は、災害があったときにその災害の発生状況を見に行く。
 首が飛んでいたり、手足がとれていたり、血が流れていたりする。
 エレベーターに首がはさまれて死んでいた災害現場に行ったとき、首がエレベーターの上に乗っていたという場合もあった。
 救急車は人が死んでいる場合は、そのままにしてすぐ帰る。
 現場検証。 田舎にいくほど労働基準監督官が行くのが早い。
 119番があるとすぐ労働基準監督署に「只今は労災事故発生。」と連絡が入る。
 警察も消防署も早く労災事故のことを知らせてくれる。

 だから事故現場で死体を見る場合が多い。
 京都のような大都会になるとそういうことはない。
 災害時監督をしていると、労働基準監督官自身が死にそうになる場合もある。
 それは、高いところの労働災害を調査していると、もともと危険な場所ー手すりがない、安全装置がされていないーで、調査をする。
 そのため何度も落ちそうになったことがある。

 労働基準監督官の出す
  是正勧告書、使用停止等命令書、指導書

 以上のような監督を行った場合、是正勧告書、使用停止等命令書、指導書などを出す。
 是正勧告書は、こういう違反があるから改めなさい。 使用停止等命令書は、ILOの命令ができるということに基づいて使用を中止しなさい、作業中止しなさい、と指導をする。 そこまで行かない場合は、指導票で指導する。

 京都府人事委員会の書類を見ると、労働基準監督署と近いような書類を使っている。

「最低賃金が払えないから」などの 調査、許認可制度

 次に調査、許認可制度があります。
 大きな賃金不払いがあった場合、会社が支払われない場合に「賃金立て替え払い制度」という国の制度がある。そういうことを調査する。
 また教職員に大きな関係がある、
 宿日直、一斉休憩、解雇予告除外認定、最低賃金適用除外などの許認可がある。
 現業職の場合は、解雇予告除外認定も関係してくる。
 最低賃金適用除外などの場合は、養護学校の生徒たちが事業所に働きに行く段階で、職安を通じるけれども「最低賃金が払えないから」というお話しが出てくる。
 そういうことなどを労働基準監督署が調査・許認可する。
 集団指導は、企業や労働組合の幹部が集まっているところで労働基準法や労働安全衛生法の話をすること。
 労働基準監督官は、一般の人が知らない労働監督のいろいろなことを経験しているがそれを感じなくなってしまっている傾向がある。

人事委員会への調査・事業場調査台帳などのウソは犯罪

 学校現場の状況については、京都府人事委員会が府立学校に立ち入り調査をした結果「指摘事項」を府教委が明らかにしたものを見た。
 またそれをまとめた府高労働安全衛生対策委員会の資料も読んだ。

 36協定、休憩の問題、衛生管理者、健康診断を報告、安全衛生委員会の問題、傷病報告、ネズミ・昆虫の駆除の順番で京都府人事委員会からの違反指摘事項が多い。
 36協定がない、休憩がない、休憩の自由を利用ができない、これらのことは教育現場にあることは聞いていた。
 昼休みにも指導がある、いつ休憩かわからない、などのことは聞いていた。 そういう中で京都府人事委員会の調査、毎年の事業場調査台帳などにウソが書かれているらしいと聞いた。

信じられない見てもわかるようなウソを書くこと

 自主点検という仕事のやり方がある。
 まさに自分で点検するというやり方である。
 全部の事業場を回れないのであるところを選んで「あんたとこどんな状況か調べて出して」と点検するやり方である。
 その方法と京都府人事委員会がやっていることとほぼ変わらないと思う。
 労働基準監督が見てみれば、ウソを書いているか、ホントの事を書いているか分かる。
 京都府人事委員会がどう考えているか分からないが。普通は、ウソかホントかすぐわかる。
 京都法人委員会の事業場調査は、労働基準法に基づいて行っているのではないだろうか。
 そうなると、虚偽の報告をすると犯罪になる。
 労働基準または労働監督制度を維持するためにウソを言うとそれが罪になる。
 だからウソを書くこと自身が信じられない。
 だれが見てもわかるようなウソを書くことは信じられない。(つづく)