2011年7月6日水曜日

企業にやとわれた産業医の実態を知ることになる 事業者の行う健康診断の拒否権とその後の事務処理


山城貞治(みなさんへの通信28)

「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
 政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか       (その7)


  健康診断を他の医療機関で実施した
    (拒否権を行使した)教職員には

府高 労働安全衛生対策について
(3)教職員の健康診断等については、……
健康診断を他の医療機関で実施した(拒否権を行使した)教職員には、その医療機関に府教委が実費を支給するよう要求する。時間外健康診断は不当なものであるので改めさせる。
 以上の点に立って健康診断が受けられない教職員をなくす。


 の項目の「健康診断を他の医療機関で実施した(拒否権を行使した)教職員」については、府教委や管理職、教職員にも理解されにくかった。
 この項目は、
労働安全衛生法の(健康診断)第66条の 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
5  労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

の項目を具体化したものであった。

先進国の労働医は中立公正は当然とされるが

 この項目は、日本では意外に知られていないが、産業医(他国では労働医など呼ばれる場合がある。
 フランスなどでは、労働医の資格や中立性は日本よりはるかに厳格である。)が事業者側に雇用されるため企業側の利益を考え、労働者側の健康を損なう危惧がある。
 また、医師・産業医の選定権は企業にあるため企業側が、労働者の健康を重視する産業医を選ばない場合が充分考えられる。
 そのことと関連して、健康診断が企業側の指定した医療機関であるため労働者が不利益を被る事があるという労働安全衛生法成立時の国会の応答を重視したからである。
 事業者の健康診断に対する拒否権を明示したものであった。
 そのため
「他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。」の「健康診断費用」「証明書面」は、結果的に教職員の自己負担になるため
「府教委が実費を支給するよう要求する。時間外健康診断は不当なものであるので改めさせる。」としたものであった。

健康診断を受けられなかったら
 人間ドックの結果を提出すれば  と言った校長の波紋

 この法文があることが知らない教職員が多く、労働安全衛生委員に「慢性疾患でいつも行く病院で証明書をもらっていいのか。」と聞きに来る教職員は多かった。
 その場合は、「規定による健康診断に相当する健康診断」の項目を知らせ、医者に追加検査を行ってもらい必ず「証明書面」を管理職に提出するように説明した。
 ところが、少なくない府立学校の校長が「健康診断を受けない人は、共済などの人間ドックなどの検査結果票を提出して下さい。」と説明したものだから混乱が起こった。
 府立校では事務部長のほとんどが、衛生管理者(この問題は別途説明)の資格を持ち、人事委員会に年度末になると「健康診断報告」なる詳細な「報告書」を提出しなければならなかった。
 そのため人間ドックの結果報告書には、「規定による健康診断に相当する健康診断」項目がないものも少なくなく、人事委員会から労働安全衛生法第66条の5に該当しないので、「健康診断を受けたことにならない。」と指摘、指導された。

人事委員会から労働安全衛生法の
   (健康診断)第66条違反を指摘されて
             頭を抱え込んだのは事務部長だった

 そのため、真面目な衛生管理者の資格を持つ事務部長は、人間ドックを受けた教職員で健康診断項目の受けなければならない検査の抜けている部分だけを病院に行って検査するように個々の教職員に話をしなければならなくなった。

 ところが、「校長の話と違うではないか。」「また病院に行くのか。なぜか。」と言われて多くの時間とストレスを抱え込んで悩むという相談が労働安全衛生委員のところに寄せられたりした。
 また、年々、人間ドックを受ける教職員が増え、人事委員会への報告が煩瑣になっていることも報告された。

人間ドック過信はダメだ

 そこで、他企業の産業医をしている学校医に相談を持ちかけたところ、人間ドックは万能ではなく、過信してはいけない。
 検査結果の読み取り・分析ミスで「異常なし」とされた人が数ヶ月後に癌で死亡した例が少なくないことなどが話された。

 一番いいのは、まず調子が悪い、いつもと変だ、からだがおかしい、などと感じたら、まず、すぐかかりつけ医師のところで診てもらうことが大切と言われたとのこと。

他企業の産業医をしている学校医
が自然に行った言葉は
府高のすぐにもできる労働安全衛生九つの緊急提案

1,からだの調子が悪い、病院にいかんならんなあ、と思っている人、思いながらも病院に行けてない人は、無条件で自分の信頼できる医者・病院に行こう。そして、自分の健康の様子をチエックしよう。また医者から「休むよう」に言われたら必ず休もう。
を言われたのである。

 そこで、府高労働安全衛生委員は、今まで出した労働安全衛生対策委員会ニュース「教職員のいのちと健康」を「読んで下さい。」と衛生管理者資格を持つ事務部長に見せたところ綴じて何度も熱心に読んでいたとの報告はあった。

 適当な衛生管理者資格を持つ事務部長は、健康診断未検者として処理したため府立学校では、健康診断の未検者がゼロのところと、数人のところと、数十人のところがでて、再び人事委員会から労働安全衛生法に基づく健康診断を受けさせていないという指導がなされた。

大企業の診療所の産業医が
      公務災害認定反論に出てくる姿

 企業が選んだ産業医の立場の問題は、府高が取り組んでいた公務災害認定裁判で府公務災害支払基金から反論として、大企業の診療所の産業医が証人として出てきた。
 その証言内容を知った人々から企業の思惑通りのことをする産業医の実態を具体的に知ることになる。

健康診断を他の医療機関で実施した(拒否権を行使した)教職員には、その医療機関に府教委が実費を支給する。
ことは、いまだ実現していない。