2011年7月3日日曜日
巻き上がった 健康診断の重大ミスを隠し続ける府教委を 絶対許すなと教職員の声
山城貞治(みなさんへの通信26)
「教職員の労働安全衛生問題の政策とその実現のために 第1次討議資料」の実現した事項(1997年から2006年までの約10年間)
政策「労働安全衛生対策について」はどれだけ実現したのか(その5) 定期健康診断について(その4)
多すぎる「養精密検査者」に疑問の声が続々
1999年。ある学校では、1月に入って以降「要精密検査者」が定期健康診断の受診者の約50%あり、教職員から「この検査結果は、おかしくないのか…」との意見が府高労働安全衛生対策委員会に寄せられた。
半数近い教職員が「要精密検査」という結果が出たことはなかった。
「検査結果は、府教委になされていたはずである。でも、なぜそのことすら府教委が考えなかったのか」
またあるある学校では、管理職が、
「今回要精密検査が昨年に比べて極めて多い。ぜひ、再検査を受けてほしい。」
と言った。
このため府高労働安全衛生対策委員会は、府高本部に報告し、京都府下、他教職員組合の状況を調べ、取り組みをすすめてもらった。
「異常がない」のになぜ 「要精密検査」という病院
その結果、1999年1月下旬に行われた教職員の定期健康診断で、600人をこす医療ミスがあり、京教組をはじめ3教組が府教委に緊急質問を提出。
医療ミスの原因とその対処、教職員の健康診断の基本的改善を強力に申し入れた。
府高労働安全衛生対策委員会調査では、府立校の少なくない教職員が医療ミスによる健康診断結果、「要精検」通知により病院に行ったところ、病院から
「異常がない」
と言われて
「おかしいと思っていた。」
などなどの声が寄せられている。
府教委は、医療ミスがあった事実を教職員に知らせることなく、工場保健会・中央診療所・予防医学センターの3つの検査機関と相談し、医療ミスのあった教職員に対して「再検査」を行っているが、それから2ヶ月をこえたも50人をこえる教職員の「再検査」が「放置」されたままになっている。
今回の教職員の定期健康診断で起きた「医療ミス」は、従来から言われていた教職員の健康診断の根本的問題点をすべて含まれている。
今後、事実が判明次第、府教委の法違反、医療ミスかくし、などのすべてを明らかにして行きたいと府立学校教職員全員に知らせた。
教職員組合連名で健康診断問題について府教委に質問状
1999年5月18日
京都府教育委員会
委員長 武田 盛治 様
京都教職員組合
執行委員長 大平 勲
京都府立高等学校教職員組合
執行委員長 川上 雅詮
乙訓教職員組合
執行委員長 湯浅 暢子
亀岡教職員組合
執行委員長 平田 敬
平成10年度教職員定期健康診断に関わる第一次質問書
日頃京都の教育の充実・発展のためにご尽力いただいていることに敬意を表します。
さて府教育委員会は昨年10月から本年1月にかけて、平成10年度市町村立学校及び府立学校教職員の定期健康診断を実施しました。この中で1月下旬に実施した健康診断について、医療ミスが生じ、間違った診断結果が教職員に報告されました。
そして結果的に年度末の極めて多忙でかつ人事異動を控えた3月中旬という時期に、相当数の教職員が再検査を受けざるをえない状況となりました。
また誤った診断結果により教職員により教職員に不安と動揺が生まれ、病院に行き受診する教職員も少なからず出ています。
この間私たちは府教育委員会に対し、教職員の定期健康診断を適切に行い、その内容を充実すること、事後措置などは「法」に基づいて行うことなど、教職員の健康管理について万全を期し、使用者としての責任を果たすよう強く求めてきたところです。
しかし、今回の医療ミスの発生、誤った診断結果の本人への報告など、本来あってはならないことが生じています。
つきましては今回の健康診断に関わる問題について、以下のとおり質問しますので誠意ある回答を文章で求めるものです。
あわせて今後二度とこのような不祥事が起こることのないよう申し入れるものです。
質問事項
1,健康診断で医療ミスが発生した原因はなにか、医療ミスが判明した時点で府教委及び検診機関はどのように対応されたのか明らかにすること。
またトラブルが発生した健康診断の実施日時・実施会場・受診人数及び誤った検診結果によって再検査を必要とした人数を明らかにすること。
2,再検査について検診機関から教職員に「健康診断の再検査のお詫び」が出されていますが、主な実施主体である府教育委員会は医療ミス・再検査についてどのように判断し、地教委・学校長及び教職員にどのように連絡・指導をしたのかを明らかにすること。
3,再検査について血液検査項目中の「A/G比」のみの検査なのか、血液検査全体をやり直したのか、また校務などによって再検査を受けられなかった教職員の対応はどうされたのか明らかにすること。
4,教職員の健康状況(健康診断の結果など)が人事異動にあたって考慮されてなければなりませんが、今回の場合、どのように考慮されたのか明らかにされること。
また今回の件で検診機関の「外注」という問題もプライバシー保護上重大な問題点がありますが、教職員のプライバシーをどのように厳重に保護されているのか明らかにすること。
許されなかった 府教委の「一片の文」の「一定の説明」
ところが、これに対して、府教委は、1999年5月18日付の京教組・府高・亀教組・乙教組の「平成10年度教職員定期健康診断に関わる第一次質問書」及び再質問に対して、6月14日京教組を訪れ「一片の文」をもとに「一定の説明」を行った。
しかし、府教委の態度は、府立校教職員に対する定期健康診断の実施責任と各市町村教委の実施する教職員の定期健康診断に対する「実質的計画・さい配」を行っている責任ある立場にあるとはとうてい思えないものがあまりにも多すぎた。
定期健康診断は、教職員のいのちと健康に直接関わり、職業病を予防するだけであるばかりか労働条件に直結するものである。
さらには、学校現場で不健康な状況を除去し、快適職場環境をつくりあげて行く基礎となるものである。
そのため今回の教職員の定期健康診断における医療ミスは、たんなるミスだけですますことは出来ない重大性がある。
再検査を指示した日が
府教委が「検査ミス」を初めて知ったと言い逃れ
府教委は、定期健康診断の医療ミス問題を1999(平成11)年3月8日に検診協力会(京都予防医学センター・京都工場保健会・京都健康管理研究会中央診療所)からの報告で知ったとしている。
しかし、この事実関係に少なくない疑問がある。
検診協力会の3つの検査機関は、3月中旬に教職員各位としてそれぞれ「健康診断の再検査のお詫び」「教職員健康診断について(お詫び)」などの文章を該当教職員に届けている。
その中で京都健康管理研究会中央診療所のみが
「3月8日に京都府教育庁保健体育課と協議させていただいたところ、当日受診していただきました全員を対象として再検査を実施し、健康診断結果を再提出させていただきます。」
と府教委との協議を明らかにしている。
他の二つの検査機関は、なぜかそのことにふれていないのである。
すなわち3つの検査機関の文章を読む限り、京都健康管理研究会中央診療所が、府教委保健体育課と協議し、府教委保健体育課が3つの検査機関に「再検査を実施するよう」指示したとしか考えられない。
府教委が3つの検査機関と「協議」したのが、3月8日であるとするならば、府教委は、3月8日以前に今回の医療ミスを知っていたことになる。したがって府教委は、医療ミスを3月8日に知ったという「事実」には疑問が残る。
健康診断に責任を持たず
検査機関に責任を委ねる
しかし、最大の問題は定期健康診断の医療ミスを知った段階でも、府教委保健体育課は再検査実施を3つの検査機関に委ねるだけで事を済ましていたことである。
府教委は、定期健康診断を実施する責任ある立場から
①教職員に医療ミスが起きたことの事実を知らせる。
②再検査の呼びかけと教職員が受診できる保障
③医療ミスの原因と今後の予防などを何ら明らかにしなかった。
逆に問題を検査機関の責任にし、定期健康診断の実施責任をはたそうとはしなかったのである。
このことは、府立校や各市町村立校の教職員が定期健康診断に関わる医療ミスを何ら知らされていなかった事を見ても明らかである。
現行定期健康診断のシステムをよく調べてみると各検査機関が市町村ごとに割り振られていること、府立校の場合は、検査日程が長期に分散していることから、たとえ医療ミスが起きても教職員がその全容を知る事は出来ないのである。それだけに教職員の定期健康診断の全容を知る立場にある府教委の責任は重い。
だが、今回の医療ミス問題を事実に即して調べて行くと、府教委は今回の医療ミスの全容を教職員が知り得ないだろうと考え、内々で事を済ませようとしたことが分かってくる。
健康診断結果の全容を知る府教委は
健康診断結果さえ見ていない
府教委は、3月8日に検査協力会の報告をうけ医療ミスがあったことを初めて知った日のように報告している。
だが、府教委は、検査協力会の報告をうけるまでもなく、今回の医療ミスを知ることが出来ていた。
府教委は、昨年10月から本年1月末にかけて行われた定期健康診断の結果を各検査機関から報告をうけていたはずである。
その定期健康診断結果報告を見れば、明らかに「特定の学校」や「特定の地域」「特定の検査日」であまりにも要精密検査者が多すぎることを知ったはずである。
ある学校では、要精密検査者が定期健康診断の受診者の約50%近い数値が示されており、それを見れば要精密検査者があまりにも多いことに気付いたはずである。
しかも、要精密検査の原因を調べればそれはA/G比の「異常」からきていることはおのずと分かったはずである。
「この検査結果は、おかしくないのか……」と誰が考えても分かる定期検診結果報告が府教委になされていたはずである。
でも、なぜそのことすら府教委が考えなかったのか極めて不可解である。
管理職でも気付く
こんな初歩的なことすら知らない
教職員にはそのすべての内容が一切知らされていない「管理職用健康診断結果通知票」を見て、管理職でさえ昨年と比べてあまりに多い要精密検査者数に驚いたのである。
管理職でも気付くこんな初歩的なことが、「健康診断のプロを自負する」府教委がなぜチエック出来なかったのだろうか。
今回の医療ミスの一番の被害者は教職員であった。
「検査結果はおかしい!!」などの疑問を
投げかけた教職員の声で
初めて検査ミスをするずさんさ
少なくない教職員は、「要精密検査」という検診結果に驚いて異動期を前に「早めに治療を!」「早めに検査を!」と奔走して再検査を受けている。
教職員の定期健康診断の「要精密検査」(二次検診)には府高などの「無料にすべき」などの要求を受けてとめない府教委によって何らの保障はない。
すべて、「要精密検査」(二次検診)は、教職員の「自己犠牲」と「自腹」だけである。
「検査協力会」以外の医療機関で受けた教職員は、その医療機関から定期健康診断結果のデーターそのものへの疑問を投げかけられた。
そのため少なくない教職員が検査協力会の3つの検査機関に「検査結果はおかしい!!」などの疑問を投げかけ検査機関とトラブルが生じた。
そのため、検査機関が府教委と相談し、ここで初めて府教委が医療ミスへの対応を決めたというのが今回の事実経過である。
100名をこえる未再検者を放置した府教委
府教委は、定期健康診断の医療ミス問題で
①血液検査の異常ですでに精密検査した者に個人負担分を返還。(3月31日まで完了)
②当該市町、府立校あて再検査報告(4月5日から9日)
③A/G比のみ異常者は全員再検査終了した。
④再発予防のために検診協力会からの報告を6月11日に受けた。
⑤6月15日に「血液検査異常値発生と対応について」を府立学校長あて通知した。
などの経過を明らかにしている。
しかし、①の個人負担分の返却は教職員に公表されていない。
公表し、申し出た者に対する個人負担分を返還したのならまだしも公表されないまま個人負担分の返還が完了したとは言い切れないのである。
ここでも府教委の何とか解決したかのように文章上だけでも取り繕う姿が見える。
②の再検査報告がなされたのは異動が終わってからである。
府教委は、人事異動があれば、教職員は必ずしも当該校にいないという基本的なことすらも分かっていない。
③は、本質的な問題に関わる。A/G比の異常かどうかという判定にミスがあった。だから、「全員を対象とする再検査」を行ったはずである。
にも関わらずA/G比の異常のみの再検査が終了したことで問題の解決にはなっていない。
定期健康診断受信者全員の採血をやり直してこそ、再検査が完了したことになる。だが、府教委は、600名をこえる受診者のうち100名をこえる未再検者を残したままである。
この間6ヶ月間一体府教委は、再検査を受けることもできないでいる教職員に対して何をしたのかが鋭く問われる。
府教委のその責任は重い。
再検者が100名以上も残っているのに府教委は、もう次の定期健康診断をはじめるという文章を各学校に送りつけているのである。
④再発予防は、検査機関の報告を受けて終わってしまっている。
「今回のことはあってはならないこと」ではなく、
「なぜ、あってはならないことが生じたのか。」
「今後、あってはならないことが
生じないようにするにはどうするか」
こそが、再発予防できること
これでは、再び医療ミスが起こらない保障はどこにもない。府教委の保健体育課長は、
「今回のことはあってはならないこと」
とくり返して発言ているが、では
「なぜ、あってはならないことが生じたのか。」
「今後、あってはならないことが生じないようにするにはどうするか」
を明らかにすべきだろう。
あってはならないことを起こした(?)検査機関の報告だけで、あってはならないことを防げるとする府教委の態度は厳しく指弾されなければならないだろう。
府教委こそが、定期健康診断の実施者として検査機関に責任を持って主体的に「指導」する。そして医療ミスを二度と起こさない体制を作り上げるべきだろう。
そういう「指導」が出来ない理由が府教委側にあるのだろうか。
⑤については、もう言うまでもないだろう。
昨年度の定期健康診断で起きた問題を年度を越しても平然として通知する府教委の無責任ぶり。校長に通知したとしているが、校長から今回の医療ミス問題は明らかにされていない。
事態をかくして 「丸くおさめる」府教委の体質
どんなことがあっても定期健康診断の医療ミスが分かった段階で府教委は、医療ミスの原因追及とその予防、教職員へ事実を知らせ協力を求めるとともに医療ミスで生じたことへの手だて、検査機関への厳しい指導、従来すすめてきた定期健康診断の基本的見直しぐらいはせめてすべきであった。
だが、府教委のすすめたことは、全く逆な方向であった。
なぜ、府教委は、本来とらなければならない行政としての当然の処理をしなかったのか。その原因を調べれば、府教委の持つ深刻な問題が明るみに出てくる。
このことがあって、府教委は健康診断の根本的見直しを迫られる。
府高は、健康診断などの監督責任がある人事委員会に申し入れをする。が、人事委員会は、府教委から何らの報告も受けていなかったことも判明する。